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第十一話 弟子
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「というわけでよろしく」
「……どうも」
私が向き直るとうんざりした表情の王子がいる。
なぜここに王子がいつかと言うと、今回のプハマの村含めて聖女行脚には王子帯同が必要らしい。
国王曰く、王子に自国を回ることで自国のことをより深く知ってほしい、とのことだが要するに体のいい子守である。恐らく国王の本音は、それなりに王子のレベルを鍛えて各地を旅させてね、ということだろう。
一応、元ギルドマスターとして新人育成についてはそれなりにできると自負はしているのでそこは問題ない。あとは本人がついて来れるかどうかだが。
それにしても、相変わらずイケメンだなぁ。本当、王子様って感じ。
いや、本物の王子様ではあるのだけど。
今みたいにちょっと雑な感じのほうが好みだけど、ちょっとやっぱこう……なんか違うんだよなぁ。
なんだろ、友達以上恋人未満的な。うん、仲良くする相手には良さそうだけど、恋人にするかと言われたら……うーん。
そんな勝手なことを考えながら城を出て歩き出す。ちなみに、プハマは通常歩いたら二週間はかかる遠方である。
「なぁ」
「何?」
「転移魔法使うんじゃなかったのか?」
「使わないけど?」
「何で!?」
びっくりする王子に私がびっくりする。
「プハマまでどれくらいかかると思っているんだ!?」
「うーん、このペースだとざっと二週間?」
「だったら、転移魔法使ってすぐにでも移動するべきじゃないのか? 早く任務こなして父さんに聖女でも結婚できるよう証明するんだろ」
「するわよ?」
「だったら……」
「お黙り。まだレベル五くらいしかない雑魚のくせにギャアギャア言わないの。プハマの村付近の推奨レベルは三十よ? 転移魔法使ったところであんた死ぬわよ」
「お、王子のオレに……ざ、雑魚だと……!?」
イケメンだけどやっぱダメダメね。温室育ちなせいか、どうにも私と相性が合わない気がする。
「今の貴方はその辺の村人Aよりも弱いのよ。まずは強くならないと」
「む、村人Aより弱……っ!? それは言い過ぎだろっ! てか、随分と大司教とオレと態度違いすぎないか!?」
「そりゃそうでしょ。あんた私の弟子だし」
「弟子!? 弟子になった覚えはないぞ! というか、オレ王子!」
「王子でも私にお守りされてるなら弟子みたいなもんでしょ。つべこべ言わずにまずはレベルを上げる! 三十近くまで上がったら転移魔法使ってあげるから」
「はぁ……? マジかよ。てか、聞いてた話と全然違うぞ!」
王子が見苦しく喚き始める。
年もそんな変わらないはずなのに幼いというかなんというか。歴代の元カレにはいなかったタイプである意味新鮮ではある。
「聞いてた話って? そもそも私のイメージってどうなってたのよ」
ずっと聞きたかったことを単刀直入に聞く。何となくは察していたが、実際にどう思われていたのかはずっと気になっていたのだ。
「聞いていた話では、聖女候補は超上級白夜光のギルドマスターで、大型モンスターを単騎で討伐できるほどの力の持ち主」
「うんうん、そこまでは合ってるわね」
「ことごとく王城からの招待を断るのは見た目に難があるから。結婚願望が強くて、婚期を逃したから結婚するために男漁りに必死。無類の男好きで男にフラれてはまた新しい男にアプローチ。男のためなら何でもやる」
「ちょっとちょっとちょっとちょっとー!? 途中から悪意しか感じない情報のねじ曲げられ方なんだけど!? どこでどうしてそうなった! てか、見た目に難ありとか男漁りに必死とか色々と酷くない!?」
まさかのダブルブッキングで王城からの招待を断り続けてたことでこんな弊害が!
