異世界ライフは前途洋々

くるくる

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33.ギルドマスター統括

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 ヴェスタへ帰還した日、私は7日ぶりに宿の部屋で寝た。魔物の解体と査定は明日の昼までかかるという事であの後はすぐに倉庫を出て三つ子と別れた。そして3人で食事してからここまで送ってもらったのだ。

 「…このくらいで良いかな」

  タマゴに魔力を込め終え、布に包んで枕元に置く。複製をしてからステータスチェック。


【ステータス】

【名前】キラ
【年齢】20才
【職業】冒険者

【レベル】35
【体力】173
【魔力】6115/6150
【攻撃力】68
【防御力】80
【素早さ】130

【スキル】剣術(S)・火魔法(E)・水魔法(E)・風魔法(F)・土魔法(F)・回復魔法(E)・解析(S)
     薬師(S)・浄化(S)・危機察知(E)・生活魔法(F)

【固有スキル】複製(E)0/5

【称号】転移人・神々に愛でられし者



  おぉ、1日でレベルが5つも上がってる。やっぱりキングトロールは経験値多いのかな。あ、危機察知もEになってる。そういえばキングトロール戦の最中に何か音が鳴ったような気もする…。でも違いが分からないなぁ。そのうち検証してみようかな。

  固有スキルと称号を非表示にしてステータスを閉じ、乾燥アルラウネを取り出す。調合方法と効能や効果を知るにはどうしたら…と考えていると、ヘルプの時のように脳に情報が染みこんだ。これなら覚える必要がないのでありがたい。



  アルラウネは主に万能回復薬の材料として使われるが、マンドレイクで調合された同薬より効果が高くて高値で売買される。効能は他にも鎮痛、解熱、精神安定など色々あり、薬師であれば常備しておきたい素材。乾燥させて保存し、使用する分量だけ粉にして調合する。

  だがアルラウネは斬って討伐してしまうと薬にした時の効果が半減する。体を傷付けないように倒すのは手間がかかる上、傷つくと買い取り額が大きく下がってしまうため採取依頼の受け手が少ない。よって良い状態のアルラウネは貴重な物となっている。



  手元のアルラウネを解析してみると状態は最高だった。もう乾燥済みだから手間も省けるし、乾燥様様です。後は明日代金を受け取ってから調合道具探してみようかな。

  私は1人で眠るベッドに若干の寂しさを感じながらロウソクの炎を消した。











 翌日の午前中、私は宿の共同キッチンでプリンを作っていた。何故急にお菓子作りなぞ始めたか、それは…ただ単に食べたかったからです。

  市場通りで見た感じ焼き菓子系は何種類かあったが、常温で保存出来ないアイスクリームや生クリーム系は見当たらなかった。

  無いと分かったら余計に冷たいスイーツが食べたくなって今に至る。プリンならお手軽だしね。

  …よし、後はカラメルが冷めればかけて冷やすだけ。

  待ち時間でパン生地でも練っておこうかと考えていた時、レオンさんとエヴァさんが来た。今日の昼頃に来ると言われていたのでキッチンにいるかもしれないと伝えておいたのだ。でも予定より少し早いようだ。

 「キラ」
 「おはよう」
 「おはようございます、レオンさん、エヴァさん」
 「何を作ってたの?」
 「プリンです」
 「…ぷりん?」

  エヴァさんがコテン、と首をかしげる。可愛い。この仕草が可愛く見える成人男性って中々いないと思うな。

 「卵とミルクとシュガーだけで作れるんですよ。冷やして食べるお菓子です」
 「前の世界のお菓子?」
 「はい」
 「…ここでどうやって冷やすつもりだったんだ?」
 「インベントリの…」

  レオンさんに答えてる途中で気が付いた。私のインベントリは冷蔵カテゴリを増設出来たけど、みんなにこれができるなら高い冷蔵庫的魔道具なんか要らない。当然お店でだって冷えた飲み物が出せるはずだが、そうじゃ無いという事は魔力関連か転移人独特のものか、どちらかだろう。

