異世界ライフは前途洋々

くるくる

文字の大きさ
47 / 213

40.パーティー登録

しおりを挟む
「ぴぴぃ…ぴ」(訳、あっちがいいのに~…なの)
「うるせえぞ、そこで我慢しろ」

 異色の対戦は引き分けに終わった。家の中でなら良いが外では駄目、という事になったのだ。

 今は4人でギルドへ向かっている最中で、スノウは渋々膨れっ面で(?)レオンさんの頭に乗っている。深紅の髪の上にちょこんと白毛があるのがまた何とも言えない。私は可愛いと思うんだけど、エヴァさんはクスクス笑っていた。ちなみにスノウがぴいぴい鳴いても、何故か私だけでなく2人にもきちんと言葉として聞こえている。

「笑うなエヴァ」
「フフ…ごめん」
「そうですよ、可愛いのに。…あ…」
「また使ったな、敬語。それに…可愛いって何だ、ん?」
「えぇと…その…」

 しまった、と思ったがもう遅い。2人の歩みが止まる。

「…まあ良い。可愛い、は後だ。それより罰だな」
「わわ、ちょっとまっ…」

 私の制止など効くわけもなく、ちゅっ、とキスされる。そう、このキスが罰である。さっきから何度もこうして罰と言ってはキスされている。公衆の面前で。うぅ…早く直さないと。

「あんまり多いようだと罰がランクアップするから気をつけてね」

 ニコニコしながらエヴァさんが言う。

「…頑張る」

 私は赤くなってそう答えるしかなかった。











 彼らがギルドに入るといつも通り視線を集めるが、今日はレオハーヴェンの頭に集中していた。

 それもそのはず、レオハーヴェンは28の若さでSランクに昇り詰めた強者。クールで男気がある事で知られていて、実は若い男の冒険者たちの間では憧れの存在なのだ。その上最近出来た恋人がかなりの美女で、あっという間にAランクになったという噂も既に広まっている為ますます憧れ度が強くなっている。

 そんな彼が今、白くて可愛らしい小鳥を頭に乗せている。ファン(?)から見れば何ともミスマッチで目を疑いたくなる光景だ。




「凄い注目度だね。レオン」
「狙い通りだろうが」

 レオンさんの頭にスノウという配置には、異例だらけの昇級テストでAランクになった私から少しでも目を逸らそうという彼らの考えがあった。

「ふふ、ありがとう。レオンさん」
「…普通だな」
「…敬語なしだね」

 若干面白くなさそうな表情の2人。

 …敬語使ったら罰で、使わなくてもご機嫌ナナメってどういう事でしょう?不条理。

「…手続きするか」
「そうだね」

 私たちはカウンターへ向かった。




「こんにちは。パーティー登録と、契約獣の確認を頼みたいんだけど」
「…はい、かしこまりました。パーティーメンバーは3人様ですか?」
「うん、そうだよ」
「では契約印の確認を先にいたします。主はどなたですか?」
「はい。スノウおいで」
「ぴぴっ」(はいなの)

 カウンター前に進み出てスノウを呼ぶと、すぐに私の手に飛んできた。

「この子のはくちばしの…ここです」

 主は右手の甲と決まっていて、普段は見えないが意識して魔力を通すと現れる。私は印の出た自分の右手とスノウの乗った左手を差し出した。

「はい、え~と…しょ、少々お待ちください」

 受付嬢は引き出しからルーペのようなものを取り出してスノウの印を見る。同じ紋様かも確認しなくてはいけないが、細かすぎて見えないのだ。

 じ~っとルーペを覗き、私の印と比べてから近くにいた男性を呼んで見せる。念のためだろう。その男性は確認を終えると頷き、帰っていく。

「確認出来ました。カードをお願いします」
「はい」

 カードを渡すと一度席を外し、すぐに戻る。

「注意事項をいくつか申し上げます。万が一契約獣が罪を犯した場合、責任の全ては主が負う事になります。また事例によっては契約獣の殺処分も有り得ますので充分ご注意願います」
「はい、分かりました」

 次はパーティー登録。カウンターに出された紙にエヴァさんが記入する。

【パーティー名】レックス
【リーダー】レオハーヴェン(S)
【メンバー】エヴァント(A)・キラ(A)

 パーティー名のレックスはそれぞれの頭文字をとって付けた。レオハーヴェンのR、エヴァントのE、キラのK、そしてスノウのS。

 “Reks”

 一枚の白いカードに3人の血を垂らす。これがパーティーのカードになるのだ。スノウがカウンターに飛び降り、カードに血が吸い込まれるのを首を傾げて見ている。その可愛らしい様子に受付嬢は一気に破顔してスノウを見つめていた。

 そうでしょう、そうでしょう。ウチの子最高に可愛いでしょう?

 受付嬢がハッと我にかえり、個人のカードも受け取って奥へ行きまた戻る。パーティーカードはリーダーであるレオンさんに渡された。




 パーティーランクは全員のソロランク平均で決まり、上下1ランク違いまで依頼を受けられる。レックスはAランクなのでB~Sランクという事になる。

 ソロランクはパーティーの依頼を熟してもアップ可能。普通はトドメを刺した者に全ての経験値が入るが、パーティーメンバーは共に攻撃する事で経験値の共有も可能だ。得られる数値はソロで倒した時よりも低めだが、人数がいるのでより強い魔物に挑戦できるしその分良い素材も手に入る。ソロよりパーティーが多いのは当然と言えた。

 レックスに関して言えば、メンバー全員経験値五割増しの効果がある称号持ち。そして契約獣であるスノウは主と経験値を共有しているので、結果的にスノウも加えた4人がパーティーメンバーのようなもの。

 このパーティーがどこまで強くなるのか、現段階でそれを想像出来ている者は極少数である。だが、ずっとソロだったレオハーヴェンとエヴァントが噂の美女とパーティーを組んだ。この事実は驚くべきスピードで冒険者たちに広まっていくのだった。




 手続きを終え、レオンさんが提案する。

「一応依頼見ていくか?」
「そうだね、良い?キラ」
「は…うん…いいよ」

 セーフ!危なかった…ここでキスは避けたいですよ。

「チッ…」
「フフ…慣れてきたね~」
「…」

 …今舌打ちした?ねえ、レオンさん今舌打ちしたよね?

「…行くぞ」
「ほら、手貸して?」

 2本の手を差し出され、少々の膨れっ面を自覚しながら2人を見上げる。彼らはそんな私を見て笑い、手を引いてボードの方へ向かった。
しおりを挟む
感想 171

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。 しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。 郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。  そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。 そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。 アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。 そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...