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暖かい慰め

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 ギュンターは腕に抱くアスランの様子に気づき、囁く。
れて…揺さぶった?」

アスランは囁きながらも休まない、ギュンターの手の動きに翻弄され…。
唇に手の甲を当ててけ反りながら…とてもか細い、小さな声を漏らす…。
「…少しだけ…」

ギュンターはもっと、子細を尋ねたかった。
が、手でアスランを、煽れば煽るほど…腰をじれたように捩る。
辛そうに…。

まるで蕾の奥に欲しい自分に、絶望しているのに。
体は自分を、裏切ってる。
そんな感じに見えて、ギュンターは切なげに眉を寄せた。

誰かが辛そうにしているのを見るのは、いつも悲しかった。

昔ほんの幼い、子供の頃。
狐が小鳥をくわえていたから、石を投げた。
狐は小鳥を放し…けれど傷付いた小鳥は、ばたばたと羽根を打ち付け…もがき……血塗れで…。
ギュンターは、どうしていいか解らなかった。

手当てしようと手を伸ばし…けれど小鳥はあんまり苦しげに、ばたばたと羽ばたきもがき続けるから…手を、出しかねて…。

ギュンターはもう…見守るしか無くて、呆然としていた。
直ぐ、長男シュティツェが飛んで来た。
そして叫ぶ。
「何してる!」
…野太い声で。
いつも乱暴なこの長兄が、ギュンターは苦手だった。
が、シュティツェはもがく小鳥を見、直ぐ手に掴み…持ち上げて傷口を見…顔を、歪めた。

ギュンターにはそれが…泣き顔に見えた。
そしてシュティツェは、見せた事が無いほど真剣な顔を、自分に向ける。

シュティツェは一つ、吐息を吐くと…苦しげな、小鳥の小さな首を指で挟み、一気に力任せに捻った。

「……………っ!」

ギュンターは異論を唱えようとした。
が、シュティツェはむっつりと不機嫌で…。
ギュンターはそのシュティツェの表情で、小鳥はもう、苦しんで死ぬだけなんだと解った。

シュティツェはだらりと首を垂れた、血塗れの小鳥を手の平に乗せ…そして屈み、土を、掘り始めたから…。
ギュンターも無言で…隣に屈んで、土を掘った。

小さな穴が出来ると…シュティツェはそっ…と小鳥を土の上に降ろした。

ギュンターが土をかけると、シュティツェは吐息混じりに囁く。

「苦しんでるなら…早く楽に、してやるしかない…」

ギュンターはその時、無言で頷いた。
シュティツェは…いつもマトモに言葉を言わず、たいてい殴るのに。
その時は、言った。
「助かる奴は殺すな。
見極めが、大事だ」

ギュンターはしゃべる長兄にびっくりし…目を、まん丸にした。
けど真剣なシュティッツェに見つめられ、頷いた。

指でアスランの敏感な場所を、立て続けに…いじってやったから。
アスランは喉を曝し、吐息を吐き出し…。
だからもう、直ぐだと解った。

けれどしがみつく指は。
別の言葉を、語ってた。

じれるように、腰を捻る。
高まる度に。

ギュンターは吐息を吐いた。
そして…手に握り込んだアスランの性器を手放すと、そっ…と、その後ろ。
双丘の奥の、蕾に指を忍ばせる。

出来るだけ優しく。
傷付いてる様子が無いか、慎重に探る。
けど…奥のその場所に指が触れた時。
アスランは頬を真っ赤に染め、ギュンターの胸に顔を、伏せた。

まるでその様子は『そこ』だと。
告げてるみたいに。

ギュンターの方は、とっくに煽られ切っていたから。
自分の股間を探って取り出し、膝を迫り出しアスランの腿の下へと潜らせ、アスランの頭の後ろに左手を添え、抱き包む。

まるで…アスランは身を、預けるようにして、しがみついて来るから…。
彼は欲しいのだと、ギュンターに解った。

双丘の奥に自身の猛った性器を忍ばせ、蕾に先端を当てると、アスランの身が大きく、びくん!と揺れる。

ギュンターは顔を上げ、胸に顔を埋める、アスランの顔を覗き込む。

泣き出しそうだった。
望んだ、事なんかじゃないのに…!

その表情はそう、語ってた。

ギュンターは、大丈夫だ。と微笑む。
アスランは首を、横に倒す。
その仕草は…。
『女の子とだって、まだなのに…!』

とても…悲しげで、ギュンターはそっと囁く。
「…女を知れば…絶対そっちが良くなる…」

アスランは、本当に?と瞳を見開くから…ギュンターは微笑んでやった。
「年頃になったら…本能が勝る。
それでどうしても…男がいいなら。
男が好きって事だ。
どのみち…相手が男だろうが女だろうが、好きな相手とするのが一番いい」

