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『外へ出てみようか』
朝。
ルナは今のところご機嫌だった。
ミルクの時間もオムツの交換も終わり、ベビーベッドの中で揺れるおもちゃを目で追っている。
「ちょっとだけ、外を見てこようかな」
そうつぶやいて、悠真は小さくうなずいた。
家の外といっても、庭の先──湖畔を軽く歩くくらいだ。
抱っこ紐にルナをそっと収めて、日除け帽子を軽くかぶせる。
幸い、今日は風も穏やかで空も澄んでいる。
冷蔵庫に保存したミルクと、おしりふき・簡易オムツをサコッシュに詰め、スマホとナイフ(護身用)をポケットに。
(まだ誰もいないとは限らないし、念のためな)
玄関の鍵を施錠して、庭から外へ出る。
本格的な外出はこれが初めてだった。
⸻
家の裏手、森の縁に沿って歩くと、すぐに湖畔へ出る。
森と湖の境目にあたる場所は、ちょうど小さな草原のようになっていた。
野花がちらほら咲いていて、草の丈も膝くらいまで。歩くにはちょうどいい。
「風、気持ちいいな」
空気はほんのり湿り気を帯びていて、でも重くはない。
遠くで水鳥のような鳴き声がして、足元ではトカゲのような生き物が走っていった。
ルナはといえば、悠真の胸元で軽くまぶたを閉じていた。
揺れが心地よいのか、外の空気が効いたのか──静かに、ぐずることもなく眠っている。
「赤ん坊連れて歩くのって、こういう感じなんだな……」
どこか不思議な気持ちだった。
目の前には広がる湖と空。
それを見ながら、自分の胸には確かな重みとぬくもりがある。
⸻
湖畔を少し歩いたところで、ふと視界の端に何かが映った。
木の根元。
色の違う草むらに、長方形の、板のような何かが半ば埋まっていた。
「……ん?」
近づいてみると、それは木箱だった。
古びていて、苔むしているが、金属の蝶番と取っ手がついている。
試しに取っ手を引くと、きぃ、と音を立てて開いた。
中には──何かの工具のような金具と、布にくるまれた瓶が数本。
ラベルは剥がれていて読めないが、どう見てもこの世界の製品ではない“雰囲気”を漂わせていた。
「これは……誰かの荷物?」
でも、周囲には人の気配はない。
箱の中に入っていた革袋を開けてみると、中には数枚の銀貨が入っていた。
(現地のお金……だよな?)
試しに通販アプリを開き、銀貨をスキャン範囲に置いてみると──
ピッ。
【チャージ完了:異世界硬貨(銀貨)】
【分類:現地通貨・高額硬貨】
「おお……チャージされるのか」
アプリ内の残高が増えていた。
これで通販にも使えるし、必要ならまた現金として出力もできる。持ち歩かなくて済む分、安心感もある。
(こういうの、あまり他人には見せない方がいいな……)
あの金属片の換金といい、この通貨のチャージといい、この機能は便利すぎる。
けれど、安易に話してしまえば、利用目的で近寄ってくる人もいるかもしれない。
(信用できる相手だけ、だな。むやみに使い方を見せるもんじゃない)
箱の中にあった道具類はとりあえず保留。
他にも使えそうな物があったが、必要になったら持ち帰ることにし、箱を閉じて元の場所に戻す。
⸻
帰り道。
ルナはまだ眠っていたが、時々指をぴくぴくと動かしていた。
玄関の鍵を開けて中に入り、靴を脱いでホッと息をつく。
時計を見れば、出発から一時間足らずの短い外出だった。
でも、心地よい疲れがある。
「これからは、こうやって少しずつ範囲を広げていけばいいかもな……」
家の安全、食料と物資の確保、育児の習慣、そして外の探索。
どれも急ぐ必要はない。ひとつずつでいい。
ベビーベッドにルナをそっと寝かせ、寝具を整える。
「なぁルナ。今日は初めて外に出たんだぜ。……って、まだ寝てるか」
ルナは目を閉じたまま、うっすら笑ったような表情をしていた。
たぶん夢でも見ているのだろう。
悠真はその横で、小さく伸びをしながら、明日の天気のことを考えていた。
