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開発
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「お前、あんなこと言ってよかったのか?」
工房に戻るとダンカンさんが聞いてきた。
「あんなこと?」
「サンプル作るまでの時間の話だよ。魔力を抑える魔法陣なんて聞いたこともねえ。調べるだけでもものすげえ時間がかかるし、そんな魔法陣がなければ開発の必要があるってことだろ。とても二日じゃ足りねえだろうに」
確かにダンカンさんの言うことももっともだ。
家にあった『魔法陣大全』の本の中にも魔力を押さえる魔法陣はなかった。かといって一から魔法陣を開発するというのは、実力ある魔法使いが長年をかけてやっと可能というほど難しいことなのだ。
けれど、今回に限ってはなんとかなる。
「私が知っている魔法陣を組み合わせればいけると思います」
「魔法陣を……組み合わせる……?」
「はい」
一から作り出すのは難しくても、それならじゅうぶんに短時間で実現できるはず。
さすがに完璧に作れと言われたら難しいけれど、サンプルくらいなら二日で十分足りることだろう。
「……俺がおかしいのか? 魔法陣を組み合わせて新しい魔法陣を作るなんて手法、聞いたこともねえんだけどな……」
ダンカンさんがなにやら呟いている気がするけど、今は仕事に集中だ。
一つは『魔力吸収』の魔法陣。
これは都市を守る結界なんかを作る際、周辺の大気から魔力を集めるために使うものだ。
本来は結界を作る魔道具に刻印されているものだけど、魔法服にも同じ模様が流用できる。
もう一つは『魔力発散』の魔法陣。
こっちは魔物を生み出す『魔力溜まり』を解消するための魔法陣だ。偏った魔力を散らすことで、魔物が生まれることを防ぐ効果がある。
これらを組み合わせることで、身に着けた人の魔力を吸い、さらに外に逃がす魔法陣が組める。
おそらくあの黒髪の青年が今まで魔力を抑える魔道具を壊してしまっていたのは、『魔力吸収』だけを魔道具に組み込んでいたからだと思う。
魔力を吸い過ぎて、魔道具が限界を迎えてしまうのだ。
それを周囲に吐き出す仕組みをプラスすれば、長期使用も問題ないはず!
紙に実際に図案を描き、魔法陣として成立するように組み上げていく。
それを今度は布に刺繍して調整する。
「あ」
魔法陣の構成がうまくいかずに魔力が暴発し、ボン! と布が爆ぜた。
その余波で、まるで爆風でも浴びたように髪や服がぐしゃぐしゃになってしまう。
簡単にはいかない。
けど……楽しい。
自分の『やりたいこと』に挑戦しているからだろうか?
フロッグ殿下の婚約者だった頃にはなかったわくわく感が止まらない。
工房に戻るとダンカンさんが聞いてきた。
「あんなこと?」
「サンプル作るまでの時間の話だよ。魔力を抑える魔法陣なんて聞いたこともねえ。調べるだけでもものすげえ時間がかかるし、そんな魔法陣がなければ開発の必要があるってことだろ。とても二日じゃ足りねえだろうに」
確かにダンカンさんの言うことももっともだ。
家にあった『魔法陣大全』の本の中にも魔力を押さえる魔法陣はなかった。かといって一から魔法陣を開発するというのは、実力ある魔法使いが長年をかけてやっと可能というほど難しいことなのだ。
けれど、今回に限ってはなんとかなる。
「私が知っている魔法陣を組み合わせればいけると思います」
「魔法陣を……組み合わせる……?」
「はい」
一から作り出すのは難しくても、それならじゅうぶんに短時間で実現できるはず。
さすがに完璧に作れと言われたら難しいけれど、サンプルくらいなら二日で十分足りることだろう。
「……俺がおかしいのか? 魔法陣を組み合わせて新しい魔法陣を作るなんて手法、聞いたこともねえんだけどな……」
ダンカンさんがなにやら呟いている気がするけど、今は仕事に集中だ。
一つは『魔力吸収』の魔法陣。
これは都市を守る結界なんかを作る際、周辺の大気から魔力を集めるために使うものだ。
本来は結界を作る魔道具に刻印されているものだけど、魔法服にも同じ模様が流用できる。
もう一つは『魔力発散』の魔法陣。
こっちは魔物を生み出す『魔力溜まり』を解消するための魔法陣だ。偏った魔力を散らすことで、魔物が生まれることを防ぐ効果がある。
これらを組み合わせることで、身に着けた人の魔力を吸い、さらに外に逃がす魔法陣が組める。
おそらくあの黒髪の青年が今まで魔力を抑える魔道具を壊してしまっていたのは、『魔力吸収』だけを魔道具に組み込んでいたからだと思う。
魔力を吸い過ぎて、魔道具が限界を迎えてしまうのだ。
それを周囲に吐き出す仕組みをプラスすれば、長期使用も問題ないはず!
紙に実際に図案を描き、魔法陣として成立するように組み上げていく。
それを今度は布に刺繍して調整する。
「あ」
魔法陣の構成がうまくいかずに魔力が暴発し、ボン! と布が爆ぜた。
その余波で、まるで爆風でも浴びたように髪や服がぐしゃぐしゃになってしまう。
簡単にはいかない。
けど……楽しい。
自分の『やりたいこと』に挑戦しているからだろうか?
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