128 / 418
誘拐計画
闘争
しおりを挟む
先頭を、速度を落とさず突っ走るテリュスを見、ラステルは懐を探る。
細長い金属の笛を取り出すと、一気に吹いた。
キィィィィーーーーーーーーーーーーン!!!
甲高い音がそこら中に鳴り響き、テリュスは振り返ろうかとも思った。
が、敵は20m向こうから、どんどん距離を詰めていた。
左手で手綱を繰り、右手で腰に差した木の棒を取り出す。
あっという間に10mと距離が縮まった時。
テリュスは一本に折りたたまれた、木の棒を開く。
それは小さな弓となった。
棒の横に付いていた、小さな木の矢をつがえ、引く。
瞬時に二本を放った。
「!」
ラステルはテリュスの背後で、向かい来る黒装束の先頭、二人が、顔を歪め身を跳ね上げ、馬上から落ちるのを見た。
どっっっ!!!
また一人!
そしてもう一人。
ドォッ!!!
テリュスの速度が落ち、ラステルは斜め横に併走して初めて。
テリュスが手綱を放し、両手で小ぶりの弓矢を放ってる姿を目にした。
ド…ンッ!!!
また一人が。
飛び来る小さく鋭い矢で射られ、痛みに身を仰け反らせ、馬上でバランスを崩し、馬から落ちて行った。
が、向かい来る賊の後続らが群れから離れ、一気に土手を駆け下りて行く。
テリュスはそれを見た途端、手綱を握ると土手から川辺へ。
駆け下りて行く敵を迎え撃つように、馬を走らせた。
ラステルは、直ぐ後ろに迫る駒音に振り向く。
剣を抜くエリューンに、首を振ってテリュスへと促す。
エリューンは頷きもせず、直ぐ馬の首を土手の端へと向け、川岸へ一直線に下って行った。
半数は川辺へと降りて行ったが、それでも十数騎は向かって来る。
ラステルは背後、馬を繰るロットバルトと、後ろに跨がり既に剣を抜く、エルデリオンを見た。
が、エルデリオンが手に握る剣は、短剣よりは長いものの緊急用に常に身につけている、細く短い華奢な剣。
2mと、敵との距離が縮まると。
ラステルは懐から短剣よりも更に小さな、釘のような剣を手に持ち、敵に向かって投げた。
しゅっ!しゅっ!
どんっ!
ドオッ!!!
“…ともかく、笛で呼んだ部下達が。
駆けつける間に少しでも、敵の数を減らす!”
ラステルはまた、三振り投げて敵を馬上から叩き落とし、向かい来る敵の数を減らした。
川ではエウロペが、遮二無二両手で押し下げようとする賊の腕を掴もうと、腕を伸ばす。
が、賊は舳先に掴まるエウロペの手首を握り、引き剥がそうと力を込める。
エウロペの手が、舳先を離すと同時。
エウロペが賊の腕を掴み、思い切り引き。
賊はバランス崩し、ボート上から転がって川へと
ずぶん!
と大きな水音立て、落ちて行った。
デルデロッテも今だ船の縁に掴まりながら、川へと押し戻そうとする賊と、掴み合いをしていた。
が、ボートの漕ぎ手は今だ漕ぐのを止めず。
エウロペがようやく、両腕で縁に掴まり身を乗り上げた時。
気絶したレジィリアンスの胴に、なめし革に空気を入れた、浮き輪を括り付けていた男が、焦った表情でエウロペに視線を投げる。
エウロペは縁に足をかけようと、数度滑り。
それでもやっと足を引っかけ、身をボートへと、乗り上げた。
が、ボートに降り立つと、漕ぎ手がオールを捨て、エウロペの足に両腕絡ませる。
その間に、レジィリアンスに浮き輪を付けた男は華奢な少年の体を抱き上げ、川の支流をしきりに覗う。
「!」
デルデロッテは男がもう、何をする気か。
分かって賊に縁を掴む手を握らせ、エウロペに叫んだ。
「支流は流れが速い!!!」
言うなり、思いっきり足を持ち上げ、のし掛かる男の腹に足を押しつけ、そのまま蹴って川へと、投げ入れた。
どっぽん!!!
