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78.新たな仲間と
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新たな仲間を加えた後、馬車をしまってサニーとサックスに乗って行く事になった。進化して馬体が若干大きくなったため馬車と繋ぐには調整が必要となったからだ。
魔除け香もインベントリにしまったので周囲に警戒を払いながら進む。
私はレオンと一緒にサニーに乗っていたが以前乗った普通の馬とは全然違った。知力の違いか、或いは8本足の効果か。山道なのに全く揺れずお尻も痛くならない。レオンもスレイプニルに乗るのは初めてで、その乗り心地の良さと手綱捌きの楽さに驚嘆していた。
声に出して話せなくてもこちらの言う事はきちんと理解している上、感情も伝わってくるので意思の疎通には何ら問題なかった。それもスノウと同じくレオンとエヴァにも伝わっていて移動が今まで以上に快適になった。
16時頃、近くに川の流れる良い場所が見つかった。今は7月初旬なのでまだ日は沈まないが今日はここで休むことにする。
「スノウ、この辺りに魔物はいるか?」
(ん~…とおくにいるの)
「数は分かる?」
(あっちにべあーが2、こっちにちょっとよわいのが4いるの)
「ワイルドベアー2体か、丁度いい。サニー、サックス、ちょいとレベリングしに行くか?」
レオンの言葉にブルルッ、と頷く2頭。
コテージで休む前はなるべく周囲の魔物を討伐するようにしている。魔除け香を焚くので私たちは安全だが、それによってコテージを避けた魔物たちが近くで野営する旅人たちに襲いかかる危険があるからだ。相手は他人なのだから関係ないと言ってしまえばそれまでだが、それが原因で大けが、ましてや亡くなられたりしたら目覚めが悪いなんてものじゃない。それに、倒すことでこちらも素材や経験値が得られるのだから損はないのだ。
私たちはそのまま魔物退治へと向かった。
■
「【サンダーショット!】」
連続で放たれたエヴァの雷でワイルドベアーが動きを止める。
「行け!」
2頭はレオンの号令で獲物に向かって走り出した。
サニーはベアーの手前でグッと前脚を踏ん張り、馬体を横に回転させながらそのままの勢いでバコーン!と二本足で立っていたベアーの頭を蹴った。見事な回し蹴りである。そして横倒しになった獲物にもう一度、今度は馬らしく蹴りを入れるとワイルドベアーは完全にこと切れた。
猛然と突っ込んでいったサックスは前脚を高らかに上げ、ドスンッ!とベアーを踏みつけた。悲痛な呻き声を上げて地面に押し付けられた敵を、2度、3度と繰り返し踏みにじる。本来は獰猛であろうベアーの咆哮は臆病な犬のようにか細くなって消えた。
「さすがスレイプニルだな」
「足技もパワーも強烈だね」
「うん、凄かった。頑張ったね」
(さにーもさっくもすごいの!)
みんなで賛辞を贈る。2頭は嬉しそうだ。
(れお、スノウも!スノウもなにかたおしたいの!)
「よし、他の気配に移動するぜ」
私たちはサニーとサックスに乗り再び魔物の気配の方へ移動した。
■
討伐を終え川近くまで戻ってきた。
別の場所にいた魔物はキンキ―ディアという大きな捻じれ角を持った鹿の魔物だった。角も皮も肉も、蹄以外捨てる所などない良い素材だという事で、なるべく大きな傷を付けずに倒すためスノウは風魔法での首落としに挑戦。見事成功させて2体を討伐、残りの2体は私のウォータージェットで倒した。
コテージを出し、サニーとサックスは回復魔法を掛けてから馬小屋へ。私とエヴァが夕食の準備をしている間にレオンが2頭を洗ってくれている。スノウはレオンに付いて行った。
食後のコーヒーを楽しみながら明日の相談。
「明日は馬具や馬車の調整があるからこのまま滞在だな」
「そうだね。オレはキンキーディアを解体するよ、あれの皮でキラの装備を作る」
「私の?」
確かに装備の話は出たことがあった。でも神弟子様作のビキニアーマーの方が断然防御力が高くてその時は断念したのだ。
「うん。ディアの皮は軽くて丈夫な上にキメ細かい。それに通気性も良いから今からの時期に良いんだよ」
「ローブじゃ南の大陸は熱い。だから前々から考えてはいたんだ。中々良い素材が見つからなかったんだが、ディアなら防御力もそこそこだし手を加えればもっと良くなる」
なるほど、色々考えてくれてたんだ。
「ただ防御力の点で言えばキラのビキニアーマーに敵う物はまず無いからね、討伐なんかに行く場合はビキニアーマーの方が良いかも。…あ、ローブもディアで作ろうか」
「ああ、良いな。使い分けできるようになる」
「…ありがとう。ね、レオンとエヴァの装備は?」
「俺らのも追々作る」
「追々?」
私はディアの皮を街の装備屋にでも持ち込んで作ってもらうのだと思っていたが違った。エヴァが生活魔法の縫製で作るというのだ。
