文字の大きさ
大
中
小
282 / 396
第四章 絢爛のスクールフェスタ
第282話 自己同一性への答え
メルアの体感ではあっという間に終わったという魔導砲の錬成も、片付けまで終わってみれば、アトリエに入ってから三時間ほどが経過していた。夕食の時間はとっくに過ぎていたが、ウルおばさんの計らいで僕のための一食が夜食として確保されていたので、共有スペースで有り難く頂いた上で、部屋に戻った。
「……ああ、アルフェの声だ」
多分お風呂で歌っているのだろう。反射音がかかっているので、いつもよりくぐもってはいるものの、それが優しい響きになって耳に届く。これを子守歌にしたら、いい夢が見られそうだな。
そんなことを考えながら部屋に向かうと、今度はホムのギターの音色が響いてきた。やはりたどたどしさはあるものの、ホムが一生懸命弾いているのが伝わってくる。その真剣さが音としてのかたさや緊張に感じられるのを、どうにかしてあげたいな。
「……ただいま、ホム」
「おかえりなさいませ、マスター」
そっと声をかけると、明かりのない部屋の奥からホムの声がした。
「明かりもつけずにどうしたんだい?」
「それが、集中しすぎていたようで、暗くなったことに気づいていなかったのです」
ホムが苦笑しながら立ち上がり、明かりを点けてくれる。その指先を見て、僕は思わず目を瞠った。
「傷だらけじゃないか、ホム」
咄嗟にホムの手首を掴んで、引き寄せる。ホムは僕に言われて初めて気がついた様子で目を瞬いた。
「治癒魔法をかけよう。そこに座って」
ホムに指示しながら、机の引き出しにしまってある真なる叡智の書を取り出す。
「このぐらい、すぐに治ります。マスターの手を煩わせるほどではありません」
ひとつひとつは小さな怪我ではあるが、それでも練習時に痛みを堪えるのは心身の負担になる。それはエステアのためにならないとホムに教えようとして、僕は口を噤んだ。
ここで必要なのは正論を説くことじゃない。ホムが安心して僕に甘えられるように、環境を整えることだ。
「……いいかい、ホム」
真なる叡智の書を手に、ホムの隣に座る。僕の意図を汲んだ真なる叡智の書の頁が独りでに動き、治癒魔法を開いて止まった。
この治癒魔法は、水魔法の一種で、血流を操作してかさぶたを作り、傷を塞ぐ程度の効果だが、ホムの治癒能力と僕のエーテル量を鑑みるに充分過ぎるほどの効果が予測される。
これならホムも僕の負担を考えなくて良いだろうし、僕としてもホムの傷を癒やしてあげられる。
「傷よ、塞がれ――セラピア」
僕がホムの手を取り詠唱を口にすると同時に、あたたかな波紋のような感覚が広がる。それを心地よく感じてくれたのか、ホムが自然に目を閉じたのがわかった。
「これでよし。あまり根を詰めてもいけないよ」
「……ありがとうございます、マスター」
細かな傷だらけだったホムの細い指先は瞬く間に癒え、ゆっくりと目を開いたホムはその感覚を確かめるように手指を開いたり閉じたりしている。
「お言葉に背くようで申し訳ないのですが、引っかかっているところがあるので、聞いていただいてアドバイスをもらいたいのです」
「もちろんいいよ。なにも練習を止めさせたいわけではないからね」
僕の考えていることが通じたのだろう、ホムが安堵の笑みを浮かべて頷く。
「とはいえ、僕も素人だ。エステアほど頼りにならないかもしれないけれど、いいかい?」
「マスターに限ってそのようなことはありません。……では、弾かせていただきます」
先ほどまでの練習の感覚を身体に刻み込もうとしているのか、ほとんど休まずにホムがギターを弾き始めた。
その真摯な目と堅いながらもしっかりと基本を押さえた音に、僕はついつい真剣なホムの表情を追ってしまう。アドバイスするためには、全体を見ないといけないので、自分にそう言い聞かせながらホムの身体の動きをつぶさに観察することに努めた。
緊張もあるのだろうけれど、肩に力が入り過ぎているのが少し気になるな。けれど、それが悪いわけじゃない。エステアとの練習のお陰か基本はしっかりと押さえているのは間違いない。だとすると、指先があんなに傷つくのには、少し違和感があるな。
僕自身もベースを弾いてみてわかるが、弦を押さえるのに、そこまで強い力が必要な訳ではないはずなのだけれど。
「……ホム、ちょっとギターを貸してくれるかい」
「はい、マスター」
僕の呼びかけにホムは即座に演奏を途中で止め、ギターを渡してくれる。受け取ったギターの弦に指先を添えたところで、違和感の正体に気がついた。原因は弦だ。どうやら調整が甘かったのか、弦が緩んでいたのだ。
「ああ、なにかの弾みで弦が緩んでいたみたいだ。それを力んで無理矢理弾いていたから、指を傷つけてしまったんだね。気づかなくて済まなかった」
ペグと呼ばれるネジ状の部品を回して弦を調整し、音を確認しながらホムに謝る。
「いいえ、マスターのせいではありません」
ホムはそう言ってくれたが、これは僕の調整の甘さにも原因がある。けれど、それを今押し問答したところで進展はなにもないので、僕はホムの気遣いをそのまま受け入れることにした。
