いばら姫

伊崎夢玖

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自殺未遂

第二十五話

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病院に到着し、処置室へ向かう。
廊下の椅子に執事が待機していた。
「桃さんの容体に変化は?」
『ございません。意識不明のままです』
「目を覚ますまで側にいさせてもらってもいいですか?」
『桃お嬢様のご両親に代わってお願い申し上げます』
「目を覚ましたら電話をもらった時の番号に連絡すればいいですか?」
『はい。よろしくお願い致します』

執事と廊下で別れ、保は処置室に入った。
そこには青い顔をした桃が横たわっていた。
桃の頬に触れる。
少し前に触れた時は温かかった。
それなのに今は氷のように冷たい。
手にも触れてみる。
やはり冷たい。
保は怖くなって、桃の手をぎゅっと握りしめる。
自分の体温を分け与えるかのように。
触れる所全てが冷たい。
このまま死んでしまうのではないか。
不安に駆られる。
桃の左手首の傷は、思った以上に深く切れており、動脈を切断していた。
一度だけ切ったのでなく、何度も同じ箇所を切ったとのこと。
それ故に動脈まで到達したようだった。
発見があと十分も遅いと命も危なかったらしい。
血液が足りないので、今輸血をしている。
それで持ち堪えてくれればいいのだが、もしもの場合がある。

血圧も測定しているが、なかなか上がってきてくれない。
担当医が桃の状態を確認し、看護師に何か指示している。
看護師が何か薬剤を入れようとしたので、説明を乞うと昇圧剤だと言う。
これでもう少し様子を見るとのこと。
保は神頼みなど普段は絶対しないが、今だけは神頼みをした。
(神様!まだ桃を連れて行くのだけは止めてくれ)
(桃が助かるためなら何だってやるから、桃を助けてくれ!)

夜が静かに明けた。
桃は起きない。
太陽が昇ってきて、病室に日が射す。
朝日が桃の顔を照らす。
それでも桃は起きない。
「なぁ?桃。朝だぞ?学校行かないといけないんだろ?起きろ?」
そう言いながら桃の頬に触れる。
(あんなに手も握っていたのに冷たいまま…)
桃に触れる所全てが冷たいままだった。
定期的に看護師が見回りに来る。
まだ予断を許さない状況であることに変わりないそうだ。
保は学校に連絡し、しばらく休むと伝えた。
こんな状況で仕事が手につくはずなかった。
というより、桃の側を離れたくなかった。
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