召喚農夫の田舎暮らし

香月ミツほ

文字の大きさ
上 下
16 / 32

領主夫人になる日まで2

しおりを挟む
「こいつは領主の嫁だぞ?」
「でも! 1度くらい抱いてもらえませんか?」
「何でそんなに魔力量増やしたいの?」
「それはもちろん、生活のためです!!」

男爵家の三男で独り立ちしないとなんだけど鈍くて剣士にはなれず、魔力量も少なくて魔術師にもなれない。

「商売人とか学者さんとか」
「無理です」
「農家とか漁師とか」
「虫も魚も怖い」
「職人さん」
「同じ事し続けるなんてつまんない」

とにかくやる気がないことは分かった。

「もうヒモになるか男娼になるかしかないだろ」
「ファーガスさん家庭教師でしょ?」
「やる気のない奴なんざ知るか。今日初めての授業で乗っかってきやがったんだぞ?」
「それは先生が格好いいからむしろヤル気が出たんです!」
「勉強しようよ」

さすがに呆れた。

「やる気のない奴に教える事はない。契約解除だ」
「そんなぁ……」
「スイ、行くぞ」
「? どこ行くの?」
「分かってんだろ」
「あん!」

抱き寄せられて服を整えたものの、収まりがつかず猛ったままのモノを押し付けられ、お尻を揉まれて感じちゃう。
教え子…… じゃなくて元・教え子を放置してぼくの寝室で昼間っからイチャイチャした。



おかしい。
ぼくが早いのはいつもの事だけど、いつもなら4回もイったらバテてしまうのにまだまだ足りない。

「何だ、今日は元気だな。」
「ん…… 何で、かなぁ? っはぁ、今は…… ムラムラが…… 治らない……」
「……ん? 今日は望月もちづきごうか?」
「そうだっ…… け?」
「確かそうだ。魔力量が多いと月の影響を受けるからな。2つの満月が揃うと色々影響が出てくる。くっ!」
「ふぁっ! あ…… あ…… あ…… 奥、熱いぃ……!! きゃぅっ!」

イって仰け反ったら乳首を吸われて更に深イキ。

「ファーガスさんも…… いつもよりおっきい?」
「そう、かもな」

って、イチャイチャしてたらブリアンが帰ってきた。

「おかえりなさい!」
「夕食の時間ですよ。ロルカンが声をかけられずに困ってました」
「……ごめんなさ…… あん!」
「ファーガス……」
「抜いただけで感じてるんだから仕方ないだろ」
「ブリアン、キスしてぇ……」
「どうしたんです?」
「望月の合だ」

なるほど、と納得して本気のキスをしてくれて、くったりしたぼくの身なりを整えてくれた。そして抱っこであーんでご馳走様でした。(笑) 

望月の合って大変だなー。(遠い目)
夜になったら大ちゃんとりんちゃんが乱入して5人で組んず解れつだったもんなー。

でもぼくが朝まで割と元気だったのも望月の合のおかげか。



********************



それから半月後、バタバタしながら迎えた収穫祭の日。
空は秋晴れ、爽やかな風が吹き、人々の笑顔は輝いている。

イェシム絹のタキシードはお揃いなんだけど、似合い方が全然違う。
ブリアンが憧れの王子様ならぼくは子供の成長祝い。いや、記念にそっくり人形作りました、って感じかな?教会から出る時はブリアンに抱っこされてたから余計にそう見えます。

ビティスの実が近年稀に見るできの良さで、しかも大豊作!
今年のビティスワインは伝説になるぞー! って町中が浮かれている。領主の結婚式が収穫祭なのもみんながお祝いできて嬉しいって言ってもらえて、頑張ってクッキー焼いた甲斐があるよね。

