いばら姫

伊崎夢玖

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結婚

第四十七話

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数日後、式の打ち合わせのため、桃を拾って式場視察に向かった。
式場は教会式、神前式、仏前式、人前式全てのタイプができるかなり大規模な式場だった。
選んだのは桃だが…。
両家の意向で、式は神前式となっていた。
打ち合わせはスムーズに進み、終わる頃には昼を過ぎていた。
(スムーズに進んでいるようだが、結構時間かかるなぁ…)
保の方は退屈なようで、意識は別のところに向いていた。
(おっ、教会式だとあんな感じか…)
(桃のウエディングドレス姿が見たかったなぁ)
(着物も捨てがたいが、やっぱりドレスだよな…露出高めのやつで…)
「先生、聞いてる?」
突然桃に呼ばれ、邪な考えをしていた保は少しばかり動揺してしまった。
「ご、ごめん。何の話だ?」
「衣装の話。綿帽子と角隠し、どっちがいいかな?」
「そうだな…桃はどっちがいいと思うんだ?」
「どっちも…選べないから先生選んで?」
「んー、綿帽子の方がいいんじゃないかな?」
「それじゃ、綿帽子の方でお願いします」
桃は楽しそうにスタッフと話している。
(嬉しそうで何よりだ)
保はスタッフと話す桃を見て微笑んだ。
打ち合わせも終わり、桃を家まで送り届けると家に上がれと言う。
どうも、桃の父親が話があるとか…。
(どうせ金の話だろうな…)
門扉をくぐり、エントランスで執事に車を預け、桃の父親が待つ応接室に向かった。
話の内容は思った通りの金の話。
(そもそもその経営じゃ、いつまで経っても回復するわけねぇ…)
桃の家の経営が傾き始めたのは、桃の父親が社長になってからだった。
桃の父親は壊滅的に経営が下手だった。
保は融資の件は保留ということにさせてくれと言ってその場を切り抜けた。
(式が終わったら経営乗っ取ってやる)
水面下で桃の家の会社の買収の話が動いていた。
買収が終われば、桃の父親は社長職から失脚させるつもりだった。
社長職に残しても経営については任せるつもりは毛頭ない。
保は応接室を出た足で足早に桃の部屋に向かった。
(桃が足りない…補充しないと…)
桃の部屋に着くと、桃は部屋着に着替えて迎えてくれた。
(今日の桃の部屋着、かわいいなぁ)
そう思っていると、無意識に桃を抱きしめていた。
桃の首元に顔を埋め、スンスンと桃の匂いを嗅ぐ。
それがくすぐったいのか、桃が身じろぎをする。
「先生、匂い嗅がないでよ。変態っぽいよ?」
「別にいいだろ?」
「くすぐったいんだもん」
「我慢しろ…」
くすぐったがりながらも、桃は保の背に腕を回していた。
保は桃の匂いを堪能すると、桃を離した。
「ごめんな」
「ううん。父の話、そんなに精神的にダメージ受ける話だった?」
「まぁな…」
(何で俺が精神的に疲れてるって知ってるんだ?女の勘ってやつか?)
保は桃を侮れないと思った。
部屋に上がると、桃はコーヒーを出してくれた。
「打ち合わせとか慣れないことだらけで疲れただろうから少し休んでいってよ」
「ありがとな」
ふとローテーブルに目が行った。
そこには分厚い本が一冊置かれていた。
厚みからいうと、この間桃が一人で買いに行った本だろう。
表紙だけ覗き見る。
結婚情報誌だった。
(やけに詳しいと思ったらそういうことか)
保の中で合点がいった。
「お砂糖切らしてたから母屋でもらってくるね。少し待ってて」
「おう」
桃が部屋から出て行ったのを確認して、本のページをパラパラとめくる。
付箋がびっしりと付いている。
付箋のページはウエディングドレスのページばかりだった。
(やっぱりウエディングドレス着たいよな)
本を元に戻し、何事のなかったかのように装い、桃の帰りを待った。
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