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現在編7
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イワンを養子にしたいという人が現れた。
事情があって子どもがいない夫妻は、期待と不安でいっぱいという様子だった。
イワンはいつもと違う空気を感じたのか、夫妻が来ても僕にしがみついて離れようとしなかった。
だから夫妻とイワンの初顔合わせに僕も同席することになってしまった。
言語能力が乏しく暗い日本人を夫妻がどう思ったのかはわからない。
夫妻は笑顔だったけど当然緊張していて、部屋全体の空気が変な感じになっていた。
僕は最初こそイワンと一緒になって夫妻を警戒していた。しかしスタッフと夫妻の会話を聞いているうちにだんだん夫妻側に傾いていった。
夫妻は迎え入れる子どものためにできる限りの準備をしていた。
僕の気持ちの変化に気づいたのか、イワンは信じられないと言いたげだった。
大きな瞳で、欲しいのはこれじゃないと訴える。
イワンが欲しいのは実のママだと僕にはわかって、イワンも僕がわかっているのをわかっているような顔をしている。
僕は正直、現実を理解しようとしないイワンに参ってしまい、小さい頃ボクを取り囲んでいた大人たちも参っていたのだろうなと思った。
「霞の動きが読めないんです」
「あの人の行動はいつも意味がわからなかったよ」
「とても暴力的な方だと聞きました」
「僕にとって暴力支配の象徴だよ」
「そんな彼が真っ当な人間になるためにカウンセリングを受けているそうです」
「えっ、なんで?」
「謎ですね。でも、まぁ、菫のことが原因ではないかと思います」
「よくわからないけど、あの人も菫さんみたいに変われるのかな」
「簡単ではないですね。高宮家は崇拝され、嫌悪されている。霞へ向けられる感情は嫌悪のほうが大きいはずです。急に良い人間になろうとしたところで周りの人間はなかなか受け入れられないと思います」
「逆に警戒しちゃいそうだね。何か悪い事を企んでいるんじゃないかって」
「本当に良い方へ向かいたいのならば、それこそ周りの協力が必要になります」
「良い方向って、どっちだろう」
「進んでみないとわかりませんね」
なんだが適当なジェイに笑う。
ジェイも笑い返してきたから、胸の奥がむずむずした。
笑顔って、くすぐったい。
ジェイの綺麗な笑顔は、やっぱり綺麗だった菫さんの笑顔を思わせて、霞さんも機嫌が良い時は菫さんにみたいに綺麗に笑っていたのを思い出した。
似ているのに、違う2人。
好きなものも、全然違った。
菫さんの1番は、子どもだった。
じゃあ、霞さんの1番は、誰だったのだろう。
霞さんは高宮家の前当主である父親の言うことだけは従っていた。だけど父親は霞さんにあまり興味が無く、霞さんの理不尽な暴力を止めることはなかった。
母親とはほとんど会話をせず、お互い避けているようだった。
兄である高宮奏の言うこともそれなりに聞いていたけれど、注意されても暴力衝動は抑えられていなかった。
そして菫さんのことは舐めていた。
舐めていたけれど、菫さんには絶対に暴力を振るわなかった。
「霞さんは、子どもが嫌いだったのかもしれないな。菫さんが子どもを好きだったから。だからあの人は、ボクのことがずっと気に食わなかったのかもしれない」
「霞はアンリに嫉妬していたということですか?」
「僕だけじゃない。ずっと昔、小さくて何も知らなかった響や蓮のことも菫さんは可愛がっていたはずだ。霞さんはそういうのが許せなくて2人に厳しかったのかもって、思う」
「だとしたら、気に食わない大人に暴力を振るうのはどういうことでしょう」
「大人への暴力はまた違うんじゃないかな」
欲しいものは暴れれば大体手に入った。
でも、どんなに暴れても手に入れられないモノがあった。
他の方法を考えればいいのに、ずっと暴れ続けた霞さん。
その暴力は、八つ当たりだった。
そして時に、正当な排除だったのかもしれない。
あの人に近づく子どもとあの人を傷つける大人。
彼にとってはみんな敵だったのだ。
「難しいですね」
「難しいよ」
実際のところ、霞さんが何を考え、何であんなふうに暴れていたのかはわからない。
