天狗と骨董屋

名門御三家

第二話

　寝不足な真尋は授業中うつらうつらと、目を開けているのがやっとの状態だった。
　授業が終わる頃に今度は腹が減って、ぐぅ～と鳴らないか心配で目が覚めた。
　今日は起きたのがギリギリだったので、朝食を食べていないのだ。

｢ダメだ、腹減った｣

　真尋は一限が終わると同時に売店へ急いだ。
　商品を選んでいると、ふと視線を感じた。
　視線の先を見ると大学の生徒らしき男性の姿がある。

｢またあの人……｣

　実は最近目をつけられている感じがしていた。
　その理由は分からない。
　取り敢えずおにぎりを買い、真尋は思いきって声をかけてみた。

｢あの、俺に何かご用ですか？
前から俺のこと見てますよね？｣    

｢…………｣

　男は険しい表情で真尋を見つめる。
　鋭い目付きで眉間に皺を寄せて、荒々しい雰囲気ではあるが、女性に人気が有りそうな見た目である。

｢別に妖との混血だろうがどうでもいいが、この大学で妖絡みで一悶着あっちゃ、一応警戒はするに越したことはねぇからな｣

｢……っ｣

　まさか真尋が妖の混血だと気付いていたとは……
　しかもあの悪鬼の件も知ってそうだ。
　それに彼の口振りはまるで……

｢あれですか、てん……て……｣

　なんだったか、また忘れてしまった。

｢天明道。
知ってんなら話は早ぇな。
先日悪鬼が入り込んだ。
多分お前とは関係ねぇだろうが、天明道の者としてお前に余計なことされちゃここの学生としては立場ねぇからな｣

　天明道に所属していると言う彼。
　要は真尋がこの大学で何かやらかして同じ大学に通う彼が責任を押し付けられるか、プライドの問題が発生するから見張っていると言ったところか……
　真尋としては不愉快極まりない。

｢言っときますけど、俺人間ですよ。
人様に何かするなんて考えてないです。
本当失礼ですね｣

｢人間ね……｣

　相変わらず妖とは認めない真尋。
　男はその言葉を鼻で笑った。

｢まぁいい、俺は４年の栗郷蓮りつごうれん。
余計な仕事増やすなよ｣

｢１年の高住真尋です。
貴方こそ俺を妖扱いしないでください｣

　そう言うと彼、栗郷はクスリと笑って、そうかよと去って言った。