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1.プロローグ
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ある所に貧しい一家が住んでいた。日々の生活が苦しくとも、夫は妻を溺愛し、彼らの子である双子の姉弟はとても仲がよかった。
双子の姉のイレーネは、母親のウルリケに似て少し浅黒い肌をしており、焦げ茶色の瞳と髪の毛を持っていた。彼女は小さな目鼻立ちをしていてかわいらしく、愛嬌があり、性格も天真爛漫で明るい。
一方、弟のカイは白磁のように滑らかで白い肌をしているが、頬だけはほんのりと赤らみ、黄金のように輝く金髪と透き通る湖水のような青い瞳を持っていた。その神が与えたかのような美貌と天才的な頭脳は、父親似であった。
イレーネは、優しい母が大好きで絶世の美男である父親と弟を誇りに思っていたが、貧しい生活だけは少し不満だった。遠くから見かけたことのある貴族女性のように着飾ってみたい――イレーネは、そう言っていつも両親のいない場所で弟のカイに愚痴るのだった。
「あーあ、私もあんなに綺麗なドレスを着てみたいな。どっちかのおじいちゃんとおばあちゃんが実は大金持ちで私達を迎えに来るとかないかな」
「イレーネはバカだなぁ。そんな夢みたいな話なんてないよ」
「でも両方のおじいちゃん、おばあちゃんのことも、親戚のことも、私達、全然知らないんだよ。おかしくない? だから、お父さんかお母さんのどちらかが本当は大貴族の子で、もう片方がその家に仕えていた使用人だったんじゃないかな。キャー、禁じられた恋だよ!」
イレーネが頬を染めてはしゃいだのとは対照的に、カイは呆れたように大きなため息をついた。
「ハァ……どうせかなわない妄想なんてやめたほうがいいよ」
「想像ぐらいは自由でしょ!」
「まあ、妄想ぐらいは勝手にしてもいいけど、お父さん達には言わないようにね。お父さん達が駆け落ちしたのはたぶん合っているけど、そんな大それた家の人間じゃなかったと思うよ。もしそうだったとしたら、とっくに誰かが迎えに来ていたはずだ」
「それもそうだよね……」
イレーネとカイはこんな会話をしていた頃、まもなくあんな騒動が起きてイレーネの想像が全くの間違いではなかったと判明するとは想像すらできなかった。
それまで2人は、祖父母どころか、親戚にも一切会ったことがなかった。両親はたぶん『駆け落ち』というものをして親に絶交されているんだというのが、イレーネより大人びたカイの考えだった。だから、両親にそのことを聞きただしてはいけないとカイが言うのをイレーネは律儀に守っていた。
双子の姉のイレーネは、母親のウルリケに似て少し浅黒い肌をしており、焦げ茶色の瞳と髪の毛を持っていた。彼女は小さな目鼻立ちをしていてかわいらしく、愛嬌があり、性格も天真爛漫で明るい。
一方、弟のカイは白磁のように滑らかで白い肌をしているが、頬だけはほんのりと赤らみ、黄金のように輝く金髪と透き通る湖水のような青い瞳を持っていた。その神が与えたかのような美貌と天才的な頭脳は、父親似であった。
イレーネは、優しい母が大好きで絶世の美男である父親と弟を誇りに思っていたが、貧しい生活だけは少し不満だった。遠くから見かけたことのある貴族女性のように着飾ってみたい――イレーネは、そう言っていつも両親のいない場所で弟のカイに愚痴るのだった。
「あーあ、私もあんなに綺麗なドレスを着てみたいな。どっちかのおじいちゃんとおばあちゃんが実は大金持ちで私達を迎えに来るとかないかな」
「イレーネはバカだなぁ。そんな夢みたいな話なんてないよ」
「でも両方のおじいちゃん、おばあちゃんのことも、親戚のことも、私達、全然知らないんだよ。おかしくない? だから、お父さんかお母さんのどちらかが本当は大貴族の子で、もう片方がその家に仕えていた使用人だったんじゃないかな。キャー、禁じられた恋だよ!」
イレーネが頬を染めてはしゃいだのとは対照的に、カイは呆れたように大きなため息をついた。
「ハァ……どうせかなわない妄想なんてやめたほうがいいよ」
「想像ぐらいは自由でしょ!」
「まあ、妄想ぐらいは勝手にしてもいいけど、お父さん達には言わないようにね。お父さん達が駆け落ちしたのはたぶん合っているけど、そんな大それた家の人間じゃなかったと思うよ。もしそうだったとしたら、とっくに誰かが迎えに来ていたはずだ」
「それもそうだよね……」
イレーネとカイはこんな会話をしていた頃、まもなくあんな騒動が起きてイレーネの想像が全くの間違いではなかったと判明するとは想像すらできなかった。
それまで2人は、祖父母どころか、親戚にも一切会ったことがなかった。両親はたぶん『駆け落ち』というものをして親に絶交されているんだというのが、イレーネより大人びたカイの考えだった。だから、両親にそのことを聞きただしてはいけないとカイが言うのをイレーネは律儀に守っていた。
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