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紅の騎士は白き花を抱く
15.新婚初夜に、花嫁に、花嫁の怖いこと、できないよ。*
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ジオークの声が聞こえたかと思えば、自分の隣が更に沈む感じがして、瞼を持ち上げる。
隣を確認して、リシェーナは目を白黒とさせた。
新婚初夜に、「おやすみ」と言ったジオークは、もうリシェーナの隣で目を閉じている。
愕然とした。
ジオークは、あんなキスをしておいて、何もせずに眠ろうとしている?
「わたし、魅力ない?」
呆然としたリシェーナの唇から漏れた言葉は、自分でも驚くくらいに弱々しく、泣きそうに聞こえた。
ジオークは驚いたように目を開いて、リシェーナの方を向いた。
「なんで? そんなことあるわけないじゃん」
「でも」
ジオークはそんなことはないと言ってくれているが、ならばどうして、という思いが拭えずに、リシェーナはジオークを見つめる。
「でも?」
優しくジオークが、リシェーナの言葉の先を促してくれなかったら、きっと言えなかったと思う。
「…どうして…触ってくれない?」
言葉に換えるのに、とても勇気が要った。
自分が発した声が、消え入りそうに小さいのもわかっている。
けれど、ジオークの耳にはしっかり届いていたらしく、ジオークは身体を起こすとリシェーナの頬をそっと包んでくれる。
「だってリシェ、震えてたじゃん。 新婚初夜に、花嫁に、花嫁の怖いこと、できないよ」
優しい声が、気持ちが、胸に染みる。
染みて、広がって、きっと、ジオークの色に染まる。 染めてほしい。
過ぎるくらいに優しくて、誠実な彼が、好きだから。
リシェーナは、ジオークの手の上に自分の手を重ねる。
「怖くない。 震えたのは、幸せで、胸がいっぱいだったから。 わたし、ほんとうに、すきなの。 あなたに触ってほしい」
はしたないと思われても、いい。
ジオークに、愛して、ほしい。
忘れたい。 消してほしい。 過去を。
「愛して」
リシェーナが、恥ずかしさを押し殺してジオークに願えば、ジオークの表情が消えた。
消えた、というのはおかしいかもしれない。
真剣な顔は、どこか切羽詰まっても見え、ドキリとする。
いつも、のんびりと構えてどこか飄々とし、余裕のあるように見えるジオークからは、想像の出来ない表情だった。
瞳に宿る光も、慈しむような愛情から、どこか熱を帯びた愛情に変わっているような気がする。
「そんなふうに言われると、止まらなくなるよ、おれ」
リシェーナのことで、余裕をなくしてくれるのが嬉しい、なんて、リシェーナも大概ジオークのことが好きだ。
「…うん…」
微笑んで、頷けたのは、リシェーナが本当にジオークを好きだから。
それから、止まらなくなるよ、と言ってはいても、ジオークがリシェーナにひどいことは絶対にしないのを、確信しているからだ。
リシェーナは、顔の角度を変えて、頬を包んでくれていたジオークの手に、唇で触れる。
ぴく、とジオークの指先が反応したのを、感じる。
「リシェ…」
リシェーナの名を呼びながら、近づいてくるジオークの顔に、リシェーナは目を伏せる。
唇が、触れて、ごく自然に入って来たジオークの舌をリシェーナは受け容れた。
「ん、ふ…」
鼻から、息と共に、声が漏れてしまう。
けれど、それをどうやったら止められるのか、わからない。
こんなキス、知らない。 舌が痺れるような感じがして、呼吸が上手に出来ない。
けれど、離れたくない。
ジオークに与えられるキスに酔わされているのを感じる。
「…キス…返して…」
キスの合間に、彼が囁く。
その声を聴いただけで、身体の芯から熱くなるような気がする。
彼に、喜んでほしい。
その一心で、リシェーナはジオークを真似て舌を動かし、唇を重ねる。
きちんと、彼の望んだように、求めるように出来ているだろうか。
リシェーナがジオークを窺い見ると、息継ぎのタイミングで、ジオークは微笑んでくれた。
「…そ…。 上手…」
「ほ、ほんと…?」
「…うん。 …気持ち、いー…」
褒めるように、リシェーナの瞼や頬に口づけを降らせながら、ジオークの手がするするとリシェーナの寝衣を脱がせていく。 迷いのないその動きに、リシェーナはただ、身を委ねる。
「ん…」
「リシェ、いい匂いだね」
リシェーナを抱きかかえるようにしながら、ジオークの手はリシェーナの寝衣を足の方から抜き取る。
