上 下
19 / 307

結ばれる時

しおりを挟む
 長く濃い栗毛に囲まれた綺麗な顔が自分を見つめ、そして身をそっ…と起こすから。
スフォルツァは慌てて、アイリスが痛くないよう、指を引き抜く。

目前に身を起こすアイリスを呆然と見つめていると、アイリスは優雅に頭を下げ、スフォルツァの腰に身を屈め、萎えたばかりのそれに唇を近づけ、そして…くわえた。

スフォルツァの瞳が見開かれ、眉が一瞬くっ!と寄る。

高貴なアイリスの、そんな卑猥な行為は…。
去った筈の熱を、一気に呼び戻す。

どうしたって興奮は嫌が上にも高まり行き…。
第一、あの形の良い可憐な赤い唇に、銜えられている。
そう思っただけで、今直ぐアイリスの口の中に解き放ちそうだった。

………が。
これでは
『期待はずれ』『下手』
…と言われても、無理も無い。

「……アイリス……アイ…リス!」

スフォルツァは股間に張り付く、アイリスの髪をそっと握りささやく。

三度目に名を呼ばれた時ようやく、アイリスは顔を上げる。
が舌先でその先端をちろり。と舐めたりしたから、スフォルツァは顔と肩を一瞬、思い切り揺らした。

「…もう…いい」
「良く無い。挿入れる気だろう?私に」

その言葉が乱れる事無く冷静に放たれ、スフォルツァは先に達った事に恥ずかしげに頬を染めた。
けれど、ささやく。

「君の感じる顔を見ただけで簡単に、復活するさ」

アイリスは再び銜えようとし、呆けたように顔を、上げた。

「マジで?」

スフォルツァは苦笑いし、頷く。
そしてまだ呆れたように視線を自分に向けるアイリスの顔を見つめながら、その肩を押して寝台に押し倒す。

ゆっくり顔を傾け、口付ける。
吸い取るようにアイリスの口の中を吸い上げ、掠れた声音で告げる。

「拭いてない内に銜えたりして……まだ…俺の物は汚れてるのに」

アイリスはそっとささやく。
「別に。平気だ。
それより、こっちも限界だ。
挿入れるなら早くしてくれ」

言葉はやっぱり、冷静に聞こえた。
がアイリスの普段から赤い唇はもう真っ赤で、その瞳は潤み切っていたりしたから…。
スフォルツァは押し止めていないと、がっつきそうだった。

腰に腕を回す。
もっと華奢かと思っていたその腰は、思ったよりしっかりした手応えで。
スフォルツァは内心苦笑した。

こっちも、思惑外れか。
が、それが落胆では無くむしろ………更なる興奮を煽る。

混乱してるのは確かに、自分だった。
それですら、裏切られたから………。

顔が凄く綺麗な男の子とそうなって。
…腰の手触りが思ったより、ずっと…。
がっしりしていて。

華奢に見えたのに意外とがっちりした体付きに気づき、それで一気に冷めた事を思い出す。

心が冷めたんじゃなく、手触りで興奮が、冷めたのだ。

なのに………。

同じシチュエーションの筈なのに、どうして。
…アイリスの場合は興奮が更に、高まるんだ???

スフォルツァは必死に、冷静さを取り戻す。
内壁は幾ら鍛え、引き締まった体をした奴だろうが、柔らかで傷付きやすい。
まして痛みで気絶した体験を持つアイリスが、傷付く事を覚悟で。
自分に応えてくれている。

決して、傷付ける訳にはいかない。

スフォルツァはアイリスがもうすっかり…美しい濃紺の瞳を潤ませているのを見つめながら。
そっ……と中へと、身を進めた。

アイリスはそれが、ゆっくり挿入はいって来るのを感じた。

さんざ嘘で『痛い』と言ったせいか。
スフォルツァはそれは気を使い、無茶を慎んでいた。
のめり込む圧迫感があり、眉間を寄せる。
スフォルツァが途端きつく抱きしめ、そしてまたゆっくり…挿入はいって来る。

「ん………あ………っ」

スフォルツァはアイリスの喘ぎに、どくん…!と心臓が高鳴った。
直ぐ様抱きしめ、思い切り腰を使いたくなる衝動を、何とか必死で抑える。
だがアイリスが感じたように眉を寄せ、赤い半開きの唇を戦慄かせて仰け反ったりするから。

