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第十話 圧力

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 大司教の説得により、私は無事に儀式も済ませて聖女になった。
 儀式が終わる頃にはみんななぜかすごい疲れた顔をしていたが、きっと気のせいだろう。

「シオンさん。よろしくお願いします」
「はい、大司教様! 私、大司教様のために頑張ります!」
「ありがとうございます。さすがは私が聖女と見込んだお方だ。頑張ってくださいね」

 とびきりの笑顔を向けられ、胸がズキュンと衝撃を受けて、はうっと地に伏しそうなくらいの衝撃を受ける。

 あぁ、大司教様。素敵……っ!

 周りからは冷めた目で見られるが、そんなものは気にしない。目の前の大司教様によく思われるためなら他の誰がどう思っていてもどうでもいいのだ。

 なぜなら、彼のためなら何だってやれるくらい私は彼に恋をしてるのだから……!

「ではシオン殿。くれぐれもよろしく頼みますぞ」
「我が国の安寧のためによろしく頼む」
「承知しました! 聖女としてお勤め頑張ります! ですから、私からの条件もよろしくお願いしますね」
「うむ。善処する」
「善処ではなく、早急に取り決めをしてくださいね」

 にっこりと微笑み無言の圧力をかける。善処とかいう建前など私には不要なのだ。

「あ、あぁ、わかった」
「こら、シオン殿! 陛下に圧力をかけるのではない!!」

 大臣には咎められたが、王に釘を刺せたので満足する。
 そう、私は聖女になる代わりに一つの条件を出したのだ。それは……

 聖女であっても結婚できるようにすること!

 私はこれさえ達成できるなら聖女にならない理由などなかった。だから私は、国王に聖女になる代わりということで条件を課したのだ。

 そもそも聖女とはこの国、マルデリア王国の守護をするための存在だ。仕事は主に国の各地を旅して祈りを捧げたり魔物を魔障壁などで追い払ったりすること。
 各地を回るには魔法や魔獣の使用など認められているとはいえ、国土は広くてその各地の人々の声を拾うためには人生を捧げなければならないほどの膨大な時間がかかる。
 そのため、代々聖女は自分の人生を犠牲にし、結婚はせずに国に人生を捧げなければならない決まりであった。

 けれど私の場合、転移魔法も使えるし、ちょっとやそっとでは枯渇しない魔力も持ち合わせている。そのため、結婚してても聖女としての役目を全うできると国王に交渉したのだ。

 国王もそれならば聖女として結婚しながらでも両立できるか証明するため、まずは遠方の任を全うせよ。そうすれば聖女の結婚を認めよう、と早速三つほど任務を与えられた。どれもこれも先代の聖女が回りきれなかった土地らしい。

 てなわけで早速一つ目の村、プハマに私たちはこれから向かうところなのだ。
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