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おお!っと王都で驚いた
兄弟愛
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アスレチック公園が一応の完成を見たのは2月の中旬だった。
購入した隣家の庭が結構広いので半分ずつ開放していく方針だそうで、最終的な完成は5月になる見込みらしい。まず出来たのは子供向けに滑り台、ブランコ、シーソー、鉄棒、高鉄棒、登り棒、雲梯、壁登り、平均台(低・中)。
次に作るのは等間隔にぶら下がったロープに捕まって渡っていく物や障害物を乗り越えて進む兵士の体力づくりのコース、平均台(高)。
さすがに年末年始は休んでたけど、毎日6~7人、人力で約3カ月。……早いのか遅いのか、よく分からない。
個人宅の庭なのに完成記念のお披露目パーティーをやったのは手伝ってくれた人を労うためと、ここで出来たカップル7組を冷やかすためらしい。(笑)
出入り自由の立食パーティーだったせいか更に3組もカップルができた。
庭を売ってくれたお隣さんは優しそうな老夫婦で、息子夫婦が遠くに行ってしまったそうで孫に会えない代わりに遊ぶ子供達を眺めたいのだそうだ。今度一緒にお茶をする約束をした。
「ハルト、遊ばなくて良いの?」
「あーちゃ、いこいこ しゅるの」
ハルトの時のように毎晩魔力を補給してもらっているのに軽いつわりが未だに治らずにいたら、ハルトが治癒してくれるようになった。赤ちゃんを『あーちゃ』と呼び、離れたがらない。ありがたいけど申し訳ないなぁ。
「ハルト、ワシの作った遊具の具合を見てくれんか? 赤ちゃんが大きくなったら遊んでくれるかどうか」
「んー……、いよ! あーちゃ、まっててね?」
4月の見込みだからまだまだ出てこないよ?
「フィール?」
「ハルトの息子になりそうだ……」
後ろから抱き締めつつ、父親として毎晩魔力を注いでるのに足りないなんて不甲斐ない、と軽く落ち込みながらそんな事を呟いた。
「魔力の器が大きいのか、作り出す魔力が少ない子なのか……。心配だなぁ」
「そうだな。私の嫉妬より子供の命の方が遥かに大切だからな。ハルトを頼りにしよう」
お医者様の説明ではつわりはやっぱり魔力不足なんだけど、その原因は生まれてみないと分からないらしい。フィールは気遣いながら毎晩3回もしてくれるのに、まだ足りないなんて! その上、子供に魔力を取られて体温調節が上手くいかず、フィールやハルトにくっついてないと冷えてしまう。
……心配が募る。
ハルトはまだ小さいので平均台(低)でも落ちてしまう。ヨハンは上手に渡れて、彼氏とハイタッチ。平均台と言いながら幅の細い板を地面に置いて固定して途中途中に踊り場みたいな場所を作ってあるタイプなので落ちても危なく無い。平均台(中)は高さ40cmくらいです。
シーソーはハルトを座らせた反対側をトラさんが手で押してる。お尻がほんの少し浮き上がるのが楽しいらしく、大はしゃぎ。
……トラさんの力加減が絶妙!
フィールの魔力に包まれながら楽しく遊ぶハルトを眺め、幸せを噛みしめた。
─────────────────────────────
4月18日の朝、陣痛が来た。
アレクの弟は1週間前に産まれていて、みんながメロメロだ。早く並べたい!!
「まぁま だいじょぶ? いこいこね? たいたい とんでけー!!」
「ハルト、ありが……いたたたたっ!!」
「まま! あーちゃ!」
「ほいほい、お兄ちゃんはいい子だな? もう直ぐ出てくるぞー」
こっちのお医者さんも呑気な喋り方をするので出産時のお約束なんだろうな、なんて陣痛の合間に考えられるくらい楽。ハルトのおかげ!