ザッ!!!
デルデロッテも一気に身を持ち上げ、ボートに乗り込む。
エウロペは足に両腕巻き付ける、賊の腕を外そうともがいていた。
が、デルデロッテの叫びを聞くなり、賊の喉に手を瞬間、強く当てた。
賊はぐったりし、エウロペは絡む腕から足を引き抜き、ボートの反対端へ駆けつける。
デルデロッテも、濡れたブーツで滑りながらも駆け寄る。
が、男はもうレジィリアンスの身を、支流へと続く川へ、投げ入れた。
ザッブン!!!
レジィリアンスが投げ込まれた直後。
賊らは一斉にオールを投げ捨て、ひたすらエウロペとデルデロッテに乗しかかり、二人が後を追い、川へと飛び込むのを防ぎ始める。
が、エウロペは瞬間腕を振り、一人は喉。
もう一人はみぞおちに拳当て、ボートを飛んで跨ぎ、一気に川へ飛び込んだ。
ザッブン!!!
川の支流は、確かに流れが速かった。
浮き輪を付けたレジィリアンスは、あっという間に早い流れで下り行き、うんと下流にその姿を消して行く。
エウロペは必死に泳ぎ始めた。
デルデロッテも少し遅れて川へと飛び込む。
が、その時川岸へ、馬で駆け下りた黒装束の賊らが、続々と川に飛び込み。
デルデロッテへと、泳ぎ寄る。
テリュスは馬に乗ったまま川へ飛び込むと、泳ぐ馬上から矢を放つ。
ひゅん!!!
泳ぐデルデロッテの衣服を掴もうとした賊は、肩に手をやり、水中に沈んだ。
エリューンも同様、馬ごと川へ突っ込むと。
泳ぎ来る賊に剣を振って薙ぎ払い、支流の岸を目指した。
デルデロッテがようやく、川の支流へと泳ぎ入る。
一気に流れに押され、下流へ流されて行きながらも、先を覗うが。
レジィリアンスの姿は、最早まるで見えず。
遙か先、泳ぐエウロペが凄まじく流れる水の間に覗い見え、猛烈に両腕回し、泳ぎ始めた。
細長い金属の笛を取り出すと、一気に吹いた。
キィィィィーーーーーーーーーーーーン!!!
甲高い音がそこら中に鳴り響き、テリュスは振り返ろうかとも思った。
が、敵は20m向こうから、どんどん距離を詰めていた。
左手で手綱を繰り、右手で腰に差した木の棒を取り出す。
あっという間に10mと距離が縮まった時。
テリュスは一本に折りたたまれた、木の棒を開く。
それは小さな弓となった。
棒の横に付いていた、小さな木の矢をつがえ、引く。
瞬時に二本を放った。
「!」
ラステルはテリュスの背後で、向かい来る黒装束の先頭、二人が、顔を歪め身を跳ね上げ、馬上から落ちるのを見た。
どっっっ!!!
また一人!
そしてもう一人。
ドォッ!!!
テリュスの速度が落ち、ラステルは斜め横に併走して初めて。
テリュスが手綱を放し、両手で小ぶりの弓矢を放ってる姿を目にした。
ド…ンッ!!!
また一人が。
飛び来る小さく鋭い矢で射られ、痛みに身を仰け反らせ、馬上でバランスを崩し、馬から落ちて行った。
が、向かい来る賊の後続らが群れから離れ、一気に土手を駆け下りて行く。
テリュスはそれを見た途端、手綱を握ると土手から川辺へ。
駆け下りて行く敵を迎え撃つように、馬を走らせた。
ラステルは、直ぐ後ろに迫る駒音に振り向く。
剣を抜くエリューンに、首を振ってテリュスへと促す。
エリューンは頷きもせず、直ぐ馬の首を土手の端へと向け、川岸へ一直線に下って行った。
半数は川辺へと降りて行ったが、それでも十数騎は向かって来る。
ラステルは背後、馬を繰るロットバルトと、後ろに跨がり既に剣を抜く、エルデリオンを見た。
が、エルデリオンが手に握る剣は、短剣よりは長いものの緊急用に常に身につけている、細く短い華奢な剣。
2mと、敵との距離が縮まると。
ラステルは懐から短剣よりも更に小さな、釘のような剣を手に持ち、敵に向かって投げた。
しゅっ!しゅっ!
