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災い転じて福となす2
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こんな夜に誰かが訪ねて来るなんて、何かあったんだろうか?
「はーい!」
「すまない! 連れが怪我をして死にそうなんだ! ポーションがあったら売ってくれないか!?」
「だっ、大丈夫ですか!? 入って下さい! すぐハイポーションをお持ちします!」
「助かる! ありがとう」
父さん達のベッドはファーガスさんに貸しちゃってるから、ひとまずダイニングの床に横になってもらう。大急ぎでハイポーションを持って来て怪我人に飲ませた。うん、飲めて良かった。
「貴方もひどい怪我ですよ。こちらをどうぞ」
「ありがとう。!! 美味い! ハイポーション特有の粘つく渋みが全く感じられない!」
「そう言えば父があの渋みが嫌で、何とか打ち消せる様研究してました」
「父上が。君も薬師か?」
「はい。スイと言います」
「名乗りもせずに、失礼した。私はブリアン=レーンクビスト、レーンクビスト辺境伯の四男です」
お貴族様だったー!! しかも辺境伯って言ったら王族の次に偉いんじゃなかったっけ?
「どうした? 何があった?」
「ファーガスさん、起こしてしまってすみません。あの…… もし良かったらこちらのお二人に部屋を譲ってもらえますか? ファーガスさんはぼくのベッドを使って下さい」
「良いぞ。じゃ、一緒に寝るか」
「えっ!? いや、ぼくのベッド小さいですよ?」
「くっついて寝りゃいいだろ」
「ベッドを譲っていただく必要はない! 私たちはここで充分です。ファーガス殿はどうぞお部屋にお戻り下さい」
お貴族様を床に寝かせてぼくがベッドで寝るなんて無理!
「あのー……、お世話かけましてありがとうございます。ブリアン様も私も、床で充分ですから」
「コナン、気がついたか。このスイ殿がハイポーションを下さって助かったんだ」
「ありがとうございます! もう、坊ちゃんのお供もここまでかと思いましたが、まだ続けられそうです」
「坊ちゃんは止めてくれ」
歳は若そうなのに話し方が年寄りっぽくて笑ってしまう。
「お願いします。ファーガス殿と褥を共にするなど、やめて下さい」
「てめぇ、そんなんこいつの勝手だろうが!」
ん? 遠慮してるんじゃない……?
「スイ殿、私は貴方に一目惚れしました。どうか、私と結婚して下さい」
「「「えぇっ!?」」」
顔が地味すぎて勃たないと言われたぼくに一目惚れ? そんなバカな……。
「ぼく…… 酒場で…… その顔見たら萎えるって言われて…… だから……」
「そんな節穴の言葉なんて忘れちまえ! 俺はお前で勃つぞ。お前だって俺の身体見て興奮してたろ? ほら、素直に身を任せろって」
「そんな愚か者の言葉などなんの価値もない。私は貴方の優しさと愛らしいお顔に惹かれたんです。いきなり身を任せろなんて言いません。結婚して下さい!」
「そっちの方が重いんだよ!」
「貴方は下品です!」
なんか…… これって、モテてる? こんなかっこいい2人がぼくを取り合ってくれてるの? 夢? ぼくの妄想?
「スイ殿、ファーガス殿がいた部屋のベッドはどんなベッドですか? ダブルベッド1つかシングル2つか。」
「あ、シングル2つです」
「ならばブリアン様とファーガス殿がそちらのベッドで寝て、私はその部屋の隅で休ませていただきます。そうすればスイ殿はご自分のベッドで休めるでしょう」
申し訳なくて反論しようと思ったけど、それが1番のような気がして来た。コナンさんが2人のケンカも止めてくれるだろうし、怪我が治ったばかりだけど馴れてそうなのでお任せした。
……ちょっと残念。
**********
「おはようございます」
「えっ? あっ、おはようございます。お早いですね」
コナンさんがすでに起きていた。
「ハイポーションのお代は後ほどお支払いいたしますが、せめて何かお役に立ちたいと思いまして。何なりとお申し付け下さい」
「そんな! ぼくもたいした事してませんし、お気遣い無用です!」
「ではせめて水汲みだけでも。水瓶はこちらですか?」
「は、はい! 井戸は……」
コナンさんが呪文を唱え、空中に紋章を描いて最後に中心に指を差し込むと、空中に描かれた紋章が収束して指先に集まり、そこからキレイな水が流れ出た。
「コナンさんは水属性魔術師なんですか?」
「魔術師、と呼ぶには魔力が少な過ぎます。生活が便利になる程度ですよ」
「そうなんですか? 僕は召喚術師で、召喚獣に畑仕事を手伝ってもらってるんです」
「召喚獣が畑仕事を? それは見学させていただいてもよろしいですか?」
もちろん構わないので、一緒に薬草畑へ行った。
《大ちゃーん! モグラさん達ー! ネズミさん達ー! 今日もお願いねー!!》
僕の呼び声に反応してみんなが出て来た。僕にスリスリして朝の挨拶をしてから畑仕事だ。みんながそれぞれどう手伝ってくれているかを説明したんだけど、コナンさん何だかぼーっとしてて心ここに在らずって感じだった。まだ本調子じゃないのかな? 仕事が終わってご褒美に僕の魔力をあげていたら、ファーガスさんとブリアン様が起きて来た。
「ワーム!!」
「フィンディッシュ・モウル! レギオン・ラット!」
「「スイ! 逃げろ!!」」
「おはようございます。この子達はぼくの召喚獣だから大丈夫ですよ?」
「スイ…… そのワーム…… まさかエネリアン……」
「分かるんですか? 大ちゃんの名前、正式にはエネリアン・エミール・ワームって言うらしいんですけど、長いから大ちゃんて呼んでます」
「エネリアンの、しかもエミールかよ!!」
??? 何の事言ってるんだろう? 名前に意味でもあるの? 大ちゃんを見ると首を横に振って名前に意味はないって言ってる。
「はぁ、もうお前がすげぇのは分かった。昨日だって麒麟に乗せてもらったしな」
「麒麟!?」
「りんちゃんも凄いの?」
「「「はぁぁぁぁ……」」」
みんなして大きなため息ついて、何なの?