成人したての見目の良い男女が大きなタライでビティスを踏んでワインの仕込みをするんだけど、この辺りの結婚式の風習でぼくとブリアンが踏んで作る婚姻ワインも仕込んだ。

離婚したら全部開封して厄払いに使われるので、ぼく達が長く幸せでいる程、熟成が進んで高級になっていくワイン。目標は婚姻50周年だ。

伴侶に先立たれるとその相手を偲んで飲むんだって。

「ブリアン、このワインをぼく1人で飲むなんて嫌だからね」
「もちろんです。スイを寂しがらせたりしませんよ」
「まぁ、ブリアンが死んでも俺がいりゃ2人で飲めるぞ」
「やだぁ! 2人とも死んじゃやだぁ!!」

めでたい席でおかしな泣き方をするぼくを嬉しそうに抱きしめるブリアンとさっさとお酒を飲みに行ってしまうファーガスさん。珍しい料理に興味津々のぼくの両親は教会を出た後は見かけていない。

「結婚式に花嫁を泣かせるとはダメな婿だな」
「ブリアンが好きな子をいじめるタイプだったなんて知らなかったな」

「兄上達。私がいじめてるみたいな事を言わないでください」
「え? お兄さん達?」
「スイ、紹介します。長兄のジュディカエルと次兄のカーシー、それと奥様方です」
「初めまして。もっと早く来るべきだったが今日になってしまって申し訳ない。弟をよろしく頼む」
「初めまして。ぼくも遅くなってしまってごめんね? どうぞよろしく」
「は! 初めまして、スイです! こちらこそどうぞよろしくお願いします!!」

お兄さん達がとてもよい人そうで安心した。

「そのボタン、鋼蜘蛛の素材製だね?」
「え? そうなんですか?」
「そうですよ。たくさん手に入ったので贈り物の封とこの衣装のボタンに使って、残りは保管してあります」
「たくさん…… それ、僕にも分けてくれない? うちの奥さんにあげたいんだ」
「私にも!」

ぼくはもちろん構わないんだけど、交渉ごとはブリアンにお任せ。

「わたくし達は浮気などしませんよ?」
「他の方に靡くなんてあり得ませんわ」

めちゃくちゃ美人の奥さん達は…… 双子?

「すっっっっごい綺麗な人!!」
「「まぁ。可愛らしい方ね」」

びっくりして大きな声でちゃった。
お兄さん達もブリアンとは違う男らしい美形で目を引くけど、奥さん達は透けるような白い肌に輝くような黄金の髪、髪より少し濃い色の長いまつ毛に縁取られたパッチリとしたすみれ色の瞳。口元のホクロが右と左なだけの違い。まるで精霊みたい。

「大ちゃんやりんちゃんを見ていても、義姉上達は美しいですか?」
「大ちゃんはきれいだけど方向が違うって言うか……。りんちゃんは見た目子供だし」
「私たちの妻より美しい者がいるわけないだろう?」

上のお兄さんの言葉に下のお兄さんも頷いている。分かる。

「「わたくし達より美しい方なんてたくさんいると思いますわよ?」」
「「そんなはずはない!!」」

奥様方と旦那様方のやりとりがちょっと面白い。

「呼び出してやったぞ」
「え!? あ! 大ちゃん!! りんちゃん!!」

ファーガスさん、いつの間に大ちゃん呼び出せるようになったんだろう? りんちゃんもファーガスさんが呼んだの? お姉さん達がきゃっきゃしながら大ちゃん達を構ってる。あ、りんちゃんが可愛がられて抱きしめられている。

「……む、確かにそれなりに美しいな」
「でもうちの奥さん達の方がきれいだよね」

『スイ、今日も愛らしいな』
『この人達じゃま』

一足先にぼくを抱きしめる大ちゃんと、お姉さん達からジャンプで逃げてぼくに隠れるりんちゃん。そのジャンプで目立ってさらに注目を集めてしまい、人だかりができてしまった。

「スイ! 飲んでるか?」
「お? 誰だ?」
「ゴビネット様、セラド様! こちらはワームの王・大ちゃんと麒麟のりんちゃんです」

ワームと聞いてビクッとしたセラド様が大ちゃんを見てホッとしてる。仲良くしてね。 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

チェンジ

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

恋と鍵とFLAYVOR

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

傾国の王子

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:12

文化祭

青春 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

不撓不屈

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

狂愛アモローソ

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:5

もどかし遊戯

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

処理中です...