もう我慢なんて、出来なかった。

かき抱くと、腰を突き入れる。
出来るだけ…抑えた動きで。

「あ……ぅんっ……!」

アイリスが首を振る。
もう、たまらなくて彼を自分のものにしようと。
スフォルツァはきつく腕に抱くと、腰を突き入れ始めた。

半分泣けたが。

『良ければ、二度目はあるかもしれない』

そう思い出来るだけ…丁寧にやるつもりだった。
が………。

『大抵の男は自分の欲望優先…』
アイリスの言葉がチラリと脳裏をよぎる。
が挿入た途端、吸い付くように包まれ、あまりの良さに、もう…どうしようも無くてつい、激しくアイリスの中を思い切り突き上げる。

「あっ!あ!!!」

腕の中で、アイリスの体が激しくしなる。
思ったよりずっと、しっかりした引き締まった体が。

のたうつように跳ね上がると、煽られ、たまらなくて…。

更に激しく、腰を突き入れる。

「ああっ!あ…っ!」

自分を銜え、そして今。
自分が使う腰で、この真っ赤な唇から喘ぎが洩れていると思うと。
スフォルツァは完全に、頭に血が上った。

「あっ…ん!
んんっ……あ………………」

アイリスはあんまり激しく抉られ、身が跳ね上がるのを、止められなかった。
電流が駆け抜け、同時に性器の先端にうねるような快感が沸き上がり。
十分硬かった性器が更に興奮を帯び、勃ち上がるのを感じる。

スフォルツァの熱く、抱く腕は自分を放しはしない。
気遣いを取っ払い、がんがん突かれると。
正直、正体を無くしそうだった。

豪語しただけあって、激しいのに辛かったり、息苦しさは感じない。

どころか……。

「あっ…あ!」

抱き慣れてるスフォルツァはちゃんと、感じる場所を的確に。
そしてもっと感じるように、突いて来る。

正直言って…上手かった。

抱かれる経験は少ないものの、ゼロでは無かったアイリスは、つい。
決して自分に傷を負わせたりしない、慣れて上手な今までの男達を、思い出していた。

大抵もっと小さかった時の体験で。
それでも12には、なっていたと思う。

誰もが皆、上手かった。
それで、そんな相手と過ごしたら女役を貫いても良さそうなものだが。
どういう訳か、挿入れられるとその後、猛烈に誰かを抱きたくなった。

どうも相手に、一方的に快感を与えられる受け身には、我慢出来なくなるようで。
自分が手綱を取り、自分のいいように相手を持って行くのが楽しかったし、深い快感を得られた。

が…スフォルツァがあんまりきつく腕に抱き、自分だけのものにしようと腰を使うので。
ついアイリスは思い切りその腕の中で身を反らし、顎を晒した。

「ああっ…!あっ!」

スフォルツァの腕が大切なものを、放すまい。と抱き寄せる。
アイリスはそれに応えるように、スフォルツァの首に腕を回そうと、振り上げる。

瞬時に気づいたスフォルツァは首を下げ、その腕を迎え入れ。
唇を、殆ど触れるほど近くに寄せる。

互いの息づかいを、間近に感じた。

スフォルツァが、呻くように
“もう…”
と心の中で告げ、アイリスも応えた。
“私もだ…”

一瞬、スフォルツァが、くっ!と腰を突き入れ、アイリスは喉を詰まらせ、そして………。

スフォルツァは荒い息を吐き出し、そっとぐったりするアイリスを、寝台に横たえる。

問う、間もなくアイリスの腕は伸びて、スフォルツァの起こす体を引き寄せる。

アイリスの腕に抱かれて身を寄せると。
スフォルツァの全身に、幸福感が襲い来た。

それでつい…のし掛かってるアイリスの、耳元で。
尋ねた。

「本当に…?
一回で、お終いか?
俺はそんなに………」
『下手だった?』
そう聞こうとした。

が、アイリスの腕が
『しゃべるな』
と言うように首をもっと引き寄せるから。
仕方無くスフォルツァは顔を倒し、アイリスの首筋に顔を埋め、黙る。

アイリスも、息が切れた。
が、スフォルツァの意見に
『同感だ』
そう答えるのは、理性が戻ってからにしよう。

そう思い、ただスフォルツァを腕に抱いて、甘い休息に身を浸した。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

魔法少女は破壊神!?~平和へ導けない世直し旅~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:24

オカリナ

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

異世界で出会った王子様は狼(物理)でした。

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:1,212

初対面の不愛想な騎士と、今日結婚します

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:1,870

不撓不屈

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:1,292pt お気に入り:1

二番煎じな俺を殴りたいんだが、手を貸してくれ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:333pt お気に入り:0

百貫作家は、脂肪フラグが折れない

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

人を殺せば強くなる業を背負った暗黒騎士は平穏に暮らしたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:50

ブルー・ブルー

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:78

処理中です...