「……少し身体の力を抜いてみよう。落ち着いて弾けば、ギターは応えてくれるはずだ」
音の調整を終えたギターをホムに戻しながら提案すると、ホムは僕の言葉に真剣な眼差しを向け、深く頷いた。
「引っかかっている箇所があったのは弦の緩みが原因かもしれない。まずは、最初の出だしを少し弾いてみようか。最初はこの弦と、この弦を押さえるわけだから、ここからここまで指を滑らせて、しっかり止めてみるといい」
ギターを抱えたホムに寄り添い、手を添えながら説明する。
「わかりました、マスター」
音を出さないまでも僕がホムの手に自分の手を添えて、力加減を感覚的に教えたことでホムも何かが掴めたようだ。
次にホムが弾いた最初の一音の優しさに、僕とホムは目を合わせて微笑みあった。メロディは気分の高揚を示すように鼓動とともに高鳴り、アルフェの声を脳内に想起させる。ギターが僕たちとともに歌いたがっている、そんな感覚を覚えた。
「……目覚めてから、探し始めた――ワタシはダレ?」
僕とホムの声が自然と重なる。ホムのギターが歌い始める。
歌詞の問いかけに対する答えを、僕はもう知っている。
僕はリーフ。リーフ・ナーガ・リュージュナだ。
「……ああ、アルフェの声だ」
多分お風呂で歌っているのだろう。反射音がかかっているので、いつもよりくぐもってはいるものの、それが優しい響きになって耳に届く。これを子守歌にしたら、いい夢が見られそうだな。
そんなことを考えながら部屋に向かうと、今度はホムのギターの音色が響いてきた。やはりたどたどしさはあるものの、ホムが一生懸命弾いているのが伝わってくる。その真剣さが音としてのかたさや緊張に感じられるのを、どうにかしてあげたいな。
「……ただいま、ホム」
「おかえりなさいませ、マスター」
そっと声をかけると、明かりのない部屋の奥からホムの声がした。
「明かりもつけずにどうしたんだい?」
「それが、集中しすぎていたようで、暗くなったことに気づいていなかったのです」
ホムが苦笑しながら立ち上がり、明かりを点けてくれる。その指先を見て、僕は思わず目を瞠った。
「傷だらけじゃないか、ホム」
咄嗟にホムの手首を掴んで、引き寄せる。ホムは僕に言われて初めて気がついた様子で目を瞬いた。
「治癒魔法をかけよう。そこに座って」
ホムに指示しながら、机の引き出しにしまってある真なる叡智の書を取り出す。
「このぐらい、すぐに治ります。マスターの手を煩わせるほどではありません」
ひとつひとつは小さな怪我ではあるが、それでも練習時に痛みを堪えるのは心身の負担になる。それはエステアのためにならないとホムに教えようとして、僕は口を噤んだ。
ここで必要なのは正論を説くことじゃない。ホムが安心して僕に甘えられるように、環境を整えることだ。
「……いいかい、ホム」
真なる叡智の書を手に、ホムの隣に座る。僕の意図を汲んだ真なる叡智の書の頁が独りでに動き、治癒魔法を開いて止まった。
この治癒魔法は、水魔法の一種で、血流を操作してかさぶたを作り、傷を塞ぐ程度の効果だが、ホムの治癒能力と僕のエーテル量を鑑みるに充分過ぎるほどの効果が予測される。
これならホムも僕の負担を考えなくて良いだろうし、僕としてもホムの傷を癒やしてあげられる。
「傷よ、塞がれ――セラピア」
僕がホムの手を取り詠唱を口にすると同時に、あたたかな波紋のような感覚が広がる。それを心地よく感じてくれたのか、ホムが自然に目を閉じたのがわかった。
「これでよし。あまり根を詰めてもいけないよ」
「……ありがとうございます、マスター」
細かな傷だらけだったホムの細い指先は瞬く間に癒え、ゆっくりと目を開いたホムはその感覚を確かめるように手指を開いたり閉じたりしている。
「お言葉に背くようで申し訳ないのですが、引っかかっているところがあるので、聞いていただいてアドバイスをもらいたいのです」
「もちろんいいよ。なにも練習を止めさせたいわけではないからね」
僕の考えていることが通じたのだろう、ホムが安堵の笑みを浮かべて頷く。
「とはいえ、僕も素人だ。エステアほど頼りにならないかもしれないけれど、いいかい?」
「マスターに限ってそのようなことはありません。……では、弾かせていただきます」
先ほどまでの練習の感覚を身体に刻み込もうとしているのか、ほとんど休まずにホムがギターを弾き始めた。
その真摯な目と堅いながらもしっかりと基本を押さえた音に、僕はついつい真剣なホムの表情を追ってしまう。アドバイスするためには、全体を見ないといけないので、自分にそう言い聞かせながらホムの身体の動きをつぶさに観察することに努めた。
緊張もあるのだろうけれど、肩に力が入り過ぎているのが少し気になるな。けれど、それが悪いわけじゃない。エステアとの練習のお陰か基本はしっかりと押さえているのは間違いない。だとすると、指先があんなに傷つくのには、少し違和感があるな。
僕自身もベースを弾いてみてわかるが、弦を押さえるのに、そこまで強い力が必要な訳ではないはずなのだけれど。
「……ホム、ちょっとギターを貸してくれるかい」