縫製は中級以上になると革の防具を製作出来るようになる。素材となる魔物の皮にはそれぞれ防御力や効果があり、下級ではそれらを引き出せずただの革服になってしまうのだ。
「そうだったんだ」
「うん。それでデザインはどうする?」
「え、防具って決まったデザインじゃないの?」
「売りものにするならオーソドックスに作るから似た感じになるけど、決まってる訳じゃないよ。だからキラにぴったりのを考えよう」
「うん、ありがとう」
その後はデザインの相談。スノウは途中で飽きてサニーとサックスの所へ行ってそのまま眠ってしまいました。
■
翌日。レオンは馬具調整、エヴァはディアの解体、スノウ、サニー、サックスは裏の方で遊んでいた。今迄サニーとサックスはコテージに居る時馬小屋に繋いでいたが、契約獣となって進化してからは放してある。
魔物は強いほど寿命が長い。当然元幻獣のスレイプニルである2頭は長命なので3才はまだ子供の部類。スノウと一緒にコテージの周囲を走り回ったり、川に入って魚を獲ったりしていた。
私は今迄ちょこちょこ進めていた夏服を仕上げ、ケチャで手に入れたチーズをスモークしたり黒パンを焼いたりしていた。
そうこうしているうちにコーヒーブレイクの時間。準備しているうちにみんな作業が終わって集まってきた。
今日のオヤツはパイ。オーソドックスなアップルパイと、レオンの口にも合いそうなミートパイ。ミートパイとコーヒーの組み合わせ、その前にミートパイはオヤツなのかという事はさておき、パイ自体の出来は中々だと思う。
みんなの反応は上々。外からテラスの中に首を伸ばしているサニーとサックスもスノウ同様なんでも食べられるというので、興味深げに見ていたミートパイを少しあげてみる。すると瞬く間に平らげておかわりをせがむほど気に入ってくれた。
「こっちの調整は終わった。皮はどうだ?」
「ディアの方も終わったよ」
そう言ってエヴァが取り出した皮を見せてもらう。
「やはりディアの革は質が良いな」
「柔らかい…肌ざわりも良いし、装備の出来上がりが楽しみ」
「フフ、任せといて。この革後で複製しておいてくれる?」
「うん」
その夜、複製を終えるとスキルがCランクになった。多種一括複製という技を獲得し回数も20回に増えた。夫たちの勧めで、レオンの土魔法(C)、エヴァの雷魔法(C)を複製。スノウの真眼はいつの間にかBになっていて出来なかったけれど、これで光と闇以外の5大属性を獲得しました。
魔除け香もインベントリにしまったので周囲に警戒を払いながら進む。
私はレオンと一緒にサニーに乗っていたが以前乗った普通の馬とは全然違った。知力の違いか、或いは8本足の効果か。山道なのに全く揺れずお尻も痛くならない。レオンもスレイプニルに乗るのは初めてで、その乗り心地の良さと手綱捌きの楽さに驚嘆していた。
声に出して話せなくてもこちらの言う事はきちんと理解している上、感情も伝わってくるので意思の疎通には何ら問題なかった。それもスノウと同じくレオンとエヴァにも伝わっていて移動が今まで以上に快適になった。
16時頃、近くに川の流れる良い場所が見つかった。今は7月初旬なのでまだ日は沈まないが今日はここで休むことにする。
「スノウ、この辺りに魔物はいるか?」
(ん~…とおくにいるの)
「数は分かる?」
(あっちにべあーが2、こっちにちょっとよわいのが4いるの)
「ワイルドベアー2体か、丁度いい。サニー、サックス、ちょいとレベリングしに行くか?」
レオンの言葉にブルルッ、と頷く2頭。
コテージで休む前はなるべく周囲の魔物を討伐するようにしている。魔除け香を焚くので私たちは安全だが、それによってコテージを避けた魔物たちが近くで野営する旅人たちに襲いかかる危険があるからだ。相手は他人なのだから関係ないと言ってしまえばそれまでだが、それが原因で大けが、ましてや亡くなられたりしたら目覚めが悪いなんてものじゃない。それに、倒すことでこちらも素材や経験値が得られるのだから損はないのだ。
私たちはそのまま魔物退治へと向かった。
■
「【サンダーショット!】」
連続で放たれたエヴァの雷でワイルドベアーが動きを止める。
「行け!」
2頭はレオンの号令で獲物に向かって走り出した。
サニーはベアーの手前でグッと前脚を踏ん張り、馬体を横に回転させながらそのままの勢いでバコーン!と二本足で立っていたベアーの頭を蹴った。見事な回し蹴りである。そして横倒しになった獲物にもう一度、今度は馬らしく蹴りを入れるとワイルドベアーは完全にこと切れた。
猛然と突っ込んでいったサックスは前脚を高らかに上げ、ドスンッ!とベアーを踏みつけた。悲痛な呻き声を上げて地面に押し付けられた敵を、2度、3度と繰り返し踏みにじる。本来は獰猛であろうベアーの咆哮は臆病な犬のようにか細くなって消えた。
「さすがスレイプニルだな」
「足技もパワーも強烈だね」
「うん、凄かった。頑張ったね」
(さにーもさっくもすごいの!)
