R18、アブナイ異世界ライフ

くるくる

文字の大きさ
15 / 113

13. 意外

しおりを挟む
 少年はオーナーの前で見事な直立不動の姿勢を披露していた。

  少年の名はガイ。まだ15歳(成人は18才)だ。狼の耳と尻尾が出っ放し。両親を亡くしてからオーナーのお世話になっていて、各村の状況調査や報告が仕事らしい。この世界では子供にも相応の仕事があるのだ。オーナーは魔人のいない村やその周辺を調べ、異常がないか、盗賊の痕跡が無いかたまにチェックしている。この辺、ゲームと同じだ。

  そのオーナーは今、ソファーの背に寄りかかり足を組んでガイを見上げている。

 「ちゃんと、順を追って、分かるように、話せ」

  明らかに不機嫌だ。まあ無理もない。ガイの説明は支離滅裂で、訳が分からなかった。

 「あの…その…」
  睨まれてオドオドする。
 「はぁ~…ソニアを初めて見たのは?」
  大きな溜息を吐いてから聞く。質問形式にしたようだ。
 「ゴア村です!」
  え・・・。い、いや、とりあえず聞こう。

  要約するとガイの話はこうだ。

  ゴア村の酒場(ジュースを飲んで寝ていたらしい)で私を見て、変わった匂いがするのが気になって後をつけた。シャハールの手前までつけたが白兎族だという事しか分からなくて、報告するまでもないと思ってオーナーには言わなかった。ところが今日私をここで見て、珍しい白兎族だという事を武器にしてオーナーに擦り寄る悪い女だと思い込んだ。そしてあのような行動に出た。

  あの視線の原因が分かりましたよ。それに、確かにゲーム内でもそういう女はわんさか居たけど・・・まさか私がそんな女だと思われていたとはね。

 「ほお…?つまり、お前の勘違いでソニアを襲ったと。こういう事だな?」
  オーナーが怒りの籠った声で凄み、射抜くような視線を向ける。
 「ヒッ!しいませんでしたぁ!!!」
  ガイががばっと頭を下げる。口が回っていない。

  これは怒られても仕方ないね。うん。まあ・・・オーナーの時の方が断然怖かったですけど。とか考えているとふと気になった。

  ・・・ゴア村からずっとって言ってたよね?・・・・・まさか。

 「あの…一つだけ質問しても良いですか?」
 「ああ、いいぞ」

  オーナーが私の方を向いたのでガイはへにゃっと力を抜いた。許しを得たので意を決して聞く。

 「…水浴びした時も…見てたの?」
  ずっとつけてたならあの水浴びも見てた可能性は大きい。なら私は…素っ裸を知らない子に曝した事になる。

  ガイの顔が、みるみるうちに真っ赤になる。

 「!!!」
  み、見られた!素っ裸。全裸。知らない男の子に。狼だもん、目が良いはず。遠くてもバッチリ見えるはず。
 「まさか…ずっと、終わるまで見てた?」
  せめて見たのが一瞬だったならまだ救いがある!そう思ってガイの答えに一縷の望みをかける。
 「だって!ずっと見てなきゃ逃げるかもしれねえだろ!!」

  なんじゃそりゃ!!

 「そんなこと…!」

  言いかける私の声を遮ったのはオーナー。

 「…ガイ…見たのか?」

  さっきとは全く違う凄み。絶対強者の威圧に、ガイどころか向けられていない私までヒヤッ、とする。

 「う、ぐ…」
  ガイは声さえ出せず、汗をダラダラ流してガクガク震えている。
 「返事はどうした…?」

  返事など出来るはずもない。見ていられなくなってオーナーの近くへ行く。

 「…オーナー。もういいですから」
  そう声を掛けた途端、パッと威圧が霧散する。ガイはその場に崩れ落ち、気を失った。
 「良くない」
 「え?」
 「俺は見てない」
 「……はあ?」
  オーナーの言葉に耳を疑う。
 「着替えはさせたがブラジャーとショーツは我慢した。だから俺は見てない」
 「ブ、ブラ…!な、なん、あ、当たり前です!!」
 「ガイは見たんだろう」

  憮然としてそっぽを向くオーナーに唖然とする。もしかして・・・拗ねてるの?

  私はガイが気を失っている事も忘れ、信じられない思いで彼の顔を見ていた。

 「見られたのは不可抗力ですよ?それに外で水浴びした私にも責任はあります」
 「…ガイの肩を持つのか」
 「な、何でそうなるんですか!」
 「・・・・」

  むくれてる・・・むくれてるよ。泣く子も黙るレドモンドが。どうすんのこれ。そろそろ仕事の準備しなきゃいけないんだけど。

  その時助け船が現れた。途中で店に呼ばれたマスターだ。

 「オーナー。ソニアさんは仕事の時間です。…ソニアさん、行っていいですよ。後は任せてください」

  優しい笑顔でそう言ってくれるマスターは後光が射して見えましたよ。ありがたやありがたや。

 「ありがとうございます、マスター。あの、オーナーも…ありがとうございます」

  勘違いで襲われるなんて冗談じゃない。つけられていた事もあって結構頭に来ていた。でもオーナーがガツンと怒ってくれて、安心した。でも気絶しちゃったのはかわいそうだったかな。

  私は2人に頭を下げてから部屋を出た。

 「今日も珍しいものが見られました」
  ソニアが出ていった後ルーカスが楽しそうに言った。実は水浴びの事を聞いた辺りからドアの外にいた。
 「ガイの所為だ」
 「ガイはもう勘弁してあげてくださいね?ソニアさんに返り討ちにされてましたから」
 「返り討ち?」
 「ええ、私が見た時は地面にうつ伏せで抑え込まれていました」
 「ソニアが抑え込んだのか。…全く、面白い女だ」
 「同感です」
 「…白兎の事、後で口止めしておけよ」
 「はい、もちろんです」

  ガイは数日間酒場の居住スペースに泊まることになった。

しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました

春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。 名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。 誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。 ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、 あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。 「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」 「……もう限界だ」 私は知らなかった。 宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて―― ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。

処理中です...