天狗と骨董屋

吉良鳥一

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真尋の過去

第四話

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 秋人と新たな生活を歩み始める為やって来た秋人の家。
 独り暮らしの為かあまり広くないが、綺麗にしてある。
  
「真尋おいで」

 秋人が手招きする方には部屋があり、そこにはベッドや机、本棚などがある。

「ここは君の部屋だ。
好きなように使いなさい」

 与えられた一人部屋に真尋は心を弾ませた。
 今までは兄と共同で使っていたので、一人で使える事が嬉しかった。

 だが、いざ一人で寝るとなると眠れない。
 ずっと兄が傍にいたのと、新しい環境で落ち着かない。
 ベッドを抜け明かりの灯るリビングへ行くと秋人が一人お酒を飲んでいた。

「真尋、どうした?
眠れないか?」

 そう問うと、コクンと真尋は頷いた。
 無理もないと秋人は一緒に寝ようかと提案した。
 真尋はどうしようかと考えあぐねていると、秋人はちょっと待っててと飲んでいた酒を片付けて寝る準備を始める。

「一緒に寝よう。
おいで」

 秋人は真尋とベッドに潜り込んだ。

「お休み」

「おやすみ」

 中々寝付けなかったのが嘘だったかのように、秋人のぬくもりと心臓の鼓動の音が心地よく、あっと言う間に夢の中へと落ちて行った。

 そして秋人に妖の知識や力の使い方を仕込まれ、現在に至る。

「そんな感じです。
正直妖とは無縁な生活を送りたかったんですけど、まさか利音さんがそっち側なんて思わなかったです」

「ああそれは残念だったね。
まぁ、時既に遅し」

 彼の境遇は可哀想にも思うが、真尋とその家族を引き離したのは正解だと利音は思う。
 真尋は妖にとっては脅威か餌か、いずれにしても襲われる可能性が高い。
 未成熟な彼は対処出来ないだろう。
 そうなれば家族も巻き添えを食らうことだってある。
 秋人にとっても真尋の母、兄弟は大切な血縁である。
 真尋、家族共に守るにはこの方法が最適なのだろう。

 けれど利音から見れば面白い存在と出会えたと幸運だと思うのだった。
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