文字の大きさ
大
中
小
177 / 325
キリスト教圏では絶対書けないショート。(大昔に見た、ビジョンを元に書きました)
「ガブリエル。やはりコンタクト出来るのは、この時代しかないか?」
ミカエルが尋ねた。
彼らはトリエルリ人の持ち込んだ、感応ツールの、テストをしていた。
このツールでは時間、空間を超えてコンタクトが可能だという事だった。
彼らはこのツールをテストする為に幾度も、長老会(ダーデアースン)
に申請を出していた。
ダーデアースンは今、ロプスタンテック人が持ち込んだ別の空間移動ツールを、先進科学チームが取り上げ、先進派がこの計画の実用化を押し進め、蜂の巣をつついた騒ぎで議論を戦わせ、彼らの申請等後回しだった。
が、ウリエルがコネを使いなんとかねじこみ、やっと許可が
降りたばかりだった。
彼らがこのツールを使ってコンタクト出来たのはどうやら
かなり未来の地球人だった。
荒野にたたずむ男で、彼は空間に現れた彼らの姿に驚かず
言葉を交わす事に、成功した。
残念ながら、トリエルリ人達が普段使っているように空間を飛び越え
肉体を送るには、エネルギーが足り無すぎて無理だったが、その時代の人間と話す事には成功した。
荒野の男は、彼らを神聖なものだと思ったらしい。
ガブリエルが言葉にしたように、この時代は既に、彼らが用いている
エネルギーは欠片しか見つからず、このエネルギーを使って栄えたアトランティス人は最早、記憶も伝承にも、残っていないように感じられた。
…つまり、どのくらいの未来かは解らないが、アトランティス人の、知恵と繁栄はすたれ、滅び去っているようだった。
しかも男は随分粗末な衣服を纏い、顔色も体付もひどく貧弱で弱々しかった。
このエネルギーに溢れた中で暮らす彼らは、殆どの病から救われていたし、いつも循環が良く、顔色も良く、老化も、遅かった。
だが男には軽い感応作用があり、彼らのエネルギーを感知しただけでなく、感応し、吸収する能力も、あるようだった。
彼らは尋ねられる言葉に返答したが、正確に彼らの言葉が
伝わっているかは、危ぶまれた。
彼らの姿だって、男にはどう映っているのかも、解らない。
ともかく、テストしなくては。と、彼らの中で一番果敢なミカエルが言った。
男が見て、聞く事の出来るエネルギー波に出来るだけ近づけ、彼らはほんの数日先の自分達へと、映像を送ってみた。
「………随分、ブレてるな」
ミカエルが、うなった。
「生態エネルギーが背の辺りから白く広がっている……。
彼らは我々を、天使、翼ある者と思いこんでいるようだが、これなら無理も無い。白い生態エネルギーの映像のブレが、翼のように見える。
頭の周囲に金の輪も、浮かんでいるしな。
しかも、彼らは我々が話した“万能な者”
を、神と呼んでいる」
ウリエルが聞いた。
「誰か、神に似た発音の言葉を、発したか?」
皆、一様に首を横に、振った。
ガブリエルが言った。
「…感応で感知している。耳では無く、イメージで受け取っているようだ。この時代に感応者は数名いるが、彼らは民に、予言者と呼ばれているようだし、受け止める者によっては解釈も違う…」
ラファエルが、心配げに言った。
「…後世だろう?我々は時代に介入してるんじゃないのか?」
皆が、ミカエルを、見た。
彼はため息を付いた。
「…万能な者とは、ミュースの事だろう?
だが彼は、神じゃない。我々の時代一の、能力者だが」
ラファエルが言った。
「…本当の彼の様子を伝えたら、彼らはがっかりしないか?
ちゃんと生身なんだから」
ガブリエルが異論を、唱えた。
「…むしろ、感動するだろう…。
彼の概念は我々を超えている」
ガブリエルはその時代の、万能なる者、ミュースの事を、思った。
先進派達、能力の殆どなく、交流している宇宙人達からの技術を都市に貢献し、人々の尊敬を得ようとしている、ミュースに敵対する彼らは、どれだけその技術を都市発展に役立て、素晴らしい功績を上げようと、人々の圧倒的な敬意は、ミュースに向けられていた。
…そういう意味では、“神”に近い尊敬を、受けていると言っても過言では無い。
彼は天候を操り、通常の能力者では操りきれない力を操り、多くの仲間達に力を貸して、数々の災害から多くの人命を、救ってきた。
どうしていつも、他の為にその素晴らしい力を、何のためらいも無く使えるのかと、彼に尋ねた事がある。
彼はどうして息をしているのかと、尋ねられたような顔をして、言った。
「自分のすべき事があり、それをしているだけだ」
と。
でもそれは無償の愛と同じだと、ガブリエルは思っていた。
だが、ミュースにとってそれは、当たり前の事の、ようだった。
ミュースは少し悲しげな顔をしてつぶやいた。
「私は他より耳と目がいい。
助けを呼ぶ声が聞こえ、その姿が見える。
その悲鳴を救い、笑顔に変わると、とても、ほっと、する」
彼は、大層孤独だろう。
たった一人しか、見る事、聞く事の出来ないものをずっと、見続けているからだ。
だが彼は孤独に溺れず、すべき事を、する。
多くの者が彼が空間を飛んでいくと、尊敬と感謝と、暖かい瞳で見上げる。
あの夕日の中、空間を飛んでいく白い彼の姿はまさしく、神に等しい者ではないのかと、ガブリエルは思った。
だが途中で実験を、放り出す事は、出来なかった。
コンタクトした男はその後、神をといて使徒を増やした。
そして、感応した際、彼らから受け取ったエネルギーで、その世界、時代では「奇跡」と呼ばれる現象を、起こしてみせた。
だが、コンタクトはいつも出来た訳では無かった。
男の価値観、概念、感情が変わると途端に、波長がずれる。
感情波は色で見えたが、ある色合いの時でしか、話したり、姿を現す事は無理だった。
それ以外では、男が見た物、感じた事を、こちらが受け取る事は、出来た。
が男の前に彼らの姿を現し、言葉を伝える事は、出来なかった。
男は、やがて磔にされた。
「神よ、私を見捨てたのか!」
男は十字架の上で、叫んでいた。
彼らは一様に、項垂れた。
こちらから幾らコンタクトを試みても、男の感情波は乱れ
とても話す事が出来ない。
少しでも話せたら、また力を送れて男は奇跡を起こせるに違いなかったが。
だが死の間際ようやく、男は彼らの姿を、見た。
一瞬、だったが………。
やがて彼は死した体を持ち上げ、“復活"を果たし
奇跡を起こしてみせた………。
ミカエルは、コンタクト相手を無くし、報告を、まとめはじめた。
天使。
そして、今、都市中が賛否両論の、ロプスタンテック人の持ち込んだツールについて、言い争っていたが、ロプスタンテック人は、男の時代で
彼らが思う「悪魔」にその姿が、似ていた。
ロプスタンテックは灼熱の惑星からの、訪問者だったし、彼らの星は不毛の、焼かれた岩だらけの地で、彼らの顔は黒く、頭に山羊のような角を確かに、生やしているような姿に、見えた………。
もしこれらの情報をイメージで受け取っていたら、天界と地獄の戦いのように映るし、ミュースは彼らと戦い民を、光の使徒を守る、神に見えた事だろう………。
だがミカエルは後世に、影響を与えた事より、この事を報告の
筆頭に上げた。
“かの時代でアトランティスは影も形も無く滅び、その文明は、完全に失われていた……"
………………………………と。
ミカエルが尋ねた。
彼らはトリエルリ人の持ち込んだ、感応ツールの、テストをしていた。
このツールでは時間、空間を超えてコンタクトが可能だという事だった。
彼らはこのツールをテストする為に幾度も、長老会(ダーデアースン)
に申請を出していた。
ダーデアースンは今、ロプスタンテック人が持ち込んだ別の空間移動ツールを、先進科学チームが取り上げ、先進派がこの計画の実用化を押し進め、蜂の巣をつついた騒ぎで議論を戦わせ、彼らの申請等後回しだった。
が、ウリエルがコネを使いなんとかねじこみ、やっと許可が
降りたばかりだった。
彼らがこのツールを使ってコンタクト出来たのはどうやら
かなり未来の地球人だった。
荒野にたたずむ男で、彼は空間に現れた彼らの姿に驚かず
言葉を交わす事に、成功した。
残念ながら、トリエルリ人達が普段使っているように空間を飛び越え
肉体を送るには、エネルギーが足り無すぎて無理だったが、その時代の人間と話す事には成功した。
荒野の男は、彼らを神聖なものだと思ったらしい。
ガブリエルが言葉にしたように、この時代は既に、彼らが用いている
エネルギーは欠片しか見つからず、このエネルギーを使って栄えたアトランティス人は最早、記憶も伝承にも、残っていないように感じられた。
…つまり、どのくらいの未来かは解らないが、アトランティス人の、知恵と繁栄はすたれ、滅び去っているようだった。
しかも男は随分粗末な衣服を纏い、顔色も体付もひどく貧弱で弱々しかった。
このエネルギーに溢れた中で暮らす彼らは、殆どの病から救われていたし、いつも循環が良く、顔色も良く、老化も、遅かった。
だが男には軽い感応作用があり、彼らのエネルギーを感知しただけでなく、感応し、吸収する能力も、あるようだった。
彼らは尋ねられる言葉に返答したが、正確に彼らの言葉が
伝わっているかは、危ぶまれた。
彼らの姿だって、男にはどう映っているのかも、解らない。
ともかく、テストしなくては。と、彼らの中で一番果敢なミカエルが言った。
男が見て、聞く事の出来るエネルギー波に出来るだけ近づけ、彼らはほんの数日先の自分達へと、映像を送ってみた。
「………随分、ブレてるな」
ミカエルが、うなった。
「生態エネルギーが背の辺りから白く広がっている……。
彼らは我々を、天使、翼ある者と思いこんでいるようだが、これなら無理も無い。白い生態エネルギーの映像のブレが、翼のように見える。
頭の周囲に金の輪も、浮かんでいるしな。
しかも、彼らは我々が話した“万能な者”
を、神と呼んでいる」
ウリエルが聞いた。
「誰か、神に似た発音の言葉を、発したか?」
皆、一様に首を横に、振った。
ガブリエルが言った。
「…感応で感知している。耳では無く、イメージで受け取っているようだ。この時代に感応者は数名いるが、彼らは民に、予言者と呼ばれているようだし、受け止める者によっては解釈も違う…」
ラファエルが、心配げに言った。
「…後世だろう?我々は時代に介入してるんじゃないのか?」
皆が、ミカエルを、見た。
彼はため息を付いた。
「…万能な者とは、ミュースの事だろう?