アスランはこっくり頷くと、またギュンターの胸に顔を埋め、しがみついた。

その仕草があんまり…哀れで可憐で…。
ギュンターは煽られ切って、唇を、労るようにそっと…アスランの柔らかな頬に降らせた。

そして出来るだけ焦らさず、さっと…彼の奥へ自身の性器を捻り込む。
「ぅ…んっ!」

思った通り…すんなり挿入る。
グーデンが自分が挿れるつもりで、何か塗ったんだと触れた時気づいてた。

すっかり奥まで挿れ込むと、顔を…胸に埋めるアスランに寄せる。

アスランが顔を上げるから、出来るだけ見つめながら…そっ…と腰を、動かす。

彼がどこにそれが欲しいのか…解っていたから、ギュンターは、彼のいい場所をそっと…突き上げてやる。

「…あっ!」
真っ赤で仰け反るアスランは…けどもう哀れに、見えなかった。

散々、弄って焦らし…そして…拒絶出来ないように追い詰め…。

ただでさえ、縛り上げて好きな様に嬲りその上…。

その身の習性まで利用して、辱めるやり方に。
ギュンターは思いきり憤慨し、心の中で誓う。

“今度あの柔っちろい顔を見つけたら…ディングレーの兄貴だろうが、ブン殴ってやるぞ!”

が、柔らかで可愛いアスランにしがみつかれると、もうギュンターは自分を抑えられなかった。

ぐい!
と…ギュンターに奥まで捻り込まれると、一瞬…息が、止まりそうに感じる…。

なのに引かれ、擦られるとどうして…こんな、甘い快感が沸き上がるのか、アスランには解らなかった。

している事は…だってあの、ぞっとする連中と…同じ筈なのに…。

「あ…んっ!あ!……あ………っ!」

必死でギュンターにしがみつくと、彼は頬を寄せ…吐息が頬に触れ…。
その身はしなやかで柳のようで…細身なのに、とても頼もしく…。
そして若々しく感じ…ギュンターも同様、自分を抱いて快感を共有してる。

…そう…確かに、アスランらは感じられた。

甘く、感じるのはギュンターが…。
自分を抱いて、同様に感じてるせいだと…アスランはぼんやり、思った。

けど蕾の奥をギュンターのもので擦り上げられると。
かっ!と体に、火が点いたように熱くなって…。
ギュンターの、金髪の擦れる音すら、聞こえそうな距離で…。
荒い吐息が青年らしくて…アスランは突かれる度、心臓が跳ね上がりそうな位、どきどきしてる自分に、気づく。

こんな…事をしてる相手なのに。
今更…あんまりときめいて、どうにかなりそうで。
アスランは必死でギュンターの首に、しがみついたまま…沸き上がる快感のうねりに身を委ね…飲み込まれてギュンターと共に…上り詰めた。

ギュンターの唇が二度…耳たぶに擦りつけられる。

それが…合図だと、解った。

彼の腰が思い切り突き入れられ…激しい電流が身を駆け抜けて行き………そして、去った。

はぁはぁ……。

荒い吐息を自分も、ギュンターも…肩を揺らし、吐いていた。
ギュンターの腕は力の抜けた自分を離したから…。
アスランは頭を寝台の上に横たえ…そして、ギュンターの美貌が、自分を覗き込むのを見た。

あんまり…鮮やかな美貌で、アスランはびっくりした。
艶やかな金の髪と赤い唇。

切れ長の…キラリと光る、透けた紫水晶のような瞳。

瑞々しい輝きを放ち…素晴らしく美しくて…見とれた。

ギュンターは、くっ。と眉を一瞬寄せ…。
そしていきなり顔を降らせ、ちゅっ。と軽く、唇にキスをした。

身を起こすその青年が、垂れた金色の前髪をたくし上げ。
寝台の下にあった、瓶を持ち上げ、飲み干す。

ふっ、と振り向くと、突然屈み込んで…。
ギュンターの唇が、唇に合わさった途端。
その液体が、染みるようにアスランの口の中に、流れ込んで来た。

かっ!と頬が熱くなる。
途端、僅かな苦みを伴った、爽やかな酸味が。
口いっぱいに広がる。
果実酒だった。

ギュンターは身を起こしもう一度…瓶から煽る。

そして身を倒すと…アスランの唇の上に、その瓶の中身…果実酒を、数滴零しながら口付ける。

“…どうして…この人相手だと、口づけは甘いんだろう…?”
ギュンターが顔を離す瞬間、甲斐間見える美貌がそうさせるのか…。
アスランの心臓が、どくん…!と高鳴る。

ギュンターがそっと…身を、横に倒して来て、腕を回し抱き寄せるから…。
アスランは彼の腕の中で、思い出していた。

縛られて、散々あちこち触られ、もがく度に痛くて…苦しかった。
ギュンターはその戒めを…小刀で切って、自由にしてくれた。

縄が解かれた時の、解放感…。
そして、ふわっ…と身に労るように…たった今まで。
ギュンターの着ていた温もりの残る、シャツが掛けられた途端。
自分は辱められるただの道具で無く、一人の人間に、戻った気がした。

それまでの自分が、あんまり惨めで…。
涙が滲んだけど、ギュンターの力強い腕に抱かれると直ぐ、惨めさも悲しみも、消え去っていた。

ギュンターに抱かれ、運ばれると。
どういう訳か、胸が高鳴る程…わくわくした………。

彼の腕に抱かれただけで、世界が変わる。
そんな事が、あるなんて。

実感してても、驚きだった。

そして…今、事が終わった後彼の胸に顔を埋めると…。
もう…ずっと彼と一緒にいたい。

そう…思う自分を不思議に感じながら、アスランはギュンターの温もりに包まれて、安らかな眠りについた。


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