いくらなんでもここまで事実とかけ離れていると驚きを通り越して呆れるしかない。
というか、みんな会うたびに驚いていたのはこういうことだったのか。改めて知ると色々と酷い。
「だからオレみたいなイケメンの言うことなら何でも聞くし、尽くしてくれると聞いてたんだが」
「何その偏見! 私のイメージおかしすぎでしょ! てか、自分でイケメン言うな! 確かにイケメンかもしれないけど、何でもはしないからね!」
「えーーーー……」
「えー、じゃない! あくまで私は貴方のお守りなの。一人前になるまでの師匠としてビシバシ鍛えるわよ。覚悟しときなさい」
うんざりした顔の王子。まさか全部私に丸投げでレベル上げをしようとなど思ってるとは思わなかった。
とはいえ、実際好みのタイプだったら丸投げされたとしても面倒見てしまう気がするが、そこはあえて黙っておく。
「……どうも」
私が向き直るとうんざりした表情の王子がいる。
なぜここに王子がいつかと言うと、今回のプハマの村含めて聖女行脚には王子帯同が必要らしい。
国王曰く、王子に自国を回ることで自国のことをより深く知ってほしい、とのことだが要するに体のいい子守である。恐らく国王の本音は、それなりに王子のレベルを鍛えて各地を旅させてね、ということだろう。
一応、元ギルドマスターとして新人育成についてはそれなりにできると自負はしているのでそこは問題ない。あとは本人がついて来れるかどうかだが。
それにしても、相変わらずイケメンだなぁ。本当、王子様って感じ。
いや、本物の王子様ではあるのだけど。
今みたいにちょっと雑な感じのほうが好みだけど、ちょっとやっぱこう……なんか違うんだよなぁ。
なんだろ、友達以上恋人未満的な。うん、仲良くする相手には良さそうだけど、恋人にするかと言われたら……うーん。
そんな勝手なことを考えながら城を出て歩き出す。ちなみに、プハマは通常歩いたら二週間はかかる遠方である。
「なぁ」
「何?」
「転移魔法使うんじゃなかったのか?」
「使わないけど?」
「何で!?」
びっくりする王子に私がびっくりする。
「プハマまでどれくらいかかると思っているんだ!?」
「うーん、このペースだとざっと二週間?」
「だったら、転移魔法使ってすぐにでも移動するべきじゃないのか? 早く任務こなして父さんに聖女でも結婚できるよう証明するんだろ」
「するわよ?」
「だったら……」
「お黙り。まだレベル五くらいしかない雑魚のくせにギャアギャア言わないの。プハマの村付近の推奨レベルは三十よ? 転移魔法使ったところであんた死ぬわよ」
「お、王子のオレに……ざ、雑魚だと……!?」
イケメンだけどやっぱダメダメね。温室育ちなせいか、どうにも私と相性が合わない気がする。
「今の貴方はその辺の村人Aよりも弱いのよ。まずは強くならないと」
「む、村人Aより弱……っ!? それは言い過ぎだろっ! てか、随分と大司教とオレと態度違いすぎないか!?」
「そりゃそうでしょ。あんた私の弟子だし」
「弟子!? 弟子になった覚えはないぞ! というか、オレ王子!」
「王子でも私にお守りされてるなら弟子みたいなもんでしょ。つべこべ言わずにまずはレベルを上げる! 三十近くまで上がったら転移魔法使ってあげるから」
「はぁ……? マジかよ。てか、聞いてた話と全然違うぞ!」
王子が見苦しく喚き始める。
年もそんな変わらないはずなのに幼いというかなんというか。歴代の元カレにはいなかったタイプである意味新鮮ではある。
「聞いてた話って? そもそも私のイメージってどうなってたのよ」
ずっと聞きたかったことを単刀直入に聞く。何となくは察していたが、実際にどう思われていたのかはずっと気になっていたのだ。
「聞いていた話では、聖女候補は超上級白夜光のギルドマスターで、大型モンスターを単騎で討伐できるほどの力の持ち主」
「うんうん、そこまでは合ってるわね」
「ことごとく王城からの招待を断るのは見た目に難があるから。結婚願望が強くて、婚期を逃したから結婚するために男漁りに必死。無類の男好きで男にフラれてはまた新しい男にアプローチ。男のためなら何でもやる」
「ちょっとちょっとちょっとちょっとー!? 途中から悪意しか感じない情報のねじ曲げられ方なんだけど!? どこでどうしてそうなった! てか、見た目に難ありとか男漁りに必死とか色々と酷くない!?」
まさかのダブルブッキングで王城からの招待を断り続けてたことでこんな弊害が!
いくらなんでもここまで事実とかけ離れていると驚きを通り越して呆れるしかない。
というか、みんな会うたびに驚いていたのはこういうことだったのか。改めて知ると色々と酷い。
「だからオレみたいなイケメンの言うことなら何でも聞くし、尽くしてくれると聞いてたんだが」
「何その偏見! 私のイメージおかしすぎでしょ! てか、自分でイケメン言うな! 確かにイケメンかもしれないけど、何でもはしないからね!」
「えーーーー……」
「えー、じゃない! あくまで私は貴方のお守りなの。一人前になるまでの師匠としてビシバシ鍛えるわよ。覚悟しときなさい」
うんざりした顔の王子。まさか全部私に丸投げでレベル上げをしようとなど思ってるとは思わなかった。
とはいえ、実際好みのタイプだったら丸投げされたとしても面倒見てしまう気がするが、そこはあえて黙っておく。
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