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婚約
第四十四話
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「桃ぉー、入るぞ?」
「入らないでっ!」
やっぱり桃は泣いていた。
「さっきの話、聞いていたんだな」
「聞いてないもんっ!」
「じゃぁ、何で泣いているんだ?」
「目にゴミが入ったからっ!」
「頼むから入れて話を聞いてくれないか?」
「嫌っ!」
相変わらずの意地っ張り姫である。
「じゃぁ、このまま皆に今から話す事を聞かれてもいいんだな?」
「それも嫌っ!」
「じゃぁ、開けてくれないか?」
「………………」
ドアが開いた。
桃は走って自分の部屋に入る。
保も桃の後を追って部屋に入る。
逃げようとした桃を捕まえて、後ろから抱きしめる。
「離してよっ!」
「嫌だ」
「どうせ先生だって、あたしを買ったんでしょ!」
「そうかもしれないけど、そうじゃない」
「言ってる意味分かんない。あたしじゃないとダメとか、よく作り話言えたよね」
「作り話じゃない」
「じゃぁ、さっきの話何よ!」
「とりあえず落ち着いてくれ」
「落ち着いてるもん!」
桃の興奮はどんどんエスカレートしていく一方だった。
(これは今何を話しても無駄だな…)
保はそう思い、自分の胸に桃を強く抱きしめた。
ずっと泣いている桃も、時間が経つにつれて泣くことを止め、落ち着きを取り戻していた。
(そろそろ頃合いかな)
保は先程桃の父親と話していた内容を桃に打ち明けることにした。
「少しは落ち着いたか?」
「最初から落ち着いてるもん」
「泣きじゃくってたくせに」
「うるさいし…」
「さっきの融資の話だけど、端的に言うと、桃を買った」
「…やっぱりっ!」
「まだ続きがあるから聞け。藤堂のこと覚えてるか?」
「…うん」
「あいつも融資の件を持ちかけて桃との結婚に漕ぎつけたんだ」
「あたしと婚約したいって人は皆そうだもん」
「俺は本当に桃が好きだ。藤堂みたいなクズ野郎に桃を持って行かれたくなかった。だから桃の両親に融資の件を持ちかけて結婚させてくれって頼んだんだ」
「それで先生もあたしを買ったんだね」
「確かに、俺は桃を買ったことになる。だけどそれは桃を俺自身の手元にずっと置いておきたかったから。誰にも取られたくなかった。誰にも触れてほしくなかった。俺だけが触れていたいし、俺に触れてほしかった。どうしても桃を独占したかったんだ…。こんな独占欲に塗れた汚い大人の元に嫁に来るのは嫌になったか?」
「………………」
「…………桃?」
「先生って独占欲強いんだね」
「当たり前だろ。桃に近づく奴がいないかチェックするためにいつも探し歩いていたんだからな」
「そうなの?」
「だから割と俺が近くにいる感じしただろ?」
「うん。いつも見つけられるからすごい嫌だった」
「それは知ってる。見つけた時すごく嫌そうな顔してたから」
「そんなに顔に出てた?」
「出まくりだった」
「マジかぁ…」
「マジだ」
「あたしね、先生の事好きだよ。先生のお嫁さんになりたい。買われたのは正直ショックだった。『先生もかぁ…』って思った。だけど、それはあたしを思っての行動だったんだよね?それだけあたしを好きでいてくれてるってことだもん。そんな人を嫌いになれるわけないよ」
「桃…」
「先生、お願いあるの」
「何だ?」
「合格祝いに、大人のキスして」
「大人のキス?」
「…………………舌絡めるキス」
顔を真っ赤にして俯いてお願いする桃。
そんな桃を愛おしく思う保。
保は俯いている桃の顎をクイッと持ち、上を向かせる。
バチッと目が合い、真っ赤なままの桃は目を泳がせ、静かに閉じる。
静かに顔を近づけ、唇を重ねる。
最初は触れるだけのキス。
少し慣れてきたと思う頃に保は舌で桃の閉じている唇をペロリと舐めた。
ビクッと体が震えた桃だが、保の思いを察知し、唇を開け、舌を向かい入れる。
舌先で歯列をなぞり、舌同士を絡める。
溢れる唾液が飲み込めず、桃の口の端から零れ落ちた。
どれだけ長い時間キスしていたのだろうか。
桃は先程までの真っ赤な顔から上気した顔に変化しており、息が上がっている。
目の焦点が合わず、ボォーッとしている。
「桃?」
「ふぇ?」
「大丈夫か?」
「うん。大人のキスすごいね」
「大人だからな。そのうち慣れるさ」
「慣れるかな?」
「俺が慣れさせてやるから安心しろ」
「うん」
誤解から始まった二人の最初の試練は話し合うことで解決した。
