召喚農夫の田舎暮らし

香月ミツほ

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結婚しよう1

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ブリアンのお父さん…… お父上? お父様? に挨拶に行く事になって、着ていく服がない事に気づいた。慌てるぼくにブリアンが全部用意してくれると言うので、ちゃっかり甘える事にした。

そのかわり、これから必要になるポーションや解毒薬や食事は全部ぼくが用意する約束をした。結婚するんだから気にしなくて良いって言われたけど、できる事はしたい。

行った事のない高級なお店で仕立ててもらう事になった服は仮縫いに3日ほどかかると言う。で、そこから更に3日で完成。意外と早くできる物なんだー、と思ったらブリアンの位が高いから優先的に作ってもらえるんだって。

……家を出るって言ってるんだけど、良いのかな?

その辺はぼくがどうこう言える訳でもないので素直に甘える事にした。



「あのぅ……、仮装みたいじゃないですか?」
「似合ってる! 素敵だ……」

いかにもお貴族様然とした服は身体にフィットしているのに動きやすい。これが仕立てが良い、って事なのか。ごはんこぼしたらどうしよう!?

コナンさんが色々お世話焼いてくれて、ぼくの髪の毛がつやつやになった。挨拶の仕方も教えてくれた。



*********************



「父上、私の妻になる方をお連れしました」
「はじ……「ブリアン、隣国に嫁ぐのは3日後だ」

挨拶する間もなくとんでもないことを言われたーーーー!!
どう言う事?

「初耳です」
「今朝決まったんだ」
「お断りします」
「問答無用」

ブリアンの家族を悪く言いたくないんだけど、この人、むちゃくちゃだよ!

「初めまして! ブリアン様とはぼくが結婚します!」

ちゃんとした挨拶なんてしてやらない!!
ぼくは今までにない程怒っていた。

「ふん、なんだこの地味な子供は」
「ぼくはスイと言います! 地味なのはその通りですが子供じゃありません! ブリアンはぼくと結婚するんです!」
「何ができる?」
「父上…損得勘定ばかりがこの世の理ではありませんよ」

つまり、ぼくを売り込めば良いんだな。

「僕の家には温泉が湧いています!」
「ふん!」
「薬草を育てるのが得意です!」
「…ふん」
「ハイレアポーションも作れます!」
「む……」
「召喚獣もたくさんお友達です!」
「……ほう? なにが召喚できるのだ?」
「えぇと……」
「フィンディッシュ・モウルにレギオン・ラット、メザーリク・アント、ケルピー、エネリアン・エミール・ワーム、そして麒麟です」
「あ、ケルピーはコナンさんを気に入ったからコナンさんの召喚獣になりました」

お父さんもだけど、周りにいる人達も呆然としている。

あ、そっか。
コナンさんは召喚士じゃないから驚いているのか。

「召喚獣の方が気に入れば召喚士じゃなくても契約できるんですよ!」

「スイ……、驚いているのはそこじゃありません」
「え? そうなの?」
「普通の召喚士が召喚できるのは魔力の量や質によりますが1、2種類、多くて3種類です。フィンディッシュ・モウル、レギオン・ラット、メザーリク・アントなどは群れで1種類になりますが、ケルピー、エネリアン・エミール・ワーム、麒麟……、とこんなにもたくさん召喚できる人など聞いた事がありません」

衝撃の新事実!!

「ぼく、友達がいなくて子供の頃から召喚獣達に遊んでもらってたんだよ?」
「1番初めに友達になったのは?」
「大ちゃん! 畑仕事を手伝ってたら大ちゃんの子供の小ちゃんが怪我をしてて、ぼくが初めて作ったポーションで治してあげたら大ちゃんがお礼に来て友達になったの!」

「……ワームの子供……おそらく眷属でしょう。普通のミミズですか?」
「大ちゃんより小さいけど普通のミミズさんよりは大きいかな?これくらい」

両手を広げて軽く肘を曲げた大きさだと説明すれば、なんだかブリアンの笑顔が微妙。

「それが大ミミズですよ。ワームと比べて小さいから小ちゃんですか?」
「そうだよー! 大ちゃんより小さいから小ちゃん」

そっか。普通のミミズさんに比べて名前を付けるものなのか。ぼくはすぐに大ちゃんにあったから大ちゃんを基準にしちゃったんだね。(笑)

「そ、そうか。お主が我が息子の嫁たり得る資格がある事は分かった。では試験を受けてもらう。合格すればブリアンと隣国の貴族との結婚は取りやめ、お主との結婚を認めよう」

「試験? これだけの能力を持っているにも関わらず?」
「その召還獣すべてを見せろ。そして東の畑を復活させろ。それが試験だ」
「それならやります!」
「スイ、断ってもいいんですよ?」
「ぼく、ブリアンと結婚したいしお父様にも認めて欲しいからがんばる! それにぼくの得意な畑仕事で試験をしてくれるなんてお父様優しいね」
「優しいのはスイですよ」 

お父様が優しいかどうかはともかく、試験の畑を見に行った。
途中からは道もなくなっていて、歩いて1時間かかった。
ぼくとブリアンだけならリンちゃんに乗って行くんだけど、お父様とかその護衛とか執事とか侍従とかがぞろぞろついて来るんだもん。

「ここだ! この畑はかつてマンドラゴラも育つ豊かな畑だったのにいつからか不毛の地になり、今はこの通り荒れ地になってしまった。ここを豊かな畑に戻せるか?」

なんだかイヤな感じがする。
とても怒ってる感じがするんだよなー。

土の事は大ちゃんに聞こう。

「大ちゃーん! ここの畑、どうなってるのー?」

ぼこぼこぼこぼこっ!

呼べばすぐに顔を出してくれる大ちゃんに聞いてみると、大ちゃんがキラキラ光って人間の姿になった。大ちゃんてブリアンより華奢できれいで、頭にキラキラした飾りが……、あれ王冠なのかな?

『この地は我が眷属の怒りが染み込んでいる。守護者に剣を振るった者がいる』
「誰がそんな!?」

大ちゃんがすっと指差したのはお父様。

「知らん! 知らんぞ!! 何の事だ!?」
『十数年前、この地の守護をしていた我が眷属に小便をかけた上に剣を振るって傷付けた事を忘れたか』
「それって小ちゃん?」
『さよう。傷付けられ這々の体で辿り着いたところをスイが癒してくれたと聞き、礼に報いるべくそなたに会いに行き、そして我は契約を交わしたのだ』
「え? 契約? したっけ?」
『そなたを我が妃とし、生涯を幸多き者とするべく守る、と』
「「「妃!?」」」

「ぼく、大ちゃんのお嫁さんだったの?」
『うむ。だが我は人ではないゆえ、肉体的な満足を妃に与える事ができぬ。そこで我が認めた者を妻合わせたのだ』
「えーっと……、大ちゃんが選んだのはブリアン? ファーガスさん?」
『1人に絞る必要があったのか?』

人間の結婚観とは違うんだね。

「高貴なるワームの王よ、私をスイの伴侶として選んで下さった事に感謝いたします」
『うむ。我と共にスイを幸せに導いてくれ』
「ですが、王の眷属に剣を振るう愚かな者の息子ですが、よろしいのですか?」
『血の繋がりがないのだ。問題ない』

「「「…は???」」」

なんかものすごい爆弾発言が聞こえたんですけど? 
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