いばら姫

伊崎夢玖

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受験

第三十一話

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保は持っているスーツの中で一番高い物を着て、桃の両親に会うために料亭へ来ていた。
まだ桃の両親は来ていなかった。

保が到着して二十分、桃の両親が到着した。
「本日はお忙しい中、お時間を作っていただき誠にありがとうございます」
『とんでもない。それで、いきなり本題なのですが…』
「桃さんを私の嫁として頂くわけには参りませんか?」
『娘をですか…?』
「十年前に初めてお嬢さんに会ってから、とても気に入りまして…。是非に私の嫁として迎え入れたいのです」
『それは勿体無いお言葉ですが、他家からも同じようなお話を頂いておりまして…』
「左様でございますか…」
『うちの状況をご存知ですか?』
「それはもちろん存じております。もし、婚約させて頂けるのでしたら、融資の件も他家の三倍はさせていただきます」
『本当ですか!?』
「本当です。即日お支払い致しましょう」
『世間知らずの愚女ではございますが、こちらこそよろしくお願いします』
「ありがとうございます。もう一点お願いがありまして…」
『何でしょう?』
「桃さんを大学に進学させていただきたいのです」
『ですが、うちには進学させるだけの余裕が…』
「分かりました。学費は私が持ちます。それでいかがでしょうか?」
『そういう事でしたら、構いません』
「ありがとうございます。あと、私との婚約の件は内密にお願いします」
『何故です?』
「学校関係者に婚約者がいるとお互い居辛いですから…」
『そうですね。分かりました。卒業するまで極秘にさせていただきます』
「よろしくお願いします」
融資の件を出せば婚約の件はまとまると確信していた。
桃は物ではない。
本当はこんなことしたくなかった。
だが、他家に持っていかれるわけにもいかなかった。
藤堂のような輩に取られるくらいなら自分の物にしたかった。
(結局は藤堂のことを糞のように言ったが、俺も同じか…)
結局は桃を守ると言いながら、桃を物として売買したことに代わりなかった。
桃自身も守りたかったが、保は桃の夢も守りたかった。
『将来の夢がある』と言った桃の顔はやる気に満ち溢れていた。
あの笑顔を守りたい。
そのための婚約でもあった。
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