「はい、マスター」
僕の呼びかけにホムは即座に演奏を途中で止め、ギターを渡してくれる。受け取ったギターの弦に指先を添えたところで、違和感の正体に気がついた。原因は弦だ。どうやら調整が甘かったのか、弦が緩んでいたのだ。
「ああ、なにかの弾みで弦が緩んでいたみたいだ。それを力んで無理矢理弾いていたから、指を傷つけてしまったんだね。気づかなくて済まなかった」
ペグと呼ばれるネジ状の部品を回して弦を調整し、音を確認しながらホムに謝る。
「いいえ、マスターのせいではありません」
ホムはそう言ってくれたが、これは僕の調整の甘さにも原因がある。けれど、それを今押し問答したところで進展はなにもないので、僕はホムの気遣いをそのまま受け入れることにした。
「……少し身体の力を抜いてみよう。落ち着いて弾けば、ギターは応えてくれるはずだ」
音の調整を終えたギターをホムに戻しながら提案すると、ホムは僕の言葉に真剣な眼差しを向け、深く頷いた。
「引っかかっている箇所があったのは弦の緩みが原因かもしれない。まずは、最初の出だしを少し弾いてみようか。最初はこの弦と、この弦を押さえるわけだから、ここからここまで指を滑らせて、しっかり止めてみるといい」
ギターを抱えたホムに寄り添い、手を添えながら説明する。
「わかりました、マスター」
音を出さないまでも僕がホムの手に自分の手を添えて、力加減を感覚的に教えたことでホムも何かが掴めたようだ。
次にホムが弾いた最初の一音の優しさに、僕とホムは目を合わせて微笑みあった。メロディは気分の高揚を示すように鼓動とともに高鳴り、アルフェの声を脳内に想起させる。ギターが僕たちとともに歌いたがっている、そんな感覚を覚えた。
「……目覚めてから、探し始めた――ワタシはダレ?」
僕とホムの声が自然と重なる。ホムのギターが歌い始める。
歌詞の問いかけに対する答えを、僕はもう知っている。
僕はリーフ。リーフ・ナーガ・リュージュナだ。
感想 167
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢発溺愛幼女着
みおな「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」
わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。
響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。
わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。
冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。
どうして。
誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。
氷の辺境伯様、不本意な政略結婚でしたが、私の特技で勝手に領地を豊かにさせていただきます!~おまけに義理の息子も懐いてきました~
白狸「稀代の悪女」として社交界で嫌われ、極寒の辺境伯クラウスのもとへ厄介払いのように嫁がされた公爵令嬢リアーナ。
彼女には秘密があった。それは、現代日本で「凄腕の立体造形デザイナー」
だった前世の記憶と、一度この嫁ぎ先で冷遇され、孤独の中で死を迎えた「1回目の人生(回帰前)」の記憶である。
死の淵で回帰を果たしたリアーナは決意する。「今世では、誰にも文句は言わせない。私の居場所は、私の手で作る!」と。
冷え切った夫、怯える義理の息子、冷ややかな家臣たち。
四面楚歌の邸内で、彼女はお妃教育で培った「完璧な領地経営の知識」と、前世の特技である「緻密な設計とモノづくり(現代スキル)」をフル活用。精巧な図面を引き、おもちゃを作り、邸内の環境を劇的に改善していく。
その手腕と隠された優しさに、氷の夫も、心閉ざした継子も、頑なな家臣たちも、次第に彼女の虜になっていく――。
転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。
桜城恋詠 聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。
異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。
彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。
迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。
「絶対、誰にも渡さない」
「君を深く愛している」
「あなたは私の、最愛の娘よ」
公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。
そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?