素肌に降るジオークの唇に、ざわざわする。
肌だけではなく、胸の奥がざわざわし、脚の間がきゅうっとなるような感じがするのだ。
「嫌なところあったら、教えてね」
恥ずかしくて、ジオークを見れないままに頷けば、ジオークのしっかりと逞しい手が、肌を滑り出す。
唇が肌に触れる感覚とは、全然違う。
どちらが気持ちいいと聞かれれば、どちらも気持ちいいのだけれど、明確な刺激が伝わるという点で、彼の手が肌を滑るとぞくぞくするする。
ふっと目を開けたリシェーナはドキリとした。
いつの間に彼はシャツを脱いだのだろう。
下はまだ穿いたままだけれど、上半身は裸で、しっかりとした肩から二の腕へと流れる筋肉のラインに心臓が痛い。 しっかりと厚い胸板からお腹へも、筋肉がしっかりと浮いていて、目のやり場に困る。
リシェーナとは全く違う身体だ。
今更ながらにそんなことを意識していると、ジオークがリシェーナの唇を軽く吸った。
「痛かったら、言って?」
「うん…」
リシェーナが頷くとほぼ同時に、ジオークのしっかりとして硬い手が、リシェーナの胸の膨らみに触れた。
「…ぁ…」
胸の先と、彼の掌の皮膚が擦れると、そこから震えが走って声が漏れる。
彼の手の中で、あっという間に、胸の先端が固くなってしまった。 脚の間もきゅうきゅうして、無意識のうちにリシェーナは身をくねらせる。
「んぅ…」
「…可愛い…」
うっとりとしたように言うジオークの声を聞けば、急に恥ずかしくなって顔面に熱が集中する気がする。
ジオークの視線から逃れたくなって、リシェーナはうつぶせになったのだが、あまり意味はなかったようだ。
「! ん、ぅ」
背後から腕を回されて、胸を掬い上げるようにして、触れられている。
胸を、やわらかく、やさしく、けれど、的確に揉みしだく手。 尖り切った胸の中心を愛撫する指先。
「ひっ」
そればかりではなく、背筋を何か熱くぬめったものが這って、リシェーナは思わずのけぞった。
背筋を這っているのは、まさか、舌先だろうか。
触れるか否かという絶妙な加減のそれに、リシェーナは口を手で覆いながら震えた。
「ぅ、ん、ふ」
どう、しよう。
ジオークは、すごい、かもしれない。
こんなこと、今まで、なかった。
こんなふうに、下半身が熱くなることなんて。
脚の間が濡れているのを、自分で感じてしまうことなんて。
欲しくて、濡れる。
リシェーナはそれを、初めて実感していた。
隣を確認して、リシェーナは目を白黒とさせた。
新婚初夜に、「おやすみ」と言ったジオークは、もうリシェーナの隣で目を閉じている。
愕然とした。
ジオークは、あんなキスをしておいて、何もせずに眠ろうとしている?
「わたし、魅力ない?」
呆然としたリシェーナの唇から漏れた言葉は、自分でも驚くくらいに弱々しく、泣きそうに聞こえた。
ジオークは驚いたように目を開いて、リシェーナの方を向いた。
「なんで? そんなことあるわけないじゃん」
「でも」
ジオークはそんなことはないと言ってくれているが、ならばどうして、という思いが拭えずに、リシェーナはジオークを見つめる。
「でも?」
優しくジオークが、リシェーナの言葉の先を促してくれなかったら、きっと言えなかったと思う。
「…どうして…触ってくれない?」
言葉に換えるのに、とても勇気が要った。
自分が発した声が、消え入りそうに小さいのもわかっている。
けれど、ジオークの耳にはしっかり届いていたらしく、ジオークは身体を起こすとリシェーナの頬をそっと包んでくれる。
「だってリシェ、震えてたじゃん。 新婚初夜に、花嫁に、花嫁の怖いこと、できないよ」
優しい声が、気持ちが、胸に染みる。
染みて、広がって、きっと、ジオークの色に染まる。 染めてほしい。
過ぎるくらいに優しくて、誠実な彼が、好きだから。
リシェーナは、ジオークの手の上に自分の手を重ねる。
「怖くない。 震えたのは、幸せで、胸がいっぱいだったから。 わたし、ほんとうに、すきなの。 あなたに触ってほしい」
はしたないと思われても、いい。
ジオークに、愛して、ほしい。
忘れたい。 消してほしい。 過去を。
「愛して」
リシェーナが、恥ずかしさを押し殺してジオークに願えば、ジオークの表情が消えた。
消えた、というのはおかしいかもしれない。
真剣な顔は、どこか切羽詰まっても見え、ドキリとする。
いつも、のんびりと構えてどこか飄々とし、余裕のあるように見えるジオークからは、想像の出来ない表情だった。
瞳に宿る光も、慈しむような愛情から、どこか熱を帯びた愛情に変わっているような気がする。