みんなで賛辞を贈る。2頭は嬉しそうだ。
(れお、スノウも!スノウもなにかたおしたいの!)
「よし、他の気配に移動するぜ」
私たちはサニーとサックスに乗り再び魔物の気配の方へ移動した。
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討伐を終え川近くまで戻ってきた。
別の場所にいた魔物はキンキ―ディアという大きな捻じれ角を持った鹿の魔物だった。角も皮も肉も、蹄以外捨てる所などない良い素材だという事で、なるべく大きな傷を付けずに倒すためスノウは風魔法での首落としに挑戦。見事成功させて2体を討伐、残りの2体は私のウォータージェットで倒した。
コテージを出し、サニーとサックスは回復魔法を掛けてから馬小屋へ。私とエヴァが夕食の準備をしている間にレオンが2頭を洗ってくれている。スノウはレオンに付いて行った。
食後のコーヒーを楽しみながら明日の相談。
「明日は馬具や馬車の調整があるからこのまま滞在だな」
「そうだね。オレはキンキーディアを解体するよ、あれの皮でキラの装備を作る」
「私の?」
確かに装備の話は出たことがあった。でも神弟子様作のビキニアーマーの方が断然防御力が高くてその時は断念したのだ。
「うん。ディアの皮は軽くて丈夫な上にキメ細かい。それに通気性も良いから今からの時期に良いんだよ」
「ローブじゃ南の大陸は熱い。だから前々から考えてはいたんだ。中々良い素材が見つからなかったんだが、ディアなら防御力もそこそこだし手を加えればもっと良くなる」
なるほど、色々考えてくれてたんだ。
「ただ防御力の点で言えばキラのビキニアーマーに敵う物はまず無いからね、討伐なんかに行く場合はビキニアーマーの方が良いかも。…あ、ローブもディアで作ろうか」
「ああ、良いな。使い分けできるようになる」
「…ありがとう。ね、レオンとエヴァの装備は?」
「俺らのも追々作る」
「追々?」
私はディアの皮を街の装備屋にでも持ち込んで作ってもらうのだと思っていたが違った。エヴァが生活魔法の縫製で作るというのだ。
縫製は中級以上になると革の防具を製作出来るようになる。素材となる魔物の皮にはそれぞれ防御力や効果があり、下級ではそれらを引き出せずただの革服になってしまうのだ。
「そうだったんだ」
「うん。それでデザインはどうする?」
「え、防具って決まったデザインじゃないの?」
「売りものにするならオーソドックスに作るから似た感じになるけど、決まってる訳じゃないよ。だからキラにぴったりのを考えよう」
「うん、ありがとう」
その後はデザインの相談。スノウは途中で飽きてサニーとサックスの所へ行ってそのまま眠ってしまいました。
■
翌日。レオンは馬具調整、エヴァはディアの解体、スノウ、サニー、サックスは裏の方で遊んでいた。今迄サニーとサックスはコテージに居る時馬小屋に繋いでいたが、契約獣となって進化してからは放してある。
魔物は強いほど寿命が長い。当然元幻獣のスレイプニルである2頭は長命なので3才はまだ子供の部類。スノウと一緒にコテージの周囲を走り回ったり、川に入って魚を獲ったりしていた。
私は今迄ちょこちょこ進めていた夏服を仕上げ、ケチャで手に入れたチーズをスモークしたり黒パンを焼いたりしていた。
そうこうしているうちにコーヒーブレイクの時間。準備しているうちにみんな作業が終わって集まってきた。
今日のオヤツはパイ。オーソドックスなアップルパイと、レオンの口にも合いそうなミートパイ。ミートパイとコーヒーの組み合わせ、その前にミートパイはオヤツなのかという事はさておき、パイ自体の出来は中々だと思う。
みんなの反応は上々。外からテラスの中に首を伸ばしているサニーとサックスもスノウ同様なんでも食べられるというので、興味深げに見ていたミートパイを少しあげてみる。すると瞬く間に平らげておかわりをせがむほど気に入ってくれた。
「こっちの調整は終わった。皮はどうだ?」
「ディアの方も終わったよ」
そう言ってエヴァが取り出した皮を見せてもらう。
「やはりディアの革は質が良いな」
「柔らかい…肌ざわりも良いし、装備の出来上がりが楽しみ」
「フフ、任せといて。この革後で複製しておいてくれる?」
「うん」
その夜、複製を終えるとスキルがCランクになった。多種一括複製という技を獲得し回数も20回に増えた。夫たちの勧めで、レオンの土魔法(C)、エヴァの雷魔法(C)を複製。スノウの真眼はいつの間にかBになっていて出来なかったけれど、これで光と闇以外の5大属性を獲得しました。
応援ありがとうございます!
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