R18、アブナイ異世界ライフ

くるくる

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14. グラベット

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 泣く子も黙るレドモンドの新たな一面を見てから数日後、私はオーナーに呼び出された。

  店が終わった後のオーナー部屋にはマスターもいた。

 「ソニア、俺の傍で、俺を手伝ってくれないか。これはオーナーとしてではなく、魔人レドモンドとしての頼みだ」
 「魔人として…」

  この世界には保安局が設立される以前から、盗賊や魔物などの生活を脅かす存在から街や人を守る組織が存在する。そこは魔人と戦闘能力のある獣人で構成されている。そのボスの元へは他の街に配置した魔人から定期的に情報が入り、魔人のいない街にも人を送って状況を調べている。彼らがいる事自体が盗賊への抑制にもなっていて、行動も実に迅速かつ適格に行われる。保安局とも連絡は取りあっているし協力もする。だが、はっきり言って歴史の浅い彼らとは格が違う。それが多くの街人の考えだった。

 組織の名は初代ボスの名を取って “グラベット” 現在のボスがレドモンド、そして側近中の側近、ナンバー2がルーカスである。

 彼には自身でも言っていた通り酒場のオーナーとしての顔もある。この酒場とクラベットは別物で、彼の側近や僅かなメンバーが掛け持ちしているに過ぎない。クラベットのメンバーには、こうして仕事を持ちながら有事には打って出る、という者が多い。そのメンバーが働く酒場や店の多くはレドモンドがオーナーだ。本店がここシャハール、他は全て支店となる。

  魔人と獣人、どちらが欠けても今のような生活は成り立たない。街や獣人を守ることが、ひいては自分たちの為にもなる。そう彼は言う。

 「綺麗な仕事ばかりじゃない。俺を邪魔する者は排除してきた。それはこれからも変わらない。傍にいれば守ってやる、と言いたいが、お前は唯守られるだけの女じゃないだろう。なら、手伝え」

  彼の漆黒の瞳が私を見据える。見る者を震え上がらせる冷たい瞳。でも何故か私には己の心の真実を語る瞳に見えた。

  ここまでくればもう、彼に気にいられてる事実から目を逸らせない。でも一つだけ聞いておきたいことがある。

 「…何で、そこまでしてくれるんですか?私が魔人の女だから、ですか?」

  失礼な事を聞いてると思う。でももし、魔人だから、が理由なら守られるなんて御免だ。

  彼の目が明らかに不機嫌な色を帯びる。

 「…ここに置いた最初の理由はそれだ。だが、傍に置きたいのはお前だからだ」
  そう言ってまたふてくされる。すると黙って成り行きを見ていたマスターがふふふ、と笑った。
 「これは本当ですよ。私が保証します。レドは魔人だからという理由だけで人を傍に置きません」
 「…」
  彼はそっぽを向いている。

  守られるだけの女じゃない。そう、私は大人しく守られるだけなんて嫌。

  私だから傍に。珍しい魔人の女だからじゃない。

  それはとても嬉しい言葉だった。いきなりこの世界に放り込まれ、自分の居場所を探す私の心を捕らえるには充分だった。

  後から思えば、この時から想いを自覚し始めたのだ。

  こうして私は彼の傍で彼を手伝う事を選び、グラベット入りを果たした。











 翌日、私は魔人の能力について教わっていた。

  基本的に、獣人よりも魔力が強く、身体能力も高い者が多い。魔法は固有ではなく、平均1、2属性で、固有魔法と変わりはないが魔人魔法と呼ばれている。固有能力は大きく3つのカテゴリーに分かれる。

  1つ目は身体強化系。私の魔眼を始め、魔手、魔脚など。

  2つ目は魔法強化系。これは一番分かり易く、単純な強化が中心。

  3つ目はユニーク系。変化、影、魅了などがあり、一番種類が多い。

  これは千差万別で、同じ能力でもかなりの個人差が生じる。

  例えば魔眼なら。遠くが見えるだけの者もいれば、他の魔人の能力が見える者もいる。もっと強くなると透視が出来たり、不可視のものが見えたり、変化などのユニーク系能力も見破る事が出来る。1つに特化すると全て出来たりもする。

