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婚約
第四十三話
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見合いと言う名の顔合わせは無事終了し、正式に婚約することとなった旨を両家へ報告するためにまず久世家へ二人で訪れた。
『それじゃすぐにでも式の準備をしないとね』とあれこれ決めてしまう気の早い保の母の言葉でタジタジになった桃を保はかわいいと思いながら、様子を見ていた。
「母上、申し訳ないのですが、式はもう少し先にしたいと思っております」
『何故?婚約が正式に決まったなら、すぐにでも式を挙げましょう?』
「先に籍だけ入れてしまおうと思っています」
『どういうこと?』
「桃さんは四月から大学生。学校生活において、途中で苗字が変わるより最初から変わっている方が手続きとかが楽かと思いまして…」
『それもそうね。すぐにでも籍入れてきちゃいなさい』
久世家からは受け入れてもらえるようで、桃は隠れて胸を撫で下ろした。
次に桜井家に向かった。
桃は少し緊張しているようだった。
「正式に婚約することになりましたので、ご報告に参りました」
『分かりました。世間知らずな愚女ではございますが、よろしくお願いします』
『桃、あなたは少し部屋へ行っていなさい』
「…?…分かりました」
桃は席を外すよう言われ、素直に席を外した。
(だが、このお転婆娘はきっと隠れて聞き耳を立てているに違いない)
保の考えは当たりだった。
ドアから桃の気配がする。
(どうせ融資の話を始めるんだろうな…)
案の定融資の話を桃の父は始めた。
(おいおい…娘がドアの向こうで聞いているの知ってて話すのかよ…)
(あとが面倒だな…)
そう思いながらも、融資の話を続けた。
『正式に婚約するということですので、融資の話は…』
「もちろん忘れていません。明日にでも、融資させていただきます」
『ありがとうございます』
ドアの向こうでバタバタと走り去る音がした。
(全部聞いたな…泣いてるだろうな…)
「すみません。今の話を桃さんが聞いていたようなので、様子を見てきます」
桃の両親に断りを入れ、桃の部屋である離れに向かう。
『それじゃすぐにでも式の準備をしないとね』とあれこれ決めてしまう気の早い保の母の言葉でタジタジになった桃を保はかわいいと思いながら、様子を見ていた。
「母上、申し訳ないのですが、式はもう少し先にしたいと思っております」
『何故?婚約が正式に決まったなら、すぐにでも式を挙げましょう?』
「先に籍だけ入れてしまおうと思っています」
『どういうこと?』
「桃さんは四月から大学生。学校生活において、途中で苗字が変わるより最初から変わっている方が手続きとかが楽かと思いまして…」
『それもそうね。すぐにでも籍入れてきちゃいなさい』
久世家からは受け入れてもらえるようで、桃は隠れて胸を撫で下ろした。
次に桜井家に向かった。
桃は少し緊張しているようだった。
「正式に婚約することになりましたので、ご報告に参りました」
『分かりました。世間知らずな愚女ではございますが、よろしくお願いします』
『桃、あなたは少し部屋へ行っていなさい』
「…?…分かりました」
桃は席を外すよう言われ、素直に席を外した。
(だが、このお転婆娘はきっと隠れて聞き耳を立てているに違いない)
保の考えは当たりだった。
ドアから桃の気配がする。
(どうせ融資の話を始めるんだろうな…)
案の定融資の話を桃の父は始めた。
(おいおい…娘がドアの向こうで聞いているの知ってて話すのかよ…)
(あとが面倒だな…)
そう思いながらも、融資の話を続けた。
『正式に婚約するということですので、融資の話は…』
「もちろん忘れていません。明日にでも、融資させていただきます」
『ありがとうございます』
ドアの向こうでバタバタと走り去る音がした。
(全部聞いたな…泣いてるだろうな…)
「すみません。今の話を桃さんが聞いていたようなので、様子を見てきます」
桃の両親に断りを入れ、桃の部屋である離れに向かう。
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