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七森高校入学
しおりを挟む4月といえば、出会いの季節。
入学や入社が多い時期であり、3月には別れだと言ってわんわん泣いていた人たちも4月にはニコニコと新しい環境に馴染む。
と、偉そうに言っているが俺、松尾太郎もその1人だ。
中学の卒業式では泣くことはなかったが少し寂しい気持ちになったものだ。しかし、いざ七森高校に入学するとそんな気持ちも忘れ新しい友人や先生との出会いを楽しんでいる。
俺を一言で表すなら「普通」だ。名前も普通、勉強も大体中位、運動もそこそこ、これと言った特技はない。ちなみに彼女もできたことはない。だが、普通に話す程度の友達は数人いる。
そんな普通な俺だからこそ、気楽に高校生活にも向き合っていけるものだ。
「太郎~、お疲れ!今日ももう帰るの?」
話しかけてきたのは中学の同級生、夏木流星だ。
流星とはそこそこ仲がいい。親友というわけではないが家が近いこともあり、よく一緒に帰宅している。
「今日も帰るよ。部活に入るつもりもないしな。」
俺は中学時代は美術部の幽霊部員だった。美術は観るのは好きだが描いたり造ったりするのは苦手だ。美術部は幽霊部員が暗黙のルールで認められていたため、部活に入っていた実績を作るためだけに入部した。
まあ、つまりあれだ。高校に入ってからは帰宅部でゆっくりしようって感じだ。
「流星は部活決めたのか?」
ふと気になり聞いてみる。
「ん?決めたよ!で、今日はその勧誘だよ!太郎、一緒にミステリ研究部に入らないかい?」
ミステリ研究部か、なかなかに面白そうな響きだ。
だが、俺は帰宅部になり高校生活の大半を家で過ごすと決めている。そういうポリシーってやつだ。
きっと歳を取ったら後悔するのかもしれないが今は自分の思う道を進みたい。男の子ってそんなもんだ。
「流星、悪いが」
「ちょっと待った!!」
断ろうとしたが流星がそれを遮るように、いやまさに遮ってきた。
「太郎が言うことは分かるよ。帰宅部になる!って高らかに宣言するのは何回も聞いたからね。」
そんな高らかに宣言した記憶はないが。
「ミステリ研究部とは言ったけどさ、まだ研究会なんだよ。ん?何が違うかって?学校から充てられる活動資金が変わってくるんだよね。で、ミステリ研究会が部に昇進するための条件が部員数なんだよ。」
「なるほどな。つまり数合わせで入部したらいいってことか?」
数合わせで、中学時代のように幽霊部員扱いでいいのであれば構わない。まあ、挨拶くらいは済ませないといけないだろうが、あちらも頼む立場だから強くは出てこないだろう。
「まあ、簡単に言うとそう言うこと!部員も2年生の部長と僕と今のところ2人だけだから気楽だよ~。ただ、月に1回だけは顔を出してもらうことになるけど。」
月に1回か。それくらいなら、、、ってちょっと待て。
「ちょっと待て、部員が3人になるだけでいいのか?もっとこう、研究会から部にってなると10人くらいいるイメージなのだが。」
てっきり10人、もしくは20人で部になるものだと思った。3人ってそれはそれで気まずいような。
「んー、そこは色々学校でも規定があるみたいでね。存続してる年数とかでかなーり甘く見てもらってるみたいだよ。あとはまあ部長のコネとか?」
コネと言いながら楽しそうに流星は笑っている。
「月一回くらいなら、まあ分かった。友達として入部してやる。貸し1つだぞ。」
「わあ!さすが親友の太郎くん!貸しなんて何個でも作ってくれよ!」
「お前に親友は何人いるんだよ。」
呆れながらも流星のこう言うところは嫌いじゃない。
「さあ!太郎!早速入部届書いてから部室にレッツゴーだよ!」
なんと入部届も準備していたらしい。ご丁寧に俺の名前を代筆して。
おい、流石に代筆はまずいだろ。
まあ、流星がやりそうなことではあるが。
「分かった。じゃあ行こう」
帰宅部でというポリシーは早速折れたがまあ流星とその部長さんを助けるためなら悪くないかな?そう思いながら俺はミステリ研究会、改めミステリ研究部の部室へ連れて行かれるのだった。
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