命乞いをしたって、もう遅い。
あなたたちは絶対に、許さないんだから!
☆ ☆ ☆
★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。
こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。
※9/28 誤字修正
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
この優しさには絶対に裏がある!~激甘待遇に転生幼女は混乱中~
たちばな立花処刑された魔女が目を覚ますと、敵国の王女レティシアに逆行転生していた。
しかも自分は――愛され王女!?
前世とは違う扱いに戸惑うレティシア。
「この人たちが私に優しくするのは絶対に何か裏があるはず!」
いつも優しい両親や兄。
戸惑いながらも、心は少しずつ溶けていく。
これは罠? それとも本物の“家族の愛”?
愛を知らないレティシアは、家族の無償の愛に翻弄されながらも成長していく。
疑り深い転生幼女が、初めて“幸せ”と出会う――
じんわり心あたたまる、愛されファンタジー。
他サイトでも掲載しています。
転生した本好き幼女は、冷徹宰相パパのために暗躍します!~どんなピンチも本の世界に入れる『ひみちゅのチート』で解決でしゅ~
青空あかなブラック企業に勤める本の虫でアラサーOLの星花は、突然水に突き落とされた衝撃を感じる。
藻掻くうちに、自分はなぜか赤ちゃんになっていることを理解する。
溺死寸前の彼女を助けたのは、冷徹な手腕により周囲から「血塗りの宰相」と恐れられるアイザック・リヴィエール公爵だった。
その後、熱に浮かされながら見た夢で前世を思い出し、星花は異世界の赤ちゃんに転生したことを自覚する。
目覚めた彼女は周囲の会話から、赤ちゃんの自分を川に落としたのは実の両親だと知って、強いショックを受けた。
前世の両親もいわゆる毒親であり、今世では「親」に愛されたかったと……。
リヴィエール公爵家の屋敷に連れて行かれると、星花にはとても貴重な聖属性の魔力があるとわかった。
アイザックに星花は「ステラ」と名付けられ彼の屋敷で暮らすようになる。
当のアイザックとはほとんど会わない塩対応だが、屋敷の善良な人たちに温かく育てられる。
そんなある日、精霊と冒険する絵本を読んだステラはその世界に入り込み、実際に精霊と冒険した。
ステラには「本の世界に入り込み、その本の知識や内容を実際に体験したように習得できる特別な力」があったのだ。
彼女はその力を使って、隣国との条約締結に関する通訳不在問題や皇帝陛下の病気を治す薬草探索など、様々な問題を解決する。
やがて、アイザックは最初は煩わしかったはずのステラの活躍と愛らしさを目の当たりにし、彼女を「娘として」大切に思うようになる。
これは赤ちゃんに転生した本好きアラサーの社畜OLが、前世の知識と本好きの力を活かして活躍した結果、冷徹な義父から溺愛される話である。
※最終話まで予約投稿済
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおるヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
虐げられた前王の子に転生しましたが、マイペースに規格外でいきます!
竜鳴躍気が付いたら転生していました。
でも王族なのに、離宮に閉じ込められたまま。学校も行けず、家庭教師もつけてもらえず、世話もされず。社交にも出られず。
何故なら、今の王様は急逝した先代の陛下……僕の父の弟だから。
王様夫婦には王子様がいて、その子が次期王太子として学校も行って、社交もしている。
僕は邪魔なんだよね。分かってる。
先代の王の子を大切に育てたけど、体が弱い出来損ないだからそのまま自分の子が跡を継ぎますってしたいんだよね。
そんなに頑張らなくても僕、王位なんていらないのに~。
だって、いつも誰かに見られていて、自分の好きなことできないんでしょ。
僕は僕の好きなことをやって生きていきたい。
従兄弟の王太子襲名の式典の日に、殺されちゃうことになったから、国を出ることにした僕。
だけど、みんな知らなかったんだ。
僕がいなくなったら困るってこと…。
帰ってきてくれって言われても、今更無理です。
2026.03.30 内容紹介一部修正
2026.04.29 内容一部修正(序盤に書いたヒロインの髪色が違うため。)
2026.05.07 思いついてしまったので完了解除
ハッカの子に転生してしまった不遇の子の話
