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--でも、現実は違った。





私は透夜君に好かれてなんていなかった。




中等部の入学式。






大学まで附属の学校のため、だいたいの子が初等部からそのままあがっていくので、不安はそこまでなかった。




でも、婚約者として透夜君にはじめて挨拶する日だ。




初めて婚約者として朝、車で透夜君が私の家まで迎えに来てくれた。





「綾、おはよ」





「おはよう!!なんか気恥ずかしいな! …でもこれからよろしくね!」







「え。…あぁ。よろしくな」






それだけのことなのに、今までの人生でこんな嬉しいと思ったことなどないとまで感じた。





本人の意思で来てくれた訳じゃないのに、そんなのも忘れて私はルンルンだった。






だけど、すぐ私の気持ちが一方通行だってことに気がついた。




簡単なことだった。




だって私と会話をする気がまずなさそうだった。





私は必死にたくさん話しかけていたのだが透夜君は笑ってくれない。





私が透夜君の笑顔をみたいと思っているからそう感じるのかな……







必死にいい方向に考えようとした。





でもそんなポジティブな考えにはさせてくれない空気なのだ。




1人笑顔で私が話しかける。





私といることがつまらないかのような車内の空気は冷たく感じた。






透夜君は、そうなんだ。と相づちを打ってくれるだけ。もともとそんなに笑ってるのは見たことないけど、ここまで興味が無さそうだと思ったのは初めてだった。






「そうだ、綾。これから毎日一緒にいくのは綾も嫌でしょ?綾も朝は友達と行きたいと思うから、週に一回曜日を決めてその日だけ一緒に学校に行くのはどうかな?」





その言葉は私への拒絶だと、すぐにわかった。でも週に一回でも一緒に行ってくれるだけすごく優しいんだと思う。




好きな子じゃなかったら一緒に行きたいなんて思わないだろうから。






透夜君は優しいからオブラートに包んでくれたんだ。





泣きそうな気持ちは隠して、




「うん!いいよ!じゃあ~…火曜日でいいと思う!今日火曜だし!」




凄く明るい声が出た。





自分は女優に案外向いているかもしれない。




家でも、気持ちを隠しっぱなし。





こんなのだから透夜君も私を受け入れてくれないのかもしれない。






「ああ。じゃあ毎週火曜日は綾の家に迎えに行くよ。」





それから私は会話を続けてもいいのか自信もなくなり、無言のまま学校に到着した。





友達から婚約おめでとう!と声をかけてもらえる。






幸せなはずなのに私は言われれば言われるほど胸が痛んだ。









--透夜君はどんな気持ちなのかな。 

すきな人がもしかしたらいたのかな。

それとも、ただ私を好きじゃないだけなのかな。







色んな考えが出てきては、胸を締め付ける。





……でもまだこれからだよね..…?


だって、婚約をしたんだもん。これくらいの気持ちを持ってないと多分これからやっていけない。


好きって言ってもらえるように、可愛いって思ってもらえるように、私なりに努力するんだ!そう決めた。




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