 「どうやって使うんですか?」

  オーナー部屋で目の前に座っているオーナーに聞く。彼はちょっと呆れた顔をした。

 「…どうやって、って…使った事ないのか?魔眼」
  彼には私の能力を伝えてある。
 「はい」
 「なら、おそらく今は眼を閉じた状態なんだろう。開こうと意識しなければ使えない。それに、固有能力は本能で自分の強さが分かるはずだ」
 「本能、ですか…」
 「…分かんないか?そういえば年齢を聞いてなかったな。何歳だ?」

  ・・・年齢も知らないのに近くに置くの?選考基準がよく分からないな~。

 「…28です」
 「…は?」
  オーナーが珍しく間の抜けた声を出す。
 「本当に28か?100くらいサバよんでないよな?」
 「サバよんだりしません!28です」
 「マジか…道理で若いはずだ」

  あ、そっか。魔人は平均寿命1000年くらいだっけ。ってか、寿命そんなに長いのに28でもう大人なんだ・・・。不思議。

 「その若さで、しかもハーフなら分からなくても仕方ないか。使いこなすにはまだ時間が掛かるだろう。今度からゆっくり教えてやるよ」
 「…ありがとうございます」
 「魔人魔法は確認したか?」
 「はい。白と赤です」

  昨日手伝いを了承したした後、固有能力や魔人魔法について聞かれた。確認してないと言ったら、自分の能力は早く把握しなくてはダメだ。と怒られたのだ。

 「ほお、白兎の白に加えて魔人魔法の白、か。…面白い奴だな。だが、赤は納得だな。覚醒の熱に加えて赤の熱。それで実際に高熱が出たって訳だ。魔力が強いのには変わりないがな」

  ・・・面白いって褒め言葉じゃないよね?でも、そう言われたら熱は確かに納得。原因が分かって良かった。

 「印は赤に近いか…?」
  独り言のように呟く。

  魔人の印は、魔人魔法の属性色が混ざった色合いになる。強弱も関係していて、強い方の色が濃く出る。白と赤の私はピンク。黒属性を持っていれば他に何が混ざろうと、当然黒っぽい色になる。そして属性を曝さない為にも印は隠す場合が多い。現れる場所に法則性はなく、それぞれ違う。

 「印は出たな?見せろ」
 「…は?」
 「は?じゃない。見せろ」
 「え、で、でも…印、胸の谷間…」

 「「・・・」」

 「…別に何もしない!色を確認するんだ」
 「ピンクです」
 「…俺の目で見る」
 「どうしてもですか?」
 「……ああ」

  今チョット間があったよね?大丈夫かな・・・。

 「分かりました…。でも脱ぐのはちょっと。ここから見てください」
  そう言ってカットソーの襟を摘んだ。
 「ああ、それでもいい」

  オーナーは立ち上がってきて隣に座ると、ちょっと前屈みになった私の襟を引っ張った。

  ・・・ち、近い!緊張する・・・。初めてじゃないけど。い、いや、それもどうなの!

  一人で顔を赤くする私をよそに彼は冷静だった。下から見上げた瞳は真剣で、下心など一切ないように感じた。

 「結構薄いピンクだな。高熱が出たくらいだからもっと赤が濃いかと思ったんだが…赤が弱い…は無いな。となると魔人魔法の白が余程強いのか。白兎の分も加えての強さか…まだ断定は出来ないな」

  ちょっと反省。凄く真剣に考えてくれてる。

  オーナーが私を見る。目が合ってドキン、として、自分が彼を見つめていた事に気が付いた。

 「綺麗だ」
  そう囁いて服の上から指で印をつっ、と撫でる。たったそれだけなのに、急に印が熱を持った気がした。
 「オーナー…あの」
 「レド」
 「え?」
 「レドと呼べ」
 「え、でも…」
 「酒場の仕事中はオーナーで良い。それ以外の時だ」

  ええ!いきなり愛称の呼び捨てはハードル高いって!レド呼びしてるのはマスターしか知らないし!何段階もすっ飛ばしてズルしてる気分だよぅ!

  という事で妥協案を出してみます。

 「…レドさん、でいいですか?」
 「いや、レド、だ」
 「そんな」
 「嫌か?」
 「そうじゃないですけど、やっぱり…」
 「なら呼べ」

  新入りがいきなりそれじゃマズイでしょう?と言いたかったのに・・・遮られましたよ。

 「オーナー!」
 「レド」
 「…」
 「レド」
 「子供ですか!」

  この変に甘ったるい押し問答はマスターが来るまで続いた・・・。 
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