パラレルワールド桃太郎

伊崎夢玖

文字の大きさ
5 / 11

桃太郎、真実を語る

しおりを挟む
「おい、桃太郎」
「どうしました?フェンリルさん」
「何で俺たちを選んだんだ?」
「どういうことでしょう?」
「フェンリルさんと自分は選ばれたのは分かるんです。どうして猿さんなんでありますか?」
「それは僕も聞きたいですウキ」
「聞いても怒りませんか?」
「あぁ」
「もちろん」
「はい」
「実は…」

桃太郎は選出した時の状況を簡潔に三匹に説明しました。

「なるほどな」
「納得したであります」
「申し訳なさがすごいウキ…」
「すみません…。でも、この時代にフェンリルとフェニックスって存在していたんですね。架空の生物だとばかり思っていました」
「俺は先祖から進化したと聞いている」
「自分もであります」
「進化ですか?」
「俺の先祖は犬だった」
「自分の先祖は雉でありました」
「猿さんは進化しなかったんですか?」
「猿の進化先は人間になるらしいので、俺は進化できないと聞いていますウキ」
「おしゃべりはここまでにしないといけないようだぜ」
「この先に敵が複数いるであります」
「では肩慣らしに少し運動しましょうか」
「がんばりましょうウキ」

察知能力に長けているフェンリルとフェニックスによってずっと先にいる敵の潜伏場所を特定し、うまく退治することができました。
猿を除いて。
フェンリルとフェニックスはそれぞれの体の特徴を有効に使って敵をバタバタと倒しました。
桃太郎もお爺さんが買ってくれた剣で二匹には遠く及ばないまでも、自分の身を守るくらいはできました。
ただ猿はあまりに非力で、小石を投げつけて逃げることしかできません。
結局全てが終わるまでずっと木の上で震えて小さく丸まっていました。

「おい、猿。終わったぞ」
「本当ですかウキ?」
「もう敵はこの周りにはいないであります」

フェンリルとフェニックスの言葉を信じて木の上からゆっくり下りてきました。

「皆の力になれなくて申し訳ないですウキ」
「猿さんは弱いから隠れてくれていいですよ」
「俺とフェニックスがほとんど倒したがな」
「自分の方が若干多く倒したでありますな」
「なんだと!?」
「事実であります」

ぎゃいぎゃい、とフェンリルとフェニックスが言い争いを始めた脇で猿が申し訳なさそうに桃太郎に近づきました。

「桃太郎さん、僕はここでこのパーティーから離れた方がいいと思うのですが…」
「どうしてですか?」
「僕が皆さんの足を引っ張っていると思うのです」
「そんなことありませんよ」
「そうでしょうか?」
「猿さんには猿さんしかできないことをやればいいのです」
「僕にしかできないこと?」
「そうです。私には私にしかできないことがあります。フェンリルさんとフェニックスさんも、それぞれにしかできないことがあります。それを精一杯やればいいだけなのです」
「…分かりました。やってみます」
「その調子です。ちょっと、いつまで言い争っているのですか。さっさと行きますよ」
「オーガ退治の時にどっちが多く勝負だ」
「臨むところであります」

オーガの潜伏先である鬼ヶ島までの道中、何度も敵との戦闘になりました。
その度に猿は一匹だけ皆から離れた場所で待機し、戦闘が終わって迎えが来るのをただひたすら待ちます
元々戦闘に向いていない優しい性格をしているのも相まって、このパーティーにいることに心苦しさを抱えていたが、それを口にすることはありませんでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生妃は後宮学園でのんびりしたい~冷徹皇帝の胃袋掴んだら、なぜか溺愛ルート始まりました!?~

☆ほしい
児童書・童話
平凡な女子高生だった私・茉莉(まり)は、交通事故に遭い、目覚めると中華風異世界・彩雲国の後宮に住む“嫌われ者の妃”・麗霞(れいか)に転生していた! 麗霞は毒婦だと噂され、冷徹非情で有名な若き皇帝・暁からは見向きもされない最悪の状況。面倒な権力争いを避け、前世の知識を活かして、後宮の学園で美味しいお菓子でも作りのんびり過ごしたい…そう思っていたのに、気まぐれに献上した「プリン」が、甘いものに興味がないはずの皇帝の胃袋を掴んでしまった! 「…面白い。明日もこれを作れ」 それをきっかけに、なぜか暁がわからの好感度が急上昇! 嫉妬する他の妃たちからの嫌がらせも、持ち前の雑草魂と現代知識で次々解決! 平穏なスローライフを目指す、転生妃の爽快成り上がり後宮ファンタジー!

瑠璃の姫君と鉄黒の騎士

石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。 そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。 突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。 大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。 記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。  大事なのは最後まで諦めないこと——and take a chance! (also @ なろう)

悪女の死んだ国

神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。 悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか......... 2話完結 1/14に2話の内容を増やしました

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

処理中です...