朝。
ルナは今のところご機嫌だった。
ミルクの時間もオムツの交換も終わり、ベビーベッドの中で揺れるおもちゃを目で追っている。
「ちょっとだけ、外を見てこようかな」
そうつぶやいて、悠真は小さくうなずいた。
家の外といっても、庭の先──湖畔を軽く歩くくらいだ。
抱っこ紐にルナをそっと収めて、日除け帽子を軽くかぶせる。
幸い、今日は風も穏やかで空も澄んでいる。
冷蔵庫に保存したミルクと、おしりふき・簡易オムツをサコッシュに詰め、スマホとナイフ(護身用)をポケットに。
(まだ誰もいないとは限らないし、念のためな)
玄関の鍵を施錠して、庭から外へ出る。
本格的な外出はこれが初めてだった。
⸻
家の裏手、森の縁に沿って歩くと、すぐに湖畔へ出る。
森と湖の境目にあたる場所は、ちょうど小さな草原のようになっていた。
野花がちらほら咲いていて、草の丈も膝くらいまで。歩くにはちょうどいい。
「風、気持ちいいな」
空気はほんのり湿り気を帯びていて、でも重くはない。
遠くで水鳥のような鳴き声がして、足元ではトカゲのような生き物が走っていった。
ルナはといえば、悠真の胸元で軽くまぶたを閉じていた。
揺れが心地よいのか、外の空気が効いたのか──静かに、ぐずることもなく眠っている。
「赤ん坊連れて歩くのって、こういう感じなんだな……」
どこか不思議な気持ちだった。
目の前には広がる湖と空。
それを見ながら、自分の胸には確かな重みとぬくもりがある。
⸻
湖畔を少し歩いたところで、ふと視界の端に何かが映った。
木の根元。
色の違う草むらに、長方形の、板のような何かが半ば埋まっていた。
「……ん?」
近づいてみると、それは木箱だった。
古びていて、苔むしているが、金属の蝶番と取っ手がついている。
試しに取っ手を引くと、きぃ、と音を立てて開いた。
中には──何かの工具のような金具と、布にくるまれた瓶が数本。
ラベルは剥がれていて読めないが、どう見てもこの世界の製品ではない“雰囲気”を漂わせていた。
「これは……誰かの荷物?」
でも、周囲には人の気配はない。
箱の中に入っていた革袋を開けてみると、中には数枚の銀貨が入っていた。
(現地のお金……だよな?)
試しに通販アプリを開き、銀貨をスキャン範囲に置いてみると──
ピッ。
【チャージ完了:異世界硬貨(銀貨)】
【分類:現地通貨・高額硬貨】
「おお……チャージされるのか」
アプリ内の残高が増えていた。
これで通販にも使えるし、必要ならまた現金として出力もできる。持ち歩かなくて済む分、安心感もある。
(こういうの、あまり他人には見せない方がいいな……)
あの金属片の換金といい、この通貨のチャージといい、この機能は便利すぎる。
けれど、安易に話してしまえば、利用目的で近寄ってくる人もいるかもしれない。
(信用できる相手だけ、だな。むやみに使い方を見せるもんじゃない)
箱の中にあった道具類はとりあえず保留。
他にも使えそうな物があったが、必要になったら持ち帰ることにし、箱を閉じて元の場所に戻す。
⸻
帰り道。
ルナはまだ眠っていたが、時々指をぴくぴくと動かしていた。
玄関の鍵を開けて中に入り、靴を脱いでホッと息をつく。
時計を見れば、出発から一時間足らずの短い外出だった。
でも、心地よい疲れがある。
「これからは、こうやって少しずつ範囲を広げていけばいいかもな……」
家の安全、食料と物資の確保、育児の習慣、そして外の探索。
どれも急ぐ必要はない。ひとつずつでいい。
ベビーベッドにルナをそっと寝かせ、寝具を整える。
「なぁルナ。今日は初めて外に出たんだぜ。……って、まだ寝てるか」
ルナは目を閉じたまま、うっすら笑ったような表情をしていた。
たぶん夢でも見ているのだろう。
悠真はその横で、小さく伸びをしながら、明日の天気のことを考えていた。
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