「スイ殿、『エネリアン』が高貴な、『エミール』が王を意味する言葉だと言う事はご存知ですか?」
「あれ? 聞いた事があるような……???」
ぼくはワームって名前の大きなミミズだと思ってたんだけど、どうやら大ちゃんは下位龍種のワームの中でも人の言葉が判る『エネリアン』と言うクラスで、その中でも『王』の称号を冠するSSランクの存在らしい。そしてモグラさん達もネズミさん達もA~Sクラスの魔獣。りんちゃんはSSSランクだったんだって。
「みんなすごかったんだね~!」
「それを使役するお前がすげぇよ!」
「ますます素敵です!」
なんか褒められたー! おいしい朝食作ってもっと褒めてもらいたいと思います!
「じゃあ、朝食ができたら呼びますので少しお待ち下さい。あ、お茶淹れましょうか?」
「お茶は私が淹れますから、朝食お願いします」
「私も何か手伝えないだろうか?」
「ブリアン様は茶器を運んでください。あ、ファーガス殿はテーブルを拭いて下さいね?」
「何で俺が?」
「テーブルなら……」
「美味しい朝食を早くいただくためですよ?」
「……わかった。」
「はーい!」
「すまない! 連れが怪我をして死にそうなんだ! ポーションがあったら売ってくれないか!?」
「だっ、大丈夫ですか!? 入って下さい! すぐハイポーションをお持ちします!」
「助かる! ありがとう」
父さん達のベッドはファーガスさんに貸しちゃってるから、ひとまずダイニングの床に横になってもらう。大急ぎでハイポーションを持って来て怪我人に飲ませた。うん、飲めて良かった。
「貴方もひどい怪我ですよ。こちらをどうぞ」
「ありがとう。!! 美味い! ハイポーション特有の粘つく渋みが全く感じられない!」
「そう言えば父があの渋みが嫌で、何とか打ち消せる様研究してました」
「父上が。君も薬師か?」
「はい。スイと言います」
「名乗りもせずに、失礼した。私はブリアン=レーンクビスト、レーンクビスト辺境伯の四男です」
お貴族様だったー!! しかも辺境伯って言ったら王族の次に偉いんじゃなかったっけ?
「どうした? 何があった?」
「ファーガスさん、起こしてしまってすみません。あの…… もし良かったらこちらのお二人に部屋を譲ってもらえますか? ファーガスさんはぼくのベッドを使って下さい」
「良いぞ。じゃ、一緒に寝るか」
「えっ!? いや、ぼくのベッド小さいですよ?」
「くっついて寝りゃいいだろ」
「ベッドを譲っていただく必要はない! 私たちはここで充分です。ファーガス殿はどうぞお部屋にお戻り下さい」
お貴族様を床に寝かせてぼくがベッドで寝るなんて無理!
「あのー……、お世話かけましてありがとうございます。ブリアン様も私も、床で充分ですから」
「コナン、気がついたか。このスイ殿がハイポーションを下さって助かったんだ」
「ありがとうございます! もう、坊ちゃんのお供もここまでかと思いましたが、まだ続けられそうです」
「坊ちゃんは止めてくれ」
歳は若そうなのに話し方が年寄りっぽくて笑ってしまう。
「お願いします。ファーガス殿と褥を共にするなど、やめて下さい」
「てめぇ、そんなんこいつの勝手だろうが!」
ん? 遠慮してるんじゃない……?
