68 / 113
64.トラブルメーカー本領発揮!?
しおりを挟む翌日、目が覚めたのはもうお昼過ぎだった。
昨夜はレドの言葉通り朝まで2人に喘がされ、眠ったのはたぶん7時頃。やっと終えてシャワーしにバスルームへ向かった辺りで記憶が途絶えている。
・・・今日、わたし休みで良かった。身体が辛い訳ではないけど何となく重い。起き上がって着替え、誰もいないベッドルームを出た。2人はもう仕事に出たらしく、リビングやキッチンにも居なかった。洗顔を済ませてコーヒーを飲んでいるとルーカスが来た。手にはトレイ。
「ああ、ソニア、起きてましたか。身体は大丈夫ですか?」
心配気に言いながらテーブルに軽食の乗ったトレイを置き、隣に座る。
「うん、大丈夫」
「…顔色が優れませんね。すみません、昨夜は少し責めすぎました」
冷たい手でわたしの頬を包む。彼は人より少し体温が低く、ふれられるといつもひんやりする。
「大丈夫、今日は休みだし」
「そうですね…食事は持ってきますから、休んでて下さいね?」
ちゅっ、と小さくキスする。
「ん…ありがとう」
そこまでしてもらうほどでもないが、それを訴えたところで結果はいつも同じでわたしが押し切られる。身体が重いのは本当なので今日は甘えておく事にした。
ルーカスはまた様子を見に来ます、と言って店に戻った。入れ違いにレドがキッチンに入ってくる。隣に座りながらルーカスと同じことを聞いた。
「身体大丈夫か?」
「ふふ…大丈夫」
「そうか?顔色が良くないぞ。…少し無理させたな」
「今日は休みだもん、だから大丈夫。ふふ…」
すごいシンクロぶりに思わず笑う。
「どうした?機嫌がいいな」
「うん。だって、2人して同じこと言うから」
「そうか?フフッ、お前が寝てから2人で少し反省したからな」
「そうなんだ」
レドはわたしが食べるのを眺め、キスしてから仕事に戻っていった。
食後、少し休んでからシャワーを浴びると随分スッキリした。身体の重みもだいぶ取れた感じ。これで2人に心配かけなくてすむ、と思いながらソファーでアイスコーヒーを飲む。
・・・ヒマ。
わたしはひとりになる時間があまりない。休みも大抵レドかルーカスと一緒だし、ここ最近は色々忙しかった。こんなに時間があるの久しぶりかも。ちょっと身体動かしたいな。合気道の訓練でもしようか、何かの役に立つかもしれないし。
・・・やっぱり止めとこう。今日そんな事したら後で怒られるかも。散歩にしよう、うん。
わたしは私室の玄関から出て裏庭へ向かった。
◇
その頃、裏庭にはエドガーとレドモンドの部下が数人いた。部下は獣人で、エドガーの珍しい魔人能力について興味津々で話を聞いていた。
「ホントにそんな事出来るんですか?」
「聞いた事ないよな」
部下たちがエドガーに疑いの視線を向ける。すると彼はニヤッと笑い、手の平を前に突き出して集中する。そして部下たちを見て言う。
「見せてあげるよ。あの木を見ててごらん……フッ!」
掛け声と共に彼の示した木からモヤっとしたものが湧き出した時、木の側に人影が出てきた。
「ッ!!避けて!!」
◇
私室の玄関から外へ出て、建物の裏へ回る。裏庭に近づくと話し声が聞こえてきた。
誰だろう?人がいるなんて珍しい。そう思いながらも足を止めずに進む。
もしもこの時、少しでも立ち止まっていたなら。或いは声の主に気が付いて引き返していたなら。こんな事にはならなかっただろう。でもわたしには分からなかった。この声が昨日訪れたトラブルメーカーのものだとは。
建物を抜けて裏庭の隅に出た時、急に変なモヤが目の前に現れた。
「避けて!!」
誰かが叫ぶ。だが時すでに遅く、モヤに包まれて身動き出来なくなってしまった。
「きゃあッ!」
魔力を吸い取られるような気持ち悪い感覚に思わず悲鳴を上げ、目を閉じる。
気持ち悪い感覚はすぐに収まった。恐る恐る目を開ける。
「ソニアちゃん!」
わたしの名を呼んで駆け寄ってきたのはエドガーさん。彼のすごい勢いに驚き、慌ててストップをかける。
「まって!」
ん?なんか声がおかしい。
困った顔で立ち止まるエドガーさん。あれ?何でこの人こんなに大きいの?と不思議に感じた時、自分の手が視界に入る。
・・・・・え、えええええ!!!なにこの手!!ちっちゃ!!
自分の身体を見下ろす。
・・・・・。
ゴシゴシ目を擦ってもう一度見る。
・・・・・なーにーこーれー!!!全部ちっちゃい!!!
ソニアの足元には大きくてずり落ちたショートパンツとショーツ。靴の中には小さな足。カットソーがワンピースみたいに長くて、ブラは片方の肩に辛うじて引っ掛かって落ちていない。見た目3才くらいの女の子。3才という事は・・・皆さんお気付きでしょう?そうです、うさ耳としっぽ、しっかり出てます。
「・・・・・」
ショックなのと訳が分からないのとで呆然とする。ただ一つ分かっているのは・・・トラブルメーカーエドガーが絡んでいる事。
「ソ、ソニアちゃん…あのさ…」
一歩踏み出して声を掛けてくるエドガーさん。わたしはまた彼を止める。
「ッ!ちかよらないれくらさい!」
・・・近寄らないで下さい、そう言ったつもりだったのに言えてないよ!この小ささだと2、3才くらいかな・・・そりゃ舌回らないよ・・・。うぅ・・・もう泣きそう。どうなってんのさ。とにかくレドたちのところまで戻ろう。
下がって役に立たなくなったショートパンツとショーツ、それに大きくて歩けない靴も脱いで何とか抱えようとした時。
「ソニア!!」
レドが裏口から飛び出して来た。わたしを見つけ、驚愕に目を見開く。わたしの方はレドの顔を見て安心し、あっという間に涙で視界が歪んだ。
「レド…ぅ…ぐすっ…レドぉ!」
持っていた服を放り投げ、裸足で駆け寄る。彼は戸惑いながらもしゃがんで抱きとめてくれた。
「確かにソニアだな…どうしてこうなった?」
「ひっく…ぅ、あのね、うらにわにきたら、もやっとしたへんなので、うごけなくなって、なくなったらこうなった」
「……もやっとした変なもの?……エドガー……貴様…この世から消されたいのか…?あ”あ”!?」
レドの全身から覇気が放たれる。エドガーさんは真っ青になって懸命に首を横に振っている。裏庭の隅っこで部下たちがブルブル震えている。
う~…ちっちゃい身体にこれはちょっとキツイ。わたしはくいくいっ、と両手でレドの服を引っ張った。
「レド…はきは…だめ…くるしく、なる」
「…ッ、すまない。大丈夫か?ソニア」
膨れ上がっていた覇気は訴えるとすぐに霧散した。
「…ふぅ、うん。もうだいじょうぶ」
ホッとして息を吐くと巨人のように大きな手が頭を撫で、片手でひょい、と抱き上げる。
「…エドガー、来い。お前らもだ」
レドは彼らに背筋の凍るような冷たい声色で言い、わたしの服と靴を拾って私室の玄関へ向かった。
108
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました
春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。
名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。
誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。
ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、
あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。
「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」
「……もう限界だ」
私は知らなかった。
宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて――
ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる