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4 魔力補充
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「アリア」
音もなく現れるイミュ。いつものことなのだが、相変わらず心臓に悪い。
「イミュ、いつもいつも……っ、なに?」
文句を口にすれば、口を押さえられる。ジッとイミュを見つめると、不機嫌そうな瞳とぶつかった。
「アリアはあぁ言うのがお好みですか?」
「急に、どうしたの?」
「私を騙せるとでも?」
「……別に、久々に触れられて話せる人間だったからちょっと特別だっただけ」
不服そうな表情をするイミュに、もう寝るから、と布団に潜り込むと、イミュも隣にモゾモゾと侵入してくる。
ちょっ……、と抗議の声をあげると「魔力の補充をしてください」と耳元で囁かれた。
性的なものを匂わしてくるイミュとは所謂そういう関係ではないのだが、主人を想う嫉妬故か、はたまたある意味片割れという存在だからか、しばしば人間染みた執着をアリアに見せる。
「……ちょっとだけだよ」
チュッと啄むように口付ける。イミュはまだ足りないとでもいうように、アリアの後頭部を押さえて追いかけるように深く唇を合わせてきた。
「……ん、イミュ……。アレスもいるんだから……っ」
「アリアが声を出さねばいいんですよ」
自分に合わせた白銀の髪が顔にかかる。イミュのアメジストのような瞳は欲に眩んで澱んでいた。
「それとも、その綺麗な声が出る唇を常に塞いでおきましょうか?」
「もう、ふざけないで……っ」
強く抵抗するとイミュがスッと身体を離す。すると、みるみるうちにいつもの容姿から変化していき、そこにはアレスに瓜二つの存在が。
「これなら文句はないでしょう?」
「イミュ……!」
「アレスと呼んでも構いませんよ?アリア……」
先程の彼のような振る舞いをするイミュ。不覚にも戸惑ってしまったアリアに追い打ちをかけるように、あの金髪碧眼というまさに憧れの王子様の容姿でニッコリと微笑まれる。
「アリアが絵物語の王子様に憧れていることなど、百も承知なのですよ。だから、あの男に多少なりとも惹かれているのでしょう?でなければ、人嫌いの貴女がここまでするわけがない。私を誰だとお思いですか?貴女の片割れであり、使い魔ですよ」
痛いところを突かれて、動きが鈍る。付き合いが長いイミュにバレないわけがないと分かりながらも、自分の下心を見透かされて恥じ入る。その隙にイミュが身体を捻じ込ませてきた。
「ほら、今後彼に魔力を与えるためにやる予行演習だと思えばよいでしょう?アリア……」
そのままイミュに縫い付けられるようにベッドに抑え込まれる。だが、アリアはすかさず魔力を反発させるとイミュを退けた。
「悪戯が過ぎる……っ」
魔力酔いをしたのだろう、不穏な瞳をしていたイミュが恨めしそうにこちらを見ている。使い魔である彼に感情はない。だから本来なら執着心もない。だが、アリアの膨大な魔力を前に、その魔力を享受しようと大抵の者は魔力酔いをしてしまう。
イミュもしばしばそのような状態になってしまうことがあったので気をつけてはいたのだが、アレスのことで暴走してしまったようだった。
「イミューズ」
本来の名を呼び、翠玉の瞳で見つめながら手を叩くと我に返ったのか、彼の瞳に生気が戻った。自分のしたことを思い出したのか、身を正す。
「失礼しました」
「いいのよ、私も悪かったから。身体、痛かったでしょう?早く寝て治してね」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ、イミュ」
パタンと今度は扉からきちんと出るイミュを見送って、はぁ……と大きな溜息をついた。あの使い魔との付き合いは長いが、まさかあんなことをするとは予想外で、心臓が痛い。
「感情って本当に厄介」
苦しくて息が詰まりそうになりながら、自分の気持ちを押し殺す。部屋の明かりを消して、ギュッと目を閉じベッドに転がった。
音もなく現れるイミュ。いつものことなのだが、相変わらず心臓に悪い。
「イミュ、いつもいつも……っ、なに?」
文句を口にすれば、口を押さえられる。ジッとイミュを見つめると、不機嫌そうな瞳とぶつかった。
「アリアはあぁ言うのがお好みですか?」
「急に、どうしたの?」
「私を騙せるとでも?」
「……別に、久々に触れられて話せる人間だったからちょっと特別だっただけ」
不服そうな表情をするイミュに、もう寝るから、と布団に潜り込むと、イミュも隣にモゾモゾと侵入してくる。
ちょっ……、と抗議の声をあげると「魔力の補充をしてください」と耳元で囁かれた。
性的なものを匂わしてくるイミュとは所謂そういう関係ではないのだが、主人を想う嫉妬故か、はたまたある意味片割れという存在だからか、しばしば人間染みた執着をアリアに見せる。
「……ちょっとだけだよ」
チュッと啄むように口付ける。イミュはまだ足りないとでもいうように、アリアの後頭部を押さえて追いかけるように深く唇を合わせてきた。
「……ん、イミュ……。アレスもいるんだから……っ」
「アリアが声を出さねばいいんですよ」
自分に合わせた白銀の髪が顔にかかる。イミュのアメジストのような瞳は欲に眩んで澱んでいた。
「それとも、その綺麗な声が出る唇を常に塞いでおきましょうか?」
「もう、ふざけないで……っ」
強く抵抗するとイミュがスッと身体を離す。すると、みるみるうちにいつもの容姿から変化していき、そこにはアレスに瓜二つの存在が。
「これなら文句はないでしょう?」
「イミュ……!」
「アレスと呼んでも構いませんよ?アリア……」
先程の彼のような振る舞いをするイミュ。不覚にも戸惑ってしまったアリアに追い打ちをかけるように、あの金髪碧眼というまさに憧れの王子様の容姿でニッコリと微笑まれる。
「アリアが絵物語の王子様に憧れていることなど、百も承知なのですよ。だから、あの男に多少なりとも惹かれているのでしょう?でなければ、人嫌いの貴女がここまでするわけがない。私を誰だとお思いですか?貴女の片割れであり、使い魔ですよ」
痛いところを突かれて、動きが鈍る。付き合いが長いイミュにバレないわけがないと分かりながらも、自分の下心を見透かされて恥じ入る。その隙にイミュが身体を捻じ込ませてきた。
「ほら、今後彼に魔力を与えるためにやる予行演習だと思えばよいでしょう?アリア……」
そのままイミュに縫い付けられるようにベッドに抑え込まれる。だが、アリアはすかさず魔力を反発させるとイミュを退けた。
「悪戯が過ぎる……っ」
魔力酔いをしたのだろう、不穏な瞳をしていたイミュが恨めしそうにこちらを見ている。使い魔である彼に感情はない。だから本来なら執着心もない。だが、アリアの膨大な魔力を前に、その魔力を享受しようと大抵の者は魔力酔いをしてしまう。
イミュもしばしばそのような状態になってしまうことがあったので気をつけてはいたのだが、アレスのことで暴走してしまったようだった。
「イミューズ」
本来の名を呼び、翠玉の瞳で見つめながら手を叩くと我に返ったのか、彼の瞳に生気が戻った。自分のしたことを思い出したのか、身を正す。
「失礼しました」
「いいのよ、私も悪かったから。身体、痛かったでしょう?早く寝て治してね」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ、イミュ」
パタンと今度は扉からきちんと出るイミュを見送って、はぁ……と大きな溜息をついた。あの使い魔との付き合いは長いが、まさかあんなことをするとは予想外で、心臓が痛い。
「感情って本当に厄介」
苦しくて息が詰まりそうになりながら、自分の気持ちを押し殺す。部屋の明かりを消して、ギュッと目を閉じベッドに転がった。
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