 「インベントリ?」
 「…はい、冷やしておけるカテゴリがあるんです」
 「ほぉ、俺らのとは違うところがあるみてえだな」
 「それ便利だね。夏場は特に重宝しそう」

  …やっぱり転移人ならではの違いがあるんだ。でも2人はちょっと驚いただけで感心したように話してくれる。こういうのって嬉しい。

 「はい。いつでもアイスコーヒーが飲めます」
 「くくっ、お前は本当にコーヒー好きだな」
 「暑くなってきたら淹れてあげるよ」
 「はい、ありがとうございます!」











 下の酒場でランチしてからカウンターへ行くとギルマスの部屋へどうぞ、と言われた。エヴァさんも呼ばれ、レオンさんも一緒で良いという事で3人で受付嬢と共に奥へ。案内された部屋は広々としていて、上質な家具や調度品が揃っていた。

 「初めましてじゃな。儂はロンワン、ヴェスタのギルドマスターで、マスター統括も兼任しておる」

  そう自己紹介したのは身長150㎝ほどのおじいさん。見た目70代、人の良さそうな顔で、白髪を綺麗に撫でつけている。一見普通のおじいさんだがやはり違う。威風堂々、この言葉がしっくりくる方だ。

 「初めまして、キラと申します。よろしくお願いします」

  マスター統括という事は、全冒険者ギルドのトップだ。驚きと緊張を極力顔に出さないようにして挨拶すると、統括は柔らかな笑みを浮かべた。

 「そう硬くならずとも良い。そうじゃ、紹介が遅れたのぅ、隣はサブマスターのエルブじゃ」
 「エルブだ」

  統括の斜め後ろに立っていた巨大な…いや、大きな人が簡潔な自己紹介をする。2mはありそうな長身、筋骨隆々の上をいく岩のような肉体、スキンヘッド、鋭い瞳にピクリとも動かない表情筋。ザ・ヤクザ。◯代目とかのボディーガードしてそう。

 「よろしくお願いします」

  挨拶すると微かに首を縦に動かした。

 「エルブはいつもこうなんじゃ、気にせんでくれ。もう1人サブマスターがおるんじゃが、生憎今はヴェスタにおらんのじゃ。ささ、座って話そう」
 「はい」

  私たちは統括に促されて座り心地の良さそうなソファーに腰掛けた。




  呼ばれた理由はやはりキングトロールの事だった。

  通常トロールはCランク冒険者がパーティーで討伐する。トロールでさえそうなのだ。相手がキングトロールともなるとAランク冒険者がパーティーで相手をする。それを新人の女冒険者がほぼ1人で倒したというのだから俄かには信じ難いと思う者が多いのは仕方がないだろう。

  すでに三つ子を呼び出して話を聞いているので、本当だという事は分かっている。だがやはり本人と会ってこの目で確かめたい。

  統括はそう言ってエヴァさんにも話を聞いた後、私へ向き直る。

 「どうやら本当のようじゃな。キラ君、君のカード記録を見せてもらった。ハイミルでも手柄をあげとるの?…本登録からひと月も経たんうちにキングトロールを倒すほどの実力。君は間違いなくSランクまで昇り詰めるじゃろう。異例のスピードでSランクになったレオンよりも速く」

  そこで一旦区切り、僅かな間私を見つめた。

 「…その強さは、ギルドにとって宝であると同時に脅威でもある。…君の人物像を見極める為に、魔力を儂に視せてほしい」

  言葉の端々に滲む実直さ、新人の女冒険者に対する誠実な態度。こうして彼の人柄を目にすれば誰もが頷くのではないだろうか。

  両隣りに座るレオンさんとエヴァさんを見ると、2人も頷く。

 「はい、分かりました。どうすれば良いですか?」
 「君はそのままジッとしていてくれれば良い」

  そう言ってジッと私を見据える統括。その体からふわっと魔力が舞い、消える。何かスキルでも使ったのだろう。

 「…ふむ、美しい魔力じゃ。それほど高い魔力を持っていながら威圧感を感じぬとは…儂の心配は杞憂に終わったようじゃ…ありがとう。…さて、ではランクアップの話をしようかの」

  統括はにっこりと笑った。

 
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