「スイ殿、私は貴方に一目惚れしました。どうか、私と結婚して下さい」
「「「えぇっ!?」」」
顔が地味すぎて勃たないと言われたぼくに一目惚れ? そんなバカな……。
「ぼく…… 酒場で…… その顔見たら萎えるって言われて…… だから……」
「そんな節穴の言葉なんて忘れちまえ! 俺はお前で勃つぞ。お前だって俺の身体見て興奮してたろ? ほら、素直に身を任せろって」
「そんな愚か者の言葉などなんの価値もない。私は貴方の優しさと愛らしいお顔に惹かれたんです。いきなり身を任せろなんて言いません。結婚して下さい!」
「そっちの方が重いんだよ!」
「貴方は下品です!」
なんか…… これって、モテてる? こんなかっこいい2人がぼくを取り合ってくれてるの? 夢? ぼくの妄想?
「スイ殿、ファーガス殿がいた部屋のベッドはどんなベッドですか? ダブルベッド1つかシングル2つか。」
「あ、シングル2つです」
「ならばブリアン様とファーガス殿がそちらのベッドで寝て、私はその部屋の隅で休ませていただきます。そうすればスイ殿はご自分のベッドで休めるでしょう」
申し訳なくて反論しようと思ったけど、それが1番のような気がして来た。コナンさんが2人のケンカも止めてくれるだろうし、怪我が治ったばかりだけど馴れてそうなのでお任せした。
……ちょっと残念。
**********
「おはようございます」
「えっ? あっ、おはようございます。お早いですね」
コナンさんがすでに起きていた。
「ハイポーションのお代は後ほどお支払いいたしますが、せめて何かお役に立ちたいと思いまして。何なりとお申し付け下さい」
「そんな! ぼくもたいした事してませんし、お気遣い無用です!」
「ではせめて水汲みだけでも。水瓶はこちらですか?」
「は、はい! 井戸は……」
コナンさんが呪文を唱え、空中に紋章を描いて最後に中心に指を差し込むと、空中に描かれた紋章が収束して指先に集まり、そこからキレイな水が流れ出た。
「コナンさんは水属性魔術師なんですか?」
「魔術師、と呼ぶには魔力が少な過ぎます。生活が便利になる程度ですよ」
「そうなんですか? 僕は召喚術師で、召喚獣に畑仕事を手伝ってもらってるんです」
「召喚獣が畑仕事を? それは見学させていただいてもよろしいですか?」
もちろん構わないので、一緒に薬草畑へ行った。
《大ちゃーん! モグラさん達ー! ネズミさん達ー! 今日もお願いねー!!》
僕の呼び声に反応してみんなが出て来た。僕にスリスリして朝の挨拶をしてから畑仕事だ。みんながそれぞれどう手伝ってくれているかを説明したんだけど、コナンさん何だかぼーっとしてて心ここに在らずって感じだった。まだ本調子じゃないのかな? 仕事が終わってご褒美に僕の魔力をあげていたら、ファーガスさんとブリアン様が起きて来た。
「ワーム!!」
「フィンディッシュ・モウル! レギオン・ラット!」
「「スイ! 逃げろ!!」」
「おはようございます。この子達はぼくの召喚獣だから大丈夫ですよ?」
「スイ…… そのワーム…… まさかエネリアン……」
「分かるんですか? 大ちゃんの名前、正式にはエネリアン・エミール・ワームって言うらしいんですけど、長いから大ちゃんて呼んでます」
「エネリアンの、しかもエミールかよ!!」
??? 何の事言ってるんだろう? 名前に意味でもあるの? 大ちゃんを見ると首を横に振って名前に意味はないって言ってる。
「はぁ、もうお前がすげぇのは分かった。昨日だって麒麟に乗せてもらったしな」
「麒麟!?」
「りんちゃんも凄いの?」
「「「はぁぁぁぁ……」」」
みんなして大きなため息ついて、何なの?
「スイ殿、『エネリアン』が高貴な、『エミール』が王を意味する言葉だと言う事はご存知ですか?」
「あれ? 聞いた事があるような……???」
ぼくはワームって名前の大きなミミズだと思ってたんだけど、どうやら大ちゃんは下位龍種のワームの中でも人の言葉が判る『エネリアン』と言うクラスで、その中でも『王』の称号を冠するSSランクの存在らしい。そしてモグラさん達もネズミさん達もA~Sクラスの魔獣。りんちゃんはSSSランクだったんだって。
「みんなすごかったんだね~!」
「それを使役するお前がすげぇよ!」
「ますます素敵です!」
なんか褒められたー! おいしい朝食作ってもっと褒めてもらいたいと思います!
「じゃあ、朝食ができたら呼びますので少しお待ち下さい。あ、お茶淹れましょうか?」
「お茶は私が淹れますから、朝食お願いします」
「私も何か手伝えないだろうか?」
「ブリアン様は茶器を運んでください。あ、ファーガス殿はテーブルを拭いて下さいね?」
「何で俺が?」
「テーブルなら……」
「美味しい朝食を早くいただくためですよ?」
「……わかった。」
応援ありがとうございます!
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