霞さんはきっと認めないだろうから。
菫さんのことが、好きだったなんて。
事情があって子どもがいない夫妻は、期待と不安でいっぱいという様子だった。
イワンはいつもと違う空気を感じたのか、夫妻が来ても僕にしがみついて離れようとしなかった。
だから夫妻とイワンの初顔合わせに僕も同席することになってしまった。
言語能力が乏しく暗い日本人を夫妻がどう思ったのかはわからない。
夫妻は笑顔だったけど当然緊張していて、部屋全体の空気が変な感じになっていた。
僕は最初こそイワンと一緒になって夫妻を警戒していた。しかしスタッフと夫妻の会話を聞いているうちにだんだん夫妻側に傾いていった。
夫妻は迎え入れる子どものためにできる限りの準備をしていた。
僕の気持ちの変化に気づいたのか、イワンは信じられないと言いたげだった。
大きな瞳で、欲しいのはこれじゃないと訴える。
イワンが欲しいのは実のママだと僕にはわかって、イワンも僕がわかっているのをわかっているような顔をしている。
僕は正直、現実を理解しようとしないイワンに参ってしまい、小さい頃ボクを取り囲んでいた大人たちも参っていたのだろうなと思った。
「霞の動きが読めないんです」
「あの人の行動はいつも意味がわからなかったよ」
「とても暴力的な方だと聞きました」
「僕にとって暴力支配の象徴だよ」
「そんな彼が真っ当な人間になるためにカウンセリングを受けているそうです」
「えっ、なんで?」
「謎ですね。でも、まぁ、菫のことが原因ではないかと思います」
「よくわからないけど、あの人も菫さんみたいに変われるのかな」
「簡単ではないですね。高宮家は崇拝され、嫌悪されている。霞へ向けられる感情は嫌悪のほうが大きいはずです。急に良い人間になろうとしたところで周りの人間はなかなか受け入れられないと思います」
「逆に警戒しちゃいそうだね。何か悪い事を企んでいるんじゃないかって」
「本当に良い方へ向かいたいのならば、それこそ周りの協力が必要になります」
「良い方向って、どっちだろう」
「進んでみないとわかりませんね」
なんだが適当なジェイに笑う。
ジェイも笑い返してきたから、胸の奥がむずむずした。
笑顔って、くすぐったい。
ジェイの綺麗な笑顔は、やっぱり綺麗だった菫さんの笑顔を思わせて、霞さんも機嫌が良い時は菫さんにみたいに綺麗に笑っていたのを思い出した。
似ているのに、違う2人。
好きなものも、全然違った。
菫さんの1番は、子どもだった。
じゃあ、霞さんの1番は、誰だったのだろう。
霞さんは高宮家の前当主である父親の言うことだけは従っていた。だけど父親は霞さんにあまり興味が無く、霞さんの理不尽な暴力を止めることはなかった。
母親とはほとんど会話をせず、お互い避けているようだった。
兄である高宮奏の言うこともそれなりに聞いていたけれど、注意されても暴力衝動は抑えられていなかった。
そして菫さんのことは舐めていた。
舐めていたけれど、菫さんには絶対に暴力を振るわなかった。
「霞さんは、子どもが嫌いだったのかもしれないな。菫さんが子どもを好きだったから。だからあの人は、ボクのことがずっと気に食わなかったのかもしれない」
「霞はアンリに嫉妬していたということですか?」
「僕だけじゃない。ずっと昔、小さくて何も知らなかった響や蓮のことも菫さんは可愛がっていたはずだ。霞さんはそういうのが許せなくて2人に厳しかったのかもって、思う」
「だとしたら、気に食わない大人に暴力を振るうのはどういうことでしょう」
「大人への暴力はまた違うんじゃないかな」
欲しいものは暴れれば大体手に入った。
でも、どんなに暴れても手に入れられないモノがあった。
他の方法を考えればいいのに、ずっと暴れ続けた霞さん。
その暴力は、八つ当たりだった。
そして時に、正当な排除だったのかもしれない。
あの人に近づく子どもとあの人を傷つける大人。
彼にとってはみんな敵だったのだ。
「難しいですね」
「難しいよ」
実際のところ、霞さんが何を考え、何であんなふうに暴れていたのかはわからない。
霞さんはきっと認めないだろうから。
菫さんのことが、好きだったなんて。
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