「ハルト……、ママは大丈夫だから……、あーちゃんに出ておいでーって、言って?」
「うん! あーちゃ、おいでー? はーと、ここよー」
ハルトの小さな手から暖かい魔力がふわりと出て、お腹の奥に吸い込まれていく。すると一際大きな痛みが襲ってきて、大きな塊がずるりと出ていくのを感じた。
「いかん!!」
お医者さんの言葉が突然鋭くなり、羊膜を破って取り出された赤ちゃんのお尻を叩いたり人工呼吸をしたりするのをぼんやりと眺める。お医者さんが用意していた柔らかく光る石を赤ちゃんの胸に乗せると、一瞬で光が消えた。
「魔力欠乏症だ……」
「先生、ハルトに抱かせて下さい!!」
フィールの悲鳴のような叫びにはっとして行動に移すお医者さん。
「あーちゃ、いこいこよー? げんきねー?」
無邪気にそう言いながら布に包まれた小さな赤ちゃんを膝に乗せ、お腹のあたりを撫でさする。するとはっきりとした魔力の光が2人を包み込み、赤ちゃんに吸い込まれていった。
「ほえぁ! ほえぁ! ほえぁ!」
「ハルト! 大丈夫か!?」
赤ちゃんの泣き声が聞こえると同時にハルトが意識を失った。どちらか片方なんて嫌だ!! 2人ともおれの息子だ!!
魔力(中)しかないのに火事場の馬鹿力で魔力をハルトに注ぎ込み、呼吸が落ち着いたところで今度はおれが気を失った。
目を覚ますとお医者さんの要請で届けられた追加の魔石が、おれたちの周りに並べられていた。
「チサト!!」
「フィール……、子供達は?」
「無事だ。今は2人とも眠って……「ほえぁ! ほえぁ!」
「はいはい、おっぱい飲ませてねー。私は客間に泊めてもらうから何かあったら呼んでねー」
お医者さん、泊まり込んでくれるんだ……。心強いな。
安心したせいで泣きそうな顔のフィールなんて貴重だな、って不謹慎なことを考えてしまった。
購入した隣家の庭が結構広いので半分ずつ開放していく方針だそうで、最終的な完成は5月になる見込みらしい。まず出来たのは子供向けに滑り台、ブランコ、シーソー、鉄棒、高鉄棒、登り棒、雲梯、壁登り、平均台(低・中)。
次に作るのは等間隔にぶら下がったロープに捕まって渡っていく物や障害物を乗り越えて進む兵士の体力づくりのコース、平均台(高)。
さすがに年末年始は休んでたけど、毎日6~7人、人力で約3カ月。……早いのか遅いのか、よく分からない。
個人宅の庭なのに完成記念のお披露目パーティーをやったのは手伝ってくれた人を労うためと、ここで出来たカップル7組を冷やかすためらしい。(笑)
出入り自由の立食パーティーだったせいか更に3組もカップルができた。
庭を売ってくれたお隣さんは優しそうな老夫婦で、息子夫婦が遠くに行ってしまったそうで孫に会えない代わりに遊ぶ子供達を眺めたいのだそうだ。今度一緒にお茶をする約束をした。
「ハルト、遊ばなくて良いの?」
「あーちゃ、いこいこ しゅるの」
ハルトの時のように毎晩魔力を補給してもらっているのに軽いつわりが未だに治らずにいたら、ハルトが治癒してくれるようになった。赤ちゃんを『あーちゃ』と呼び、離れたがらない。ありがたいけど申し訳ないなぁ。
「ハルト、ワシの作った遊具の具合を見てくれんか? 赤ちゃんが大きくなったら遊んでくれるかどうか」
「んー……、いよ! あーちゃ、まっててね?」
4月の見込みだからまだまだ出てこないよ?
「フィール?」
「ハルトの息子になりそうだ……」
後ろから抱き締めつつ、父親として毎晩魔力を注いでるのに足りないなんて不甲斐ない、と軽く落ち込みながらそんな事を呟いた。
「魔力の器が大きいのか、作り出す魔力が少ない子なのか……。心配だなぁ」
「そうだな。私の嫉妬より子供の命の方が遥かに大切だからな。ハルトを頼りにしよう」
お医者様の説明ではつわりはやっぱり魔力不足なんだけど、その原因は生まれてみないと分からないらしい。フィールは気遣いながら毎晩3回もしてくれるのに、まだ足りないなんて! その上、子供に魔力を取られて体温調節が上手くいかず、フィールやハルトにくっついてないと冷えてしまう。
……心配が募る。
ハルトはまだ小さいので平均台(低)でも落ちてしまう。ヨハンは上手に渡れて、彼氏とハイタッチ。平均台と言いながら幅の細い板を地面に置いて固定して途中途中に踊り場みたいな場所を作ってあるタイプなので落ちても危なく無い。平均台(中)は高さ40cmくらいです。
シーソーはハルトを座らせた反対側をトラさんが手で押してる。お尻がほんの少し浮き上がるのが楽しいらしく、大はしゃぎ。
……トラさんの力加減が絶妙!
フィールの魔力に包まれながら楽しく遊ぶハルトを眺め、幸せを噛みしめた。
─────────────────────────────
4月18日の朝、陣痛が来た。
アレクの弟は1週間前に産まれていて、みんながメロメロだ。早く並べたい!!
「まぁま だいじょぶ? いこいこね? たいたい とんでけー!!」
「ハルト、ありが……いたたたたっ!!」
「まま! あーちゃ!」
「ほいほい、お兄ちゃんはいい子だな? もう直ぐ出てくるぞー」
こっちのお医者さんも呑気な喋り方をするので出産時のお約束なんだろうな、なんて陣痛の合間に考えられるくらい楽。ハルトのおかげ!
「ハルト……、ママは大丈夫だから……、あーちゃんに出ておいでーって、言って?」
「うん! あーちゃ、おいでー? はーと、ここよー」
ハルトの小さな手から暖かい魔力がふわりと出て、お腹の奥に吸い込まれていく。すると一際大きな痛みが襲ってきて、大きな塊がずるりと出ていくのを感じた。
「いかん!!」
お医者さんの言葉が突然鋭くなり、羊膜を破って取り出された赤ちゃんのお尻を叩いたり人工呼吸をしたりするのをぼんやりと眺める。お医者さんが用意していた柔らかく光る石を赤ちゃんの胸に乗せると、一瞬で光が消えた。
「魔力欠乏症だ……」
「先生、ハルトに抱かせて下さい!!」
フィールの悲鳴のような叫びにはっとして行動に移すお医者さん。
「あーちゃ、いこいこよー? げんきねー?」
無邪気にそう言いながら布に包まれた小さな赤ちゃんを膝に乗せ、お腹のあたりを撫でさする。するとはっきりとした魔力の光が2人を包み込み、赤ちゃんに吸い込まれていった。
「ほえぁ! ほえぁ! ほえぁ!」
「ハルト! 大丈夫か!?」
赤ちゃんの泣き声が聞こえると同時にハルトが意識を失った。どちらか片方なんて嫌だ!! 2人ともおれの息子だ!!
魔力(中)しかないのに火事場の馬鹿力で魔力をハルトに注ぎ込み、呼吸が落ち着いたところで今度はおれが気を失った。
目を覚ますとお医者さんの要請で届けられた追加の魔石が、おれたちの周りに並べられていた。
「チサト!!」
「フィール……、子供達は?」
「無事だ。今は2人とも眠って……「ほえぁ! ほえぁ!」
「はいはい、おっぱい飲ませてねー。私は客間に泊めてもらうから何かあったら呼んでねー」
お医者さん、泊まり込んでくれるんだ……。心強いな。
安心したせいで泣きそうな顔のフィールなんて貴重だな、って不謹慎なことを考えてしまった。
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