どんっ!
ドオッ!!!
“…ともかく、笛で呼んだ部下達が。
駆けつける間に少しでも、敵の数を減らす!”
ラステルはまた、三振り投げて敵を馬上から叩き落とし、向かい来る敵の数を減らした。
川ではエウロペが、遮二無二両手で押し下げようとする賊の腕を掴もうと、腕を伸ばす。
が、賊は舳先に掴まるエウロペの手首を握り、引き剥がそうと力を込める。
エウロペの手が、舳先を離すと同時。
エウロペが賊の腕を掴み、思い切り引き。
賊はバランス崩し、ボート上から転がって川へと
ずぶん!
と大きな水音立て、落ちて行った。
デルデロッテも今だ船の縁に掴まりながら、川へと押し戻そうとする賊と、掴み合いをしていた。
が、ボートの漕ぎ手は今だ漕ぐのを止めず。
エウロペがようやく、両腕で縁に掴まり身を乗り上げた時。
気絶したレジィリアンスの胴に、なめし革に空気を入れた、浮き輪を括り付けていた男が、焦った表情でエウロペに視線を投げる。
エウロペは縁に足をかけようと、数度滑り。
それでもやっと足を引っかけ、身をボートへと、乗り上げた。
が、ボートに降り立つと、漕ぎ手がオールを捨て、エウロペの足に両腕絡ませる。
その間に、レジィリアンスに浮き輪を付けた男は華奢な少年の体を抱き上げ、川の支流をしきりに覗う。
「!」
デルデロッテは男がもう、何をする気か。
分かって賊に縁を掴む手を握らせ、エウロペに叫んだ。
「支流は流れが速い!!!」
言うなり、思いっきり足を持ち上げ、のし掛かる男の腹に足を押しつけ、そのまま蹴って川へと、投げ入れた。
どっぽん!!!
ザッ!!!
デルデロッテも一気に身を持ち上げ、ボートに乗り込む。
エウロペは足に両腕巻き付ける、賊の腕を外そうともがいていた。
が、デルデロッテの叫びを聞くなり、賊の喉に手を瞬間、強く当てた。
賊はぐったりし、エウロペは絡む腕から足を引き抜き、ボートの反対端へ駆けつける。
デルデロッテも、濡れたブーツで滑りながらも駆け寄る。
が、男はもうレジィリアンスの身を、支流へと続く川へ、投げ入れた。
ザッブン!!!
レジィリアンスが投げ込まれた直後。
賊らは一斉にオールを投げ捨て、ひたすらエウロペとデルデロッテに乗しかかり、二人が後を追い、川へと飛び込むのを防ぎ始める。
が、エウロペは瞬間腕を振り、一人は喉。
もう一人はみぞおちに拳当て、ボートを飛んで跨ぎ、一気に川へ飛び込んだ。
ザッブン!!!
川の支流は、確かに流れが速かった。
浮き輪を付けたレジィリアンスは、あっという間に早い流れで下り行き、うんと下流にその姿を消して行く。
エウロペは必死に泳ぎ始めた。
デルデロッテも少し遅れて川へと飛び込む。
が、その時川岸へ、馬で駆け下りた黒装束の賊らが、続々と川に飛び込み。
デルデロッテへと、泳ぎ寄る。
テリュスは馬に乗ったまま川へ飛び込むと、泳ぐ馬上から矢を放つ。
ひゅん!!!
泳ぐデルデロッテの衣服を掴もうとした賊は、肩に手をやり、水中に沈んだ。
エリューンも同様、馬ごと川へ突っ込むと。
泳ぎ来る賊に剣を振って薙ぎ払い、支流の岸を目指した。
デルデロッテがようやく、川の支流へと泳ぎ入る。
一気に流れに押され、下流へ流されて行きながらも、先を覗うが。
レジィリアンスの姿は、最早まるで見えず。
遙か先、泳ぐエウロペが凄まじく流れる水の間に覗い見え、猛烈に両腕回し、泳ぎ始めた。
0
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる