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誘拐計画
閉まる水門
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エウロペとデルデロッテが猛烈に距離を詰めようと、漕ぎ始めた時。
先のボートもそれに気づき、速度を上げ始め、とうとう水門を潜り、小川へと漕ぎ出す。
その時、舳先に張り付くエルデリオンが水門が下がり始めるのを見、エウロペとデルデロッテに叫ぶ。
「水門が閉じる!!!」
「!!!」
エウロペは猛烈にオールを回し、デルデロッテは降り始めた水門を見つめた。
円形の石作りの水路に、大きな櫛状の木柵が降り始め、デルデロッテはそれが、地上で操作されてると知っていた。
だから舳先に、王子エルデリオンが居たとしても。
操作してる召使いは知らず、止める事をしない。
大抵は一人が、水路の横の通路に立ち、出口の様子を確認し、不都合があれば地上に続く、鐘を鳴らす。
が、今その確認役は見当たらない。
デルデロッテは一瞬迷った。
が、遮二無二漕ぐ、エウロペに合わせ、オールを漕ぎ始めた。
水門が落ちきる前に、潜れると。
エウロペですら思った。
が、真ん中までゆっくり降りていた水門は、突然
ガガン!!!
と大きな音を立て一気に落ちきり、進路を阻む。
「!!!」
凄いスピードで進んでいたボートは、止まる事など不可能。
エルデリオンは必死に舳先にしがみつき、エウロペは握っていたオールを捨てると、エルデリオンの背を掴んだ。
ドォン!!!
凄まじい勢いで、ボートは水門に激突。
デルデロッテはつま先を横板にひっかけ、オールを掴んだまま跳ね上がるボートから、落ちまいと踏ん張った。
ボートはひっくり返りそうなぐらい、飛び上がった。
エウロペも同様つま先を横板に付け、飛びかけるエルデリオンの背の衣服を引っぱる。
ドゥゥン!!!
飛び上がったのと同じ位の衝撃で、ボートは水面に叩きつけられた。
エルデリオンは背からエウロペに抱き止められ、衝撃を凌いだ事を感じ、背に当たるエウロペの広い胸の、安心感と頼もしさに、安堵してる自分に気づいた。
デルデロッテはもう水路の横の、石の通路へと漕ぎ始め、エウロペは気づいて、背後のデルデロッテに振り向く。
「外への通路がある!!!」
デルデロッテが叫んだ途端、エウロペはエルデリオンの背を軽く前に押して退かし、手にした一本のオールで、デルデロッテを助けた。
エルデリオンは舳先の横板にやんわり押しやられ、思わずエウロペに振り向く。
感謝を告げる間もなく、エウロペは決死の表情で、デルデロッテ同様、ボートを通路に寄せていた。
ガン!
ボートが通路の石の床にぶつかると同時。
デルデロッテは立ち上がり、揺れるボートの中、見事にバランス取って、一気に石の通路へ飛び乗ると、通路を駆け出す。
エウロペも直ぐ通路に飛び移り、エルデリオンは揺れるボートに戸惑いながら、なんとか通路の石の床へと、足を付いた。
デルデロッテは通路の横壁の、上に続くはしごを登り始めてる。
エウロペも直ぐはしごを掴み、登りながら、出た先の足の確保を思案した。
地上に上がるデルデロッテが、横に避けると。
エウロペも直ぐ、地上に足を付ける。
その時、城の方向から怒濤の如く、数騎の騎馬が駆けて来た。
「飛び乗れデルデロッテ!!!」
先頭のラステルが叫ぶ。
デルデロッテは直ぐ、速度も落とさず横を過ぎようとする馬に駆け寄り、差し出されたラステルの腕を掴んで、一気にラステルの後ろに飛び乗った。
「エウロペ!」
直ぐ後から来ていたテリュスに叫ばれ、エウロペも直ぐ横を走り、鞍を掴んで一気に飛び上がる。
テリュスは背後に跨がるエウロペを確認すると、更に速度を上げた。
先の木門は直ぐ開き、ラステルが一気に駆け抜ける。
飛び出した先は川の横の土手に続き、ラステルの直ぐ後に潜り抜けたテリュスは川のかなり先にボートを見つけると、体を低く倒し、一気にラステルの馬を追い抜いて行った。
矢のように駆けるテリュスの乗馬に、ラステルは目を見開き
「…やりますね…!」
と一声唸ると、一気に速度を上げた。
デルデロッテは振り落ちまいと、鞍を掴んで足を馬の腹にピタリと付け、歯を食い縛って耐えていた。
が、あまりの速さにそれでは凌げず、プライドを押しやって、仕方無くラステルの腰にしがみついた。
「エルデリオン!」
地上に這い出たエルデリオンがその声に振り向くと、ロットバルトが身を低く倒し、腕を差し出すのを見、その腕に捕まって馬上に引き上げられ、飛んで背後に跨がる。
その間に単騎のエリューンが、横を駆け抜けて行った。
先頭のテリュスは遮二無二川を滑るボートに追いつこうと、速度を上げ続け、ラステルも決死でその後を追う。
…そしてとうとう、テリュスの馬は川を走るボートを抜き去った。
エウロペが十分な距離を確認し、馬から飛び降りようとした矢先。
前方から黒装束の、盗賊一団がこちらに向かって突き進んで来るのが見えた。
その一団の背後。
続々と黒装束の男を乗せた馬は土手を駆け上がり、向かい来る賊の数は増えて行く。
敵の多さにエウロペは一瞬、躊躇した。
が、テリュスは叫ぶ。
「俺を気にせず、飛べ!!!」
その言葉が終わらぬ内に、エウロペはもう馬上から飛んで去った。
ラステルも背後のデルデロッテに振り向く。
「行け!!!」
デルデロッテは向かい来る賊の、数の多さを目にし、ラステルを気遣い躊躇ったものの。
背後からエリューンがとっくに剣を抜き、駆けつけて来るのを目にした途端、飛んでエウロペの背を追った。
エウロペは一気に飛んで川に飛び込み、進み来るボートに振り向く。
エウロペを避けようとしたボートの、舳先をエウロペは強引に掴むと、飛び乗ろうと川から身を乗り上げる。
が、ボートの誘拐犯の一人が、乗ろうとするエウロペを突き落とそうとし、両者は争い始めた。
その隙にデルデロッテも、ボートの縁を掴む。
が、漕いでた一人がオールを投げ出し駆けつけ、落とそうとするので、争いが始まった。
先のボートもそれに気づき、速度を上げ始め、とうとう水門を潜り、小川へと漕ぎ出す。
その時、舳先に張り付くエルデリオンが水門が下がり始めるのを見、エウロペとデルデロッテに叫ぶ。
「水門が閉じる!!!」
「!!!」
エウロペは猛烈にオールを回し、デルデロッテは降り始めた水門を見つめた。
円形の石作りの水路に、大きな櫛状の木柵が降り始め、デルデロッテはそれが、地上で操作されてると知っていた。
だから舳先に、王子エルデリオンが居たとしても。
操作してる召使いは知らず、止める事をしない。
大抵は一人が、水路の横の通路に立ち、出口の様子を確認し、不都合があれば地上に続く、鐘を鳴らす。
が、今その確認役は見当たらない。
デルデロッテは一瞬迷った。
が、遮二無二漕ぐ、エウロペに合わせ、オールを漕ぎ始めた。
水門が落ちきる前に、潜れると。
エウロペですら思った。
が、真ん中までゆっくり降りていた水門は、突然
ガガン!!!
と大きな音を立て一気に落ちきり、進路を阻む。
「!!!」
凄いスピードで進んでいたボートは、止まる事など不可能。
エルデリオンは必死に舳先にしがみつき、エウロペは握っていたオールを捨てると、エルデリオンの背を掴んだ。
ドォン!!!
凄まじい勢いで、ボートは水門に激突。
デルデロッテはつま先を横板にひっかけ、オールを掴んだまま跳ね上がるボートから、落ちまいと踏ん張った。
ボートはひっくり返りそうなぐらい、飛び上がった。
エウロペも同様つま先を横板に付け、飛びかけるエルデリオンの背の衣服を引っぱる。
ドゥゥン!!!