だが彼は、神じゃない。我々の時代一の、能力者だが」
ラファエルが言った。
「…本当の彼の様子を伝えたら、彼らはがっかりしないか?
ちゃんと生身なんだから」
ガブリエルが異論を、唱えた。
「…むしろ、感動するだろう…。
彼の概念は我々を超えている」
ガブリエルはその時代の、万能なる者、ミュースの事を、思った。
先進派達、能力の殆どなく、交流している宇宙人達からの技術を都市に貢献し、人々の尊敬を得ようとしている、ミュースに敵対する彼らは、どれだけその技術を都市発展に役立て、素晴らしい功績を上げようと、人々の圧倒的な敬意は、ミュースに向けられていた。
…そういう意味では、“神”に近い尊敬を、受けていると言っても過言では無い。
彼は天候を操り、通常の能力者では操りきれない力を操り、多くの仲間達に力を貸して、数々の災害から多くの人命を、救ってきた。
どうしていつも、他の為にその素晴らしい力を、何のためらいも無く使えるのかと、彼に尋ねた事がある。
彼はどうして息をしているのかと、尋ねられたような顔をして、言った。
「自分のすべき事があり、それをしているだけだ」
と。
でもそれは無償の愛と同じだと、ガブリエルは思っていた。
だが、ミュースにとってそれは、当たり前の事の、ようだった。
ミュースは少し悲しげな顔をしてつぶやいた。
「私は他より耳と目がいい。
助けを呼ぶ声が聞こえ、その姿が見える。
その悲鳴を救い、笑顔に変わると、とても、ほっと、する」
彼は、大層孤独だろう。
たった一人しか、見る事、聞く事の出来ないものをずっと、見続けているからだ。
だが彼は孤独に溺れず、すべき事を、する。
多くの者が彼が空間を飛んでいくと、尊敬と感謝と、暖かい瞳で見上げる。
あの夕日の中、空間を飛んでいく白い彼の姿はまさしく、神に等しい者ではないのかと、ガブリエルは思った。
だが途中で実験を、放り出す事は、出来なかった。
コンタクトした男はその後、神をといて使徒を増やした。
そして、感応した際、彼らから受け取ったエネルギーで、その世界、時代では「奇跡」と呼ばれる現象を、起こしてみせた。
だが、コンタクトはいつも出来た訳では無かった。
男の価値観、概念、感情が変わると途端に、波長がずれる。
感情波は色で見えたが、ある色合いの時でしか、話したり、姿を現す事は無理だった。
それ以外では、男が見た物、感じた事を、こちらが受け取る事は、出来た。
が男の前に彼らの姿を現し、言葉を伝える事は、出来なかった。
男は、やがて磔にされた。
「神よ、私を見捨てたのか!」
男は十字架の上で、叫んでいた。
彼らは一様に、項垂れた。
こちらから幾らコンタクトを試みても、男の感情波は乱れ
とても話す事が出来ない。
少しでも話せたら、また力を送れて男は奇跡を起こせるに違いなかったが。
だが死の間際ようやく、男は彼らの姿を、見た。
一瞬、だったが………。
やがて彼は死した体を持ち上げ、“復活"を果たし
奇跡を起こしてみせた………。
ミカエルは、コンタクト相手を無くし、報告を、まとめはじめた。
天使。
そして、今、都市中が賛否両論の、ロプスタンテック人の持ち込んだツールについて、言い争っていたが、ロプスタンテック人は、男の時代で
彼らが思う「悪魔」にその姿が、似ていた。
ロプスタンテックは灼熱の惑星からの、訪問者だったし、彼らの星は不毛の、焼かれた岩だらけの地で、彼らの顔は黒く、頭に山羊のような角を確かに、生やしているような姿に、見えた………。
もしこれらの情報をイメージで受け取っていたら、天界と地獄の戦いのように映るし、ミュースは彼らと戦い民を、光の使徒を守る、神に見えた事だろう………。
だがミカエルは後世に、影響を与えた事より、この事を報告の
筆頭に上げた。
“かの時代でアトランティスは影も形も無く滅び、その文明は、完全に失われていた……"
………………………………と。
感想 38
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
上司、快楽に沈むまで
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。