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心に灯る希望の光

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「愉しんでも、構わないんで?」

あの忌むべき小屋で…取り囲む体の大きな同級生の、声が頭上で響く。
アスランを嬲る、黒髪の上級生に、そう伺いを立てている。

そして…そう、腕を掴まれて。

今度は、自分の番だった。
三人、居た。

口付けられ…無理矢理押しつけられた唇は、吐き気を伴い…。
けれど別の男に体を探られると…慣れた体は熱を帯びる。

でもどうしたって…三人の男に腕や体を掴まれ…代わる代わる犯されるのだと解ると、身が屈辱に震った。

じっと…していれば終わる。
抵抗しなければ…。

後は、何も感じないよう。
本当の自分を、うんと心の奥に隠した…。

乱暴に衣服を剥ぎ取られ、無遠慮に体を撫で回され…好き勝手に自分の体を弄られても…マレーは感じまいと、必死で意識を別に、追いやった。

ただ…性器に触れられると、体がかっ!と熱を帯び、後ろの穴を指で探られると、声が漏れた。

「あっ…!」

取り囲む男達が、その反応に興奮を増すのが感じられ…マレーは絶望に胸を閉ざした。

応えてやれば…欲望をそのまま受け入れてやれば、暴挙は受けない。
それが、やり過ごす術で、それしか無い…。

義母の弟の、軽薄な顔が浮かぶ。
明るい栗毛。青の瞳。
奴が言った通り…そう、慣れた体は苦痛を感じない。
感じるのは…屈辱のみ。

奴らに弄ばれ、感じる体。
けれどそれが自分を救う。
感じれば感じるほど、奴らは夢中になる…。

一人が抱き寄せ…後ろから突き刺そうと、背後の衣服を探る気配と共に、もう一人が正面で、自分の性器を股間から取り出し、開けた口に、押し込もうとしていた。

義母の弟の、声が響く。
“覚えとけ。男はこれが好きだ。
銜えてやれば、大抵乱暴はされないばかりか…良ければ大事に扱うようになる”

けれどその通りだった。
自分で進んで手を添え、口に含む。
吐き気は必死で、堪えた。
けどそれを口に招き入れ、含んでやると…野獣は快感の吐息を吐く。

後ろで…がさごそと、取り出す音。
剥かれ、後ろに付きだした双丘の蕾に。
固く…猛ったそれが当たる感触。

マレーはそれが間もなくだと解ったが、口の中で抜き差しするそれが、大きく成れば成る程、その男の喘ぐ吐息が聞こえ…その男の欲望を、吐き出させる事に夢中になる。

三人居る。
ともかく…早く、終わらせたかった。

けど口に含んだモノの、添える手が震える。
どうして、拒絶出来ないのか…。

思い切り突っぱねて、殴られ、殺された方がマシだ!
そう叫ぶ、もう一人の自分をぼんやり遠くで眺めながら…。

でも、作業を続ける自分が居て…。

マレーは自分が、体で無く心が、引き裂かれてると感じた。

心が、真っ二つに。

冷たい感触がし、自分の心が、死んで行くさまを眺めた。
眺める事しか出来ない自分が、悲しかった。

死ぬのは自分なのに…なのに成す術も無く、見てるだけ…。

けどふいに…人の…とても逞しい体付きの、気配がして…。
後ろの男が挿入ようとしている動作を、いきなり止めた。

…そして、背後からふっ…と。
本当に突然ふっと…。

圧迫感が、消えた。

突然口の中から、大きく育った性器が引き抜かれる。

まだ…!
そう…追おうとし、横の逞しい人の気配に、突如とつじょ気づく。

正面の男が身を引いたのは…その男が来たからだと…。
突然気づいて、顔を上げる。

何と…言ったら良かったのか…。

高貴な気品ある男らしい顔。
そして黒髪。

一目で解る。
「左の王家」の王族だと…。

彼が横に付いて、顔を一瞬覗き込む。
あんまり…彼が素晴らしくて、呆けた様に見惚れた。

彼のものだったら良かったのに…!
もしそうなら、どれだけの屈辱にだって、耐えられる…。

けれど彼はすっと立ち上がり、首謀者を見つめた。

「ディングレー」

マレーは突然、そうその名を呼んだ首謀者も、黒髪で品の良さそうな大貴族だと思い出す。

「弟のお前が、私に意見する気なのか?」

体が、がくん!と揺れ、同時に…期待が込み上がる。

彼もこの一味の仲間だとしたら!
…何が何でも、彼専属になりたい!
他の男に触らせない程の…。

彼だけのものに、なりたい!

