異世界ライフは前途洋々

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39.素敵な朝

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 翌朝。目が覚めると2人の手足が身体中に絡まっていて、全く身動き出来なかった。首を巡らせて状況を確認すると、昨夜裸だった上半身は大きなTシャツで覆われていた。スノウもまだすやすや眠っている。

 着せてくれたんだ…そうか、カットソー着て寝れば良かったんだね。そうすればあんな…あんな…き、気持ち良かったけど。

 彼らの責めは刺激的すぎて結局すぐに達してしまった。それも自分だけ。……恥ずかしい!…恥ずかしいが落ち着け。こんな幸せなひとときを満喫せずしてどうする。

 私は気を取り直して愛しい彼らの寝顔を眺める。……素敵。いくら見ていても足りない。ハマってるな~、と思う。でもこれで良い。きっとこの世界のどこを探したって、彼らのような素晴らしい男性は居ない。愛しい男性は居ない。

 あぁ、なんて幸せ。

 …………でもまたお腹が鳴っちゃいそうだからそろそろ起きたい。記念すべき朝をお腹の音なんかで起こしたら恥ずかしいなんてものじゃない。あれ…なんかお酒の匂いがする。もしかして私が寝てから飲んだのかな?ならまだ起きないかもしれないし、朝食の支度したいな…。

 もぞもぞと動くと腕に力が入ってギュッと抱きしめられる。暖かくて気持ちイイ…じゃなくて!…起きたのかと思ったが違うようだ。そのまま少し待つと腕が緩んだのでそっと抜け出す。

 …よし、成功。

 2人を見ると、私が寝ていた場所を手で探っている。

「ふふ…」

 思わず笑ってしまい、慌てて口を抑える。…ほっ、起こさなかったみたい。静かに着替え、ドレッサーに座って髪をアップにしてからキッチンへ向かった。











「ん~…」

 二日酔いに良い食材で何か…あれ、でもヒールとか浄化で治るかも?ならあまり重くないメニューにすれば良いかな?でも一応効きそうな食材使おうか。…よし、そうしよう。

 私は腕を捲って料理を始めた。




 15分ほど経った時、スノウの気配が動いたのを感じた。

 スノウの称号に“キラの契約獣”とあったように、私の称号にも新たに“スノウの主”が加わり、テイマー(S)のスキルまで獲得した。何故教会へ行ってないのに称号が増えたか、テイマー(S)まで取れたのか、おそらく神様の采配だろうが今は置いておく。

 何にしても、離れていてもスノウの気配を感じ取れるという事がキッチンに移動してみて分かったのだ。

 気配は少し動いて一度止まり、再び動き出す。こちらへ近付いてきているようだ。耳を澄ますと足音が聞こえたので、おそらくレオンさんたちと一緒なのだろう。

 足音はやけに静かで、進みも遅い。不思議に思って振り返ると、ちょうど3人がキッチンへ入ってきたところだった。

「おはようございます」
「おはようなのきら~」
「「…」」

 元気に挨拶したのはレオンさんの頭に乗っていたスノウだけで、2人は何故かちょっと不機嫌顔。ぱたぱたとゆっくり飛んできたスノウを手に乗せて聞いてみる。

「…どうかしました?」
「…ダメだね…」
「…ああ、駄目だ。キラ、やり直し」
「え?」

 何がだめなの?と首を傾げるとスノウもマネする。朝から可愛い。

「いいからほら、もう一度そっち向いて」
「…?はい」
「スノウはこっち来い」
「…しかたないの」

 スノウが呼び戻されて再びレオンさんの頭へ行ったので私も言われた通りシンクの方を向く。するとエヴァさんが来て後ろから抱きしめられた。

「…おはよう、キラ」

 囁きながら耳を食まれてぴくん、と小さく身体が跳ねる。

「こっち向いて…?」
「エヴァさ…んっ…」

 スノウが見てる。そう言おうとしたけど、横を向いた途端軽くキスされた。そして次にレオンさんが来て同じく後ろから抱きしめて口づける。唇が離れても身体は密着したままでドキドキしてしまう。

「…スノウが…」
「スノウが寝てる時しかキスさせない気か?」
「そ、そうじゃないですけど…」
「慣れだよ、キラ」

 そう言ってエヴァさんが前からもう一度キスすると、レオンさんもする。スノウはレオンさんの頭上からずっとこちらを見てるし、前後から抱きしめられるし…朝からこんなじゃ心臓保たないよ。毎朝じゃないよね…?

 どうやら後ろからというのが重要だったようだ。ちょっと困りながらもやはり嬉しく思うのだから私も大概です。











 食後のコーヒーを飲みながらスノウについて相談した。

 私たち以外の人前では話さない事、フェニックスだという事は秘密にする事などをスノウ自身にも言い聞かせておく。

 ギルドには契約獣の細かい登録は無い。ただ主のギルドカードには契約獣有りと記載しなければならないので、双方の契約印確認が必要になる。だがそれだけだ。

 契約は強い魔物ほど困難だし、好き好んで危険な魔物と契約する者など居ない。それに契約印の力は絶対で契約獣は主の命令に逆らえないのだ。そのため、素行が悪い冒険者などは契約自体をギルドが禁じている場合もあるという。管理が緩い気がしていたが、理由を聞いて納得した。

「さて、パーティー登録に行く前にもうひとつ話があるんだ。キラ」
「はい」
「今から敬語は禁止だよ」
「え」
「本当は名前のさん付けも止めてほしいけど、一度に両方は大変だろうから取り敢えず敬語だけね」
「出来が悪い場合は罰があるから頑張れよ?」
「ば、罰?」

 突然の話にびっくりする私に構わず、彼らはにやにやしながら続ける。

「ああ、罰だ。…恥ずかしいのと気持ちイイの、どっちがイイ?」
「え、あの…」
「選べないよねぇ?でも安心して、オレたちがその都度決めてあげるから」
「いえ、あの、内容…」
「それは内緒」
「え~…」

 思わず眉を寄せると2人が笑う。

「フフ、さ、行こうか」
「くくっ、そうだな。おいスノウ、起きねえと落ちるぞ」
「ん~…スノウねむい…」

 レオンさんが私の肩で居眠りしていたスノウを起こすが、まだ目が覚め切らずにぽや~っとしている。かと思ったら、突然胸に飛び降りてきた。ぽよんぽよんと器用に胸の上を歩き、首を伸ばして谷間を覗く。そして一言。

「ここがいいの」
「「…」」
「え…?」

 何が良いのか分からないうちにスノウがむにむにと谷間に体を押し込み、ちょこんと顔だけ出す。

「ひゃっ、ちょっとスノウ…」
「スノウ、そこは駄目だ。出ろ」
「そうだよスノウ、そこはいけない」
「やっ。だってここぽかぽかでぷにぷにでいいにおいできもちいいもん」

 注意されるも、ぷるぷる首を横に振る。

「…ほぉ、逆らうとは良い度胸だなコラ」

 谷間に挟まりながらカッ!とくちばしを開いて威嚇するフェニックス。対、指でつまみだそうとするSランク冒険者のレオンさん。

 異色の対戦が繰り広げられています。……私の胸元で。 

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