いばら姫

伊崎夢玖

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強姦

第十話

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桃と約束した一週間後がやってきた。
保の大仕事は桃が休みの間に全て決着がついた。
桃はそのことを何も知らない。
一週間ぶりに桃に会えることを保は楽しみにしていた。
少し早いが、桃の家の門の前に到着した。
既に桃が門の前で待機していた。
「おはよう、桜井」
「おはよ、久世」
「外で待ってなくても、到着したら呼び鈴押すつもりだったんだが…」
「家族に知られたくなかったから…」
「そうか。すまん」
「謝んなよ。調子狂う」
「そうか。すまん」
「…ふふふ」
「あっ…」
「もういいよ。病院連れてってよ」
「そうだな。乗ってくれ」
前回はあまりに必死すぎて車をかなり荒い運転でぶっ飛ばしていたが、今回は安全運転で病院まで行った。
検査は前回行ったものと同じ項目で、結果は全て良好だった。
堕胎後の様子も良好とのことだった。
「明日から学校だが、ちゃんと行けるか?」
「大丈夫だよ」
「クラスに行けるか?」
「大丈夫だよ。久世、気にしすぎだって」
「気にするだろ、普通」
「そういうもんなの?」
「さぁ?他の人がどうか分からんが、少なくとも俺は気にする。養護教諭だからな」
「そっか。ありがと」
「礼には及ばん」
「誰かに気にしてもらうのなんて、久々すぎてどうしていいのか自分でも分かんない」
「家族とか気にしてくれないのか?」
「あたしがオメガだって分かってから、離れに移されて、誰も会わなくなっちゃった」
「両親も?」
「うん。全部離れで済ませられるようにって台所もお風呂も付いてる」
「ご飯は?」
「自炊してるよ」
「すごいな」
「すごくないよ。普通。誰でもできるでしょ?」
「俺はできん」
「あぁー確かに。久世は食べる専門っぽいもんね」
「基本外食で済ませてしまうからな。桜井はいい嫁さんになるな」
「嫁の貰い手あるのかな…」
「ちゃんとご飯作れる奴が売れ残るはずないだろ」
「こんな汚れた身なのに…」
「自分を貶めるようなこと言うな」
「だって…」
桃の目に涙が浮かんだ。
あのつらい時間を思い出させてしまった。
保はこういう時どう話を転換させればいいのか分からなかった。
「桜井、車に乗れ」
「はぁ!?」
「ドライブ行くぞ」
「えぇー………ご飯も行きたい」
「飯食ってから行くか」
「うん」
桃を車に乗せ、保は車を走らせた。
ご飯は桃がリクエストしたイタリアンのおいしい店で堪能した。
満腹になったところで、海へ出た。
辛い気持ちをどう紛らわせればいいのか分からず、とりあえず海だろうと保は思った。
「到着だぞ」
「海、久しぶり。気持ちいい」
「そんなに来てないのか?」
「小学生の頃に来たかな?」
「随分久々なんだな」
「うん。あの頃は両親とも優しかったから」
「うん」
「今は全然関心すら寄せて来なくなったよ」
「何かあったのか?」
「あたしがオメガって分かってから変わっちゃった」
「桜井の家は皆アルファだもんな」
「うん。判定結果の日を境に、両親共あたしがいないものとして生活を始めたの」
「お手伝いさんや執事さんしか相手にしてくれないのか?」
「うん。彼らも必要最低限以上の接触はしない」
「桜井専属の担当の人がいるだろ?」
「いるけど、たぶん両親から必要以上に接するなって言われてるんだと思う」
「うん」
「腫れ物に触るみたいに皆接してくるから息が詰まりそうになる」
「辛いな」
「勉強でがんばっても、派手な格好しても全然ダメだった…」
「うん」
「どうやれば関心持ってもらえるかな?」
保の胸に桃がすり寄ってきた。桃は既に泣いていた。
桃は寂しかったのだ。
誰かに愛してもらいたい。誰かに愛されたい。
そういう欲求が爆発して今の桃が出来上がってしまった。
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