天狗と骨董屋

吉良鳥一

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片割れは傍らに在り(上)

第三話

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 この日真尋と利音はとある寺にいた。
利音の趣味である曰く付きの骨董収集でこの寺の住職に呼ばれたのだ。

 今回真尋は初めて彼に着いてきた。 
理由は彼をもっと知りたいと思ったからだ。
 前回の椿の件で自分が色々と甘ったれな事が身に染みて分かったので、どうしたらいいかと考えてまず、利音と言う人間を知る事から始めようと思った。

 案内された部屋で住職を待っていると、閉じられていた障子が開かれた。

「宗像さんお待たせしました。
こちらからお呼びしておいてすみませんね」

「お客さんが来てたのなら仕方ないですよ」

 住職とおぼしき眼鏡を掛けた男性。
 年齢は50代くらいだろうか?
 優しそうな印象を受ける。

「おや、今日はお連れさんもご一緒ですか?」

「ああ、宗像骨董店うちのバイトです」

「初めまして。
利音さんの所で働いております、高住真尋です」

 ペコリとお辞儀をすると住職もお辞儀を返して来た。

「高住さん……
私はここの住職をしております、如月光蓮きらさぎこうれんと申します。
宗像さんとは以前から懇意にして頂いております。
以後、お見知り置きを」

「あ、はい。
宜しくお願いします」

 今度は住職、如月がお辞儀をしたので、それにつられて真尋も再びお辞儀をする。
 顔を上げると、如月が真尋を見てにこっと微笑んで来た。
 その様子にどう反応していいか分からず、軽く会釈をした。
 それから如月はすぐに利音の方に顔を向けた。

「それで、早速の本題なのですが……
実は、少々問題が発生しまして……」

「問題?」

「ええ……」

 何やら気まずそうに眉を下げた。

「とても言いにくいのですが、今日見て頂く予定の物が盗まれてしまいましてね……」

「盗まれた?」

 想定外の事に二人は驚いた。
 そして利音は訝しげに眉を顰める。

「そう言うのって厳重に保管してあったんじゃ?」

 利音が集めるような品は曰く付きである為に、人が入らないような場所にひっそりと保管されていた筈だった。
 そんな場所にわざわざリスクを犯してまで盗んで行くとは思えなかった。



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