飛び上がったのと同じ位の衝撃で、ボートは水面に叩きつけられた。
エルデリオンは背からエウロペに抱き止められ、衝撃を凌いだ事を感じ、背に当たるエウロペの広い胸の、安心感と頼もしさに、安堵してる自分に気づいた。
デルデロッテはもう水路の横の、石の通路へと漕ぎ始め、エウロペは気づいて、背後のデルデロッテに振り向く。
「外への通路がある!!!」
デルデロッテが叫んだ途端、エウロペはエルデリオンの背を軽く前に押して退かし、手にした一本のオールで、デルデロッテを助けた。
エルデリオンは舳先の横板にやんわり押しやられ、思わずエウロペに振り向く。
感謝を告げる間もなく、エウロペは決死の表情で、デルデロッテ同様、ボートを通路に寄せていた。
ガン!
ボートが通路の石の床にぶつかると同時。
デルデロッテは立ち上がり、揺れるボートの中、見事にバランス取って、一気に石の通路へ飛び乗ると、通路を駆け出す。
エウロペも直ぐ通路に飛び移り、エルデリオンは揺れるボートに戸惑いながら、なんとか通路の石の床へと、足を付いた。
デルデロッテは通路の横壁の、上に続くはしごを登り始めてる。
エウロペも直ぐはしごを掴み、登りながら、出た先の足の確保を思案した。
地上に上がるデルデロッテが、横に避けると。
エウロペも直ぐ、地上に足を付ける。
その時、城の方向から怒濤の如く、数騎の騎馬が駆けて来た。
「飛び乗れデルデロッテ!!!」
先頭のラステルが叫ぶ。
デルデロッテは直ぐ、速度も落とさず横を過ぎようとする馬に駆け寄り、差し出されたラステルの腕を掴んで、一気にラステルの後ろに飛び乗った。
「エウロペ!」
直ぐ後から来ていたテリュスに叫ばれ、エウロペも直ぐ横を走り、鞍を掴んで一気に飛び上がる。
テリュスは背後に跨がるエウロペを確認すると、更に速度を上げた。
先の木門は直ぐ開き、ラステルが一気に駆け抜ける。
飛び出した先は川の横の土手に続き、ラステルの直ぐ後に潜り抜けたテリュスは川のかなり先にボートを見つけると、体を低く倒し、一気にラステルの馬を追い抜いて行った。
矢のように駆けるテリュスの乗馬に、ラステルは目を見開き
「…やりますね…!」
と一声唸ると、一気に速度を上げた。
デルデロッテは振り落ちまいと、鞍を掴んで足を馬の腹にピタリと付け、歯を食い縛って耐えていた。
が、あまりの速さにそれでは凌げず、プライドを押しやって、仕方無くラステルの腰にしがみついた。
「エルデリオン!」
地上に這い出たエルデリオンがその声に振り向くと、ロットバルトが身を低く倒し、腕を差し出すのを見、その腕に捕まって馬上に引き上げられ、飛んで背後に跨がる。
その間に単騎のエリューンが、横を駆け抜けて行った。
先頭のテリュスは遮二無二川を滑るボートに追いつこうと、速度を上げ続け、ラステルも決死でその後を追う。
…そしてとうとう、テリュスの馬は川を走るボートを抜き去った。
エウロペが十分な距離を確認し、馬から飛び降りようとした矢先。
前方から黒装束の、盗賊一団がこちらに向かって突き進んで来るのが見えた。
その一団の背後。
続々と黒装束の男を乗せた馬は土手を駆け上がり、向かい来る賊の数は増えて行く。
敵の多さにエウロペは一瞬、躊躇した。
が、テリュスは叫ぶ。
「俺を気にせず、飛べ!!!」
その言葉が終わらぬ内に、エウロペはもう馬上から飛んで去った。
ラステルも背後のデルデロッテに振り向く。
「行け!!!」
デルデロッテは向かい来る賊の、数の多さを目にし、ラステルを気遣い躊躇ったものの。
背後からエリューンがとっくに剣を抜き、駆けつけて来るのを目にした途端、飛んでエウロペの背を追った。
エウロペは一気に飛んで川に飛び込み、進み来るボートに振り向く。
エウロペを避けようとしたボートの、舳先をエウロペは強引に掴むと、飛び乗ろうと川から身を乗り上げる。
が、ボートの誘拐犯の一人が、乗ろうとするエウロペを突き落とそうとし、両者は争い始めた。
その隙にデルデロッテも、ボートの縁を掴む。
が、漕いでた一人がオールを投げ出し駆けつけ、落とそうとするので、争いが始まった。
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