そして、このキスで絆が強固なものへと進化したのだった。
「入らないでっ!」
やっぱり桃は泣いていた。
「さっきの話、聞いていたんだな」
「聞いてないもんっ!」
「じゃぁ、何で泣いているんだ?」
「目にゴミが入ったからっ!」
「頼むから入れて話を聞いてくれないか?」
「嫌っ!」
相変わらずの意地っ張り姫である。
「じゃぁ、このまま皆に今から話す事を聞かれてもいいんだな?」
「それも嫌っ!」
「じゃぁ、開けてくれないか?」
「………………」
ドアが開いた。
桃は走って自分の部屋に入る。
保も桃の後を追って部屋に入る。
逃げようとした桃を捕まえて、後ろから抱きしめる。
「離してよっ!」
「嫌だ」
「どうせ先生だって、あたしを買ったんでしょ!」
「そうかもしれないけど、そうじゃない」
「言ってる意味分かんない。あたしじゃないとダメとか、よく作り話言えたよね」
「作り話じゃない」
「じゃぁ、さっきの話何よ!」
「とりあえず落ち着いてくれ」
「落ち着いてるもん!」
桃の興奮はどんどんエスカレートしていく一方だった。
(これは今何を話しても無駄だな…)
保はそう思い、自分の胸に桃を強く抱きしめた。
ずっと泣いている桃も、時間が経つにつれて泣くことを止め、落ち着きを取り戻していた。
(そろそろ頃合いかな)
保は先程桃の父親と話していた内容を桃に打ち明けることにした。
「少しは落ち着いたか?」
「最初から落ち着いてるもん」
「泣きじゃくってたくせに」
「うるさいし…」
「さっきの融資の話だけど、端的に言うと、桃を買った」
「…やっぱりっ!」
「まだ続きがあるから聞け。藤堂のこと覚えてるか?」
「…うん」
「あいつも融資の件を持ちかけて桃との結婚に漕ぎつけたんだ」
「あたしと婚約したいって人は皆そうだもん」
「俺は本当に桃が好きだ。藤堂みたいなクズ野郎に桃を持って行かれたくなかった。だから桃の両親に融資の件を持ちかけて結婚させてくれって頼んだんだ」
「それで先生もあたしを買ったんだね」
「確かに、俺は桃を買ったことになる。だけどそれは桃を俺自身の手元にずっと置いておきたかったから。誰にも取られたくなかった。誰にも触れてほしくなかった。俺だけが触れていたいし、俺に触れてほしかった。どうしても桃を独占したかったんだ…。こんな独占欲に塗れた汚い大人の元に嫁に来るのは嫌になったか?」
「………………」
「…………桃?」
「先生って独占欲強いんだね」
「当たり前だろ。桃に近づく奴がいないかチェックするためにいつも探し歩いていたんだからな」
「そうなの?」
「だから割と俺が近くにいる感じしただろ?」
「うん。いつも見つけられるからすごい嫌だった」
「それは知ってる。見つけた時すごく嫌そうな顔してたから」
「そんなに顔に出てた?」
「出まくりだった」
「マジかぁ…」
「マジだ」
「あたしね、先生の事好きだよ。先生のお嫁さんになりたい。買われたのは正直ショックだった。『先生もかぁ…』って思った。だけど、それはあたしを思っての行動だったんだよね?それだけあたしを好きでいてくれてるってことだもん。そんな人を嫌いになれるわけないよ」
「桃…」
「先生、お願いあるの」
「何だ?」
「合格祝いに、大人のキスして」
「大人のキス?」
「…………………舌絡めるキス」
顔を真っ赤にして俯いてお願いする桃。
そんな桃を愛おしく思う保。
保は俯いている桃の顎をクイッと持ち、上を向かせる。
バチッと目が合い、真っ赤なままの桃は目を泳がせ、静かに閉じる。
静かに顔を近づけ、唇を重ねる。
最初は触れるだけのキス。
少し慣れてきたと思う頃に保は舌で桃の閉じている唇をペロリと舐めた。
ビクッと体が震えた桃だが、保の思いを察知し、唇を開け、舌を向かい入れる。
舌先で歯列をなぞり、舌同士を絡める。
溢れる唾液が飲み込めず、桃の口の端から零れ落ちた。
どれだけ長い時間キスしていたのだろうか。
桃は先程までの真っ赤な顔から上気した顔に変化しており、息が上がっている。
目の焦点が合わず、ボォーッとしている。
「桃?」
「ふぇ?」
「大丈夫か?」
「うん。大人のキスすごいね」
「大人だからな。そのうち慣れるさ」
「慣れるかな?」
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「うん」
誤解から始まった二人の最初の試練は話し合うことで解決した。
そして、このキスで絆が強固なものへと進化したのだった。
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