が………。

事の状況で解った。
彼は一味で無く、兄の行状を監視するだけ。

そして、ディングレーは兄に立ち塞がった。

マレーは彼が、大勢の男をたった一人で敵に回し、殴られ、無残に傷付く様が思い浮かび、失望と共に思った。

“…何だ…大馬鹿なんだ……”

彼が殴られたって、自分達への暴挙はまず、救われたりしない…。
彼の、殴られ損だ。

けど…彼の兄は弟の顔を立てたのか…。
男達に命ずる。
引け。と…。

ディングレーは、確かに勇ましかったし、周囲を圧倒するだけの迫力があった。
けど………。

何にも、成りはしない。

やがて奴らは引き…マレーはのろのろと…剥がされた衣服を着けた。
ハウリィも、同様だった。
そしてディングレーはアスランの横に寄り…彼を、抱き上げた。

高い背。
逞しい肩と腕。
男らしく、きりりと整った横顔。

…そう…彼のものだったら…。
奴らは、手出し出来ない…!

その考えが、頭から離れなかった。

あのロクデナシの兄は、弟ディングレーに、一目置いている…!

ディングレーはやさ男の兄より、背も高く男前。
彼になら…望んで自分を差し出せる。

そう、もし!
ディングレーのものだったら…。

あの同級生達だって、迂闊に自分に、手を掛けたり出来なくなる…!

ディングレーは気絶したアスランを抱え…宿舎に進む。

その、後に続く。
横に、ハウリィが俯きながら歩いていた。
彼の、か細く弱々しい肩が、ガタガタと震えていた。

砂糖菓子。
…そんな甘ったるい感じの、可愛い子ちゃん。

けどハウリィは俯いたまま…震えが止まらないみたいに…。
肩も手も、ずっと小刻みに震え続けてた。

前を歩くディングレーが、振り向く。
「大丈夫か?」
ハウリィはそれでも…顔を上げ、青ざめた顔で、にっこり笑った。

ディングレーの男らしい眉が、切なげに寄った。
その表情に…胸が痛んだ。

涙が心の中で、零れた。

胸いっぱいに溢れる程…涙が流れ続けた。
なのに…マレーの表情は、固まったまま。

ディングレーの視線がマレーに向いた時…。
マレーの、何の感情も表さない顔を見つめ…。

ディングレーは深い吐息と共に、顔を俯けた。

どうしてだか…マレーは…。
アスランを部屋に運ぶからと、自分とハウリィに了承を取るように頷き、自分達から背を向け去って行くディングレーの後を、追いかけそうになった。

幾度も心の中に、ディングレーの深いため息と…。
そして、俯く顔がダブり、それを、繰り返し見続けた。

繰り返し繰り返し…いつまでも………。

俯く…そのディングレーの、男らしい顔が。
落胆に陰る表情を。

マレーは自室に戻り、ぼんやり窓辺に座り、考え続けた。
あの落胆と失望は…違う。
僕に、したんじゃない。

むしろ労り…自分をそうした、兄に対する落胆と失望だ。

それに気づいた時、扉が開いた。

マレーはその向こうに立つ、彼の運命を見つめた。

黒髪の、体格の良い男前の、気品溢れる王族の上級生…。

出来損ないの兄なんかよりずっと…頼れて信頼出来る、マトモな神経を持った男。

彼が様子を聞き、自分は空虚な声で
「大丈夫」
と告げた事を、マレーはぼんやり思い出す。

どうしてディングレーを、引き留めなかったんだろう…?
どうして、縋り付かなかった?

その時マレーは自分が…。
先の保証を確保するのに、動く事すら出来ないほど。

緊張が解かれ、疲れ果てている事に、気づく。

そっ…と、死んだ心を振り返る。
それはまだ、微かに息をしていた。

心が死ぬ前に、救い出せるのか…。
マレーには解らなかった。

その、機会があるのかすらも。

けれどあまりの疲労にマレーは成すすべ無く…。

寝台に転がると、ディングレーの事を、思い浮かべた。

あの黒髪に包まれたら、どんな気分だろう?
裸の彼の胸に、抱かれたら…。

そしてディングレーが、挿入って来たら……。

不思議だが、途端にざわつきまくる体も心も静まり…。
マレーはいつの間にか、ひどい疲労から、深い眠りに付いた。

ディングレーの事を、心に思い浮かべながら………。

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