「そんなふうに言われると、止まらなくなるよ、おれ」
リシェーナのことで、余裕をなくしてくれるのが嬉しい、なんて、リシェーナも大概ジオークのことが好きだ。
「…うん…」
微笑んで、頷けたのは、リシェーナが本当にジオークを好きだから。
それから、止まらなくなるよ、と言ってはいても、ジオークがリシェーナにひどいことは絶対にしないのを、確信しているからだ。
リシェーナは、顔の角度を変えて、頬を包んでくれていたジオークの手に、唇で触れる。
ぴく、とジオークの指先が反応したのを、感じる。
「リシェ…」
リシェーナの名を呼びながら、近づいてくるジオークの顔に、リシェーナは目を伏せる。
唇が、触れて、ごく自然に入って来たジオークの舌をリシェーナは受け容れた。
「ん、ふ…」
鼻から、息と共に、声が漏れてしまう。
けれど、それをどうやったら止められるのか、わからない。
こんなキス、知らない。 舌が痺れるような感じがして、呼吸が上手に出来ない。
けれど、離れたくない。
ジオークに与えられるキスに酔わされているのを感じる。
「…キス…返して…」
キスの合間に、彼が囁く。
その声を聴いただけで、身体の芯から熱くなるような気がする。
彼に、喜んでほしい。
その一心で、リシェーナはジオークを真似て舌を動かし、唇を重ねる。
きちんと、彼の望んだように、求めるように出来ているだろうか。
リシェーナがジオークを窺い見ると、息継ぎのタイミングで、ジオークは微笑んでくれた。
「…そ…。 上手…」
「ほ、ほんと…?」
「…うん。 …気持ち、いー…」
褒めるように、リシェーナの瞼や頬に口づけを降らせながら、ジオークの手がするするとリシェーナの寝衣を脱がせていく。 迷いのないその動きに、リシェーナはただ、身を委ねる。
「ん…」
「リシェ、いい匂いだね」
リシェーナを抱きかかえるようにしながら、ジオークの手はリシェーナの寝衣を足の方から抜き取る。
素肌に降るジオークの唇に、ざわざわする。
肌だけではなく、胸の奥がざわざわし、脚の間がきゅうっとなるような感じがするのだ。
「嫌なところあったら、教えてね」
恥ずかしくて、ジオークを見れないままに頷けば、ジオークのしっかりと逞しい手が、肌を滑り出す。
唇が肌に触れる感覚とは、全然違う。
どちらが気持ちいいと聞かれれば、どちらも気持ちいいのだけれど、明確な刺激が伝わるという点で、彼の手が肌を滑るとぞくぞくするする。
ふっと目を開けたリシェーナはドキリとした。
いつの間に彼はシャツを脱いだのだろう。
下はまだ穿いたままだけれど、上半身は裸で、しっかりとした肩から二の腕へと流れる筋肉のラインに心臓が痛い。 しっかりと厚い胸板からお腹へも、筋肉がしっかりと浮いていて、目のやり場に困る。
リシェーナとは全く違う身体だ。
今更ながらにそんなことを意識していると、ジオークがリシェーナの唇を軽く吸った。
「痛かったら、言って?」
「うん…」
リシェーナが頷くとほぼ同時に、ジオークのしっかりとして硬い手が、リシェーナの胸の膨らみに触れた。
「…ぁ…」
胸の先と、彼の掌の皮膚が擦れると、そこから震えが走って声が漏れる。
彼の手の中で、あっという間に、胸の先端が固くなってしまった。 脚の間もきゅうきゅうして、無意識のうちにリシェーナは身をくねらせる。
「んぅ…」
「…可愛い…」
うっとりとしたように言うジオークの声を聞けば、急に恥ずかしくなって顔面に熱が集中する気がする。
ジオークの視線から逃れたくなって、リシェーナはうつぶせになったのだが、あまり意味はなかったようだ。
「! ん、ぅ」
背後から腕を回されて、胸を掬い上げるようにして、触れられている。
胸を、やわらかく、やさしく、けれど、的確に揉みしだく手。 尖り切った胸の中心を愛撫する指先。
「ひっ」
そればかりではなく、背筋を何か熱くぬめったものが這って、リシェーナは思わずのけぞった。
背筋を這っているのは、まさか、舌先だろうか。
触れるか否かという絶妙な加減のそれに、リシェーナは口を手で覆いながら震えた。
「ぅ、ん、ふ」
どう、しよう。
ジオークは、すごい、かもしれない。
こんなこと、今まで、なかった。
こんなふうに、下半身が熱くなることなんて。
脚の間が濡れているのを、自分で感じてしまうことなんて。
欲しくて、濡れる。
リシェーナはそれを、初めて実感していた。
応援ありがとうございます!
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