アグナータの命運

あーす。

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終焉の儀式

154 “終焉の儀式” リチャード

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 アリオンがまだ、ファオンを抱いた余韻で、小刻みに顔を震わせながら…席に戻り、座す。

皆、リチャードをそっと盗み見るが、リチャードは溜息を吐き、立ち上がる。


リチャードは毛皮の上にぐったり横たわるファオンを見、屈み腕をそっと引く。

ファオンが顔を上げる。

まだ、アリオンに囚われているように、遠い瞳で見つめられ、リチャードはぐっ。
と心に暗い影が覆い被さるのを感じた。

ああ…。

けれど昔。
餓鬼だった頃は無性に憤った。

…今なら解る。
ファオンの視界に自分を映し出す為に…。
なぜ自分があれほど過激な行為をしたのか…。

今、ファオンに何をしても…心はアリオンに囚われたまま。

体が条件反射で動くだけ…。

リチャードは溜息を吐いた。

もう…いい。
心はアリオンのものでも。

例え抱くのが抜け殻でも…。

それでも拒絶の言葉を吐かれなければ。

リチャードはそっ…と、ファオンの腕を引き、上体を起こす。

そしてそっと、背後から腰を抱き寄せる。

髪に触れたが…毛先の一本までもが…アリオンのもののように感じる。

今では…解る。

アリオンのもの。
そしてシーリーンに抱かれた後は、シーリーンのもの。

その二人の男の存在と、戦いながらファオンを自分に振り向かせる事の、困難さ。

けれど…多分直拒絶されてもう…永遠に触れられないかも知れない…。

そう、解ったときリチャードはファオンの髪に、背後から口付けていた。

胸に手を回す。
そして腰を引き寄せて…。

ファオンの愛らしい双丘が腿に当たると、甘酸っぱい思いが、胸を掻き乱す。

虐めるといつも…青い瞳を潤ませて見上げる。

赤い唇。
愛らしく綺麗な…可愛いファオン。

リチャードがそっ…と首筋に唇を触れさせる。

けれどやっぱり…がっかりする。

ファオンはまだ、アリオンに囚われていた。

本当は…振り向かせて自分の存在を示し…誇示したかった。

がそれをしたら途端、拒絶されると解っていたから…リチャードはそっ…。
とファオンの身体に触れる。

手でそっと肌の感触を確かめ…。
唇で頬に口づけ………。

そして、ファオンを伺う。

まだ、ファオンはアリオンに心を囚われたまま。


端で見ている年上の男達は、リチャードが気の毒過ぎて顔を下げていた。

デュランでさえも。


リチャードは…けれど拒絶もされないので少し、ほっとして、ファオンの男根を後ろから手を伸ばし、そっ…と触れる。

昔触れた小さなそれは、今は少し雄々しくなったとは言え…。
やはりまだ細くて頼りなく、リチャードはほっとしたように、手で握り込んでそっとしごきながら、愛撫を加える。

ぴくん。
とファオンが顔を揺らす。

「(…やっぱり…いいのか)」

リチャードは思いながら、そっとしごき上げると、ファオンの男根が半勃ちになり…。

リチャードはそっと…後ろからファオンの腰を抱いて持ち上げる。

シュティッセンとレオ、ファルコン、セルティスらに特訓(?)…された時…。
レオに言われた。

『アリオンとシーリーンが大事に可愛がりすぎて、ファオン自身では積極的に何もしない。
お前は相手に奉仕されるのが好きだから、その時点でまず、ファオンとは相性が合わない。
ファオンを調教しようとしたらその時点で、嫌われる。
それを強引に、やり用もロクに知らないのに拉致して行ったら、大嫌いになっても仕方無い』

と。

…つまりファオンとしたいなら…自分からファオンに奉仕し、可愛がらないと駄目。

そう解り、リチャードは必死に…手で少しずつファオンの男根に奉仕しつつ、固く育つのを待つ。

だが、ファオンを手で弄んでるさ中、もう…自分が限界なくらい張り詰めて辛くなったから…。

そっ…とファオンの双丘の蕾に、自身を当てる。

ファオンの蕾から…アリオンの放った液が垂れ…リチャードは昔の自分なら我慢出来ず、ファオンの口の中に自分を強引にねじ込んだが、その時は耐えた。

けれどそっ…と挿入して中に入れると…泣き出したくなる程な幸せ感が、襲って来る。

ファオンに開始一秒。
秒殺で拒絶される。
と覚悟していたから。

今、挿入してる事が、信じられなかった。

思ったよりずっと気持ちよくなってしまう。

それで…腰を少し、突き入れてみた。

内壁で擦り上げられると、たまらなく感じる。

リチャードはいつも、後ろから挿入(い)れるのが好きだった。

が、背後から抱くファオンは、匂い立つような色香溢れる麗人シュティッセンとは違い…どこか未熟で、けれどとても可愛くて特別な感じに思えた。

腰を突き入れると、下半身に痺れが走る。

もう、リチャードもかなりな数の経験があったから、ファオンが誰より特別な存在感があるのは、解っていた。

腕に抱くと、気恥ずかしいような甘い感じがする。

抱いていると、自分一人のものにして…一人占めしたくなる。

ファオンがまだ、拒絶を叫ばないので、リチャードはゆっくりと…腰を突き入れた。

深い快感が四肢を痺れさす。

ぎゅっ!と締め付けられるとたまらなくて、リチャードは性急にしたい心を抑え込み、また…腰をゆっくりそっと引き抜き、奥深くに挿入する。

「(…ヤバ…。
めちゃめちゃ、いい…)」

餓鬼の頃、ただ柔らかいだけだったそこは、修行に出て鍛えたせいなのか、その締め付けが半端無く、いい…。

「(…いやまだ…アリオンとしてる。
とファオンが思い込んでるせいか…?)」

アリオンと思われてるだけで、こんなに反応が良いのか…。

リチャードはまだ、アリオンの垂らし具合が半端無いと解って、項垂れる。

シュティッセンが言った。

『相手によって…こちらの反応も違って来ます』

…つまりアリオンは、腕に抱くだけで相手の具合までも良くする訳だ。

溜息を吐きかけたが、正直欲望はもう、辛い程張り詰めていたから、少しずつ…解き放つ快感に包まれる前に、ファオンに拒絶されないことを祈って、腰を突き入れ始めた。


ファオンは正直、まだアリオンに抱かれてる。
と思い込んでいた。

けれどどんどん奥の敏感な部分を擦られ、自身も高まって思わず

「………っ!」

と喘いだ時…目前のちょっと横に座るアリオンと目が合う。

「(………?あれ?)」

背後から抱く腕。

けれどまた貫かれた時、もう男根が辛くなってきて、そのまま突かれるに任せた。

数度、擦られると、我慢出来なくて逝く。

けれど同時に、背後の人物も…中で解き放ってた。

手がそっと髪に触れ…頬に口付けられた時…。

初めてファオンは振り返る。


リチャードは振り向き見つめるファオンが目を、驚きに大きく見開いていて…。

そそくさとファオンの腰から自分を引いて、蕾から引き抜く。

そしてそのまま、顔を伏せてファオンの背後に立ち上がり、顔を伏せたまま、その場を後にする。


ファオンに呆然と、見つめられてる気がしたが、リチャードは顔を、下げ続けた。

キースだけが

「叫ばれなくて、良かったな」

とリチャードを、慰めた。
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