58 / 95
第五十八話 トンデモ理論
しおりを挟む
ヴィルに聞かれて誤魔化すことができずに白状する。
この目の前にいる軽薄な男はダグラス。二年ほど前の彼氏なのだが、交際数ヶ月目で浮気されて別れていた。
まさかこんなとこで会うなんて。
「俺、ここが地元だからな。いやぁ、それにしても運び込まれたとき、見覚えあるなぁ~とは思ってたんだよ。それなのに、近くで見たいって言ってもその男が会わせてくれねぇし」
「シオンがぐったりしてるときにちょっかいを出してくるからだろう!」
「でもまさか、あの強いシオンが倒れるだなんてな。びっくりだぜ。どうだ、元気してたか?」
「まぁ、程々に……」
「この村でシオンにまた会えるとは思わなかったぜ。これも何かの縁だし、なぁ、俺たちまた付き合おうぜ?」
「は?」
「なっ!?」
私が絶句していると、なぜか隣のヴィルも口をあんぐりとさせていた。
いや、気持ちは痛いほどわかる。
私自身あいつの言葉を理解するのに時間がかかった。というか、今もちゃんと理解できてない。
そもそも起きたばかりな上に再会したばかりで復縁申し込むとか、一体ヤツの頭の中はどうなっているのだ。
再びガンガンする頭を抱えると「嬉しすぎて泣いてるのか?」と思考お花畑な発言が聞こえてきて、さらにげんなりする。
そういえば、ダグラスってこういう人だった。
やたらとポジティブで、何が何でもいいように受け取ってしまう。
当時の私はその彼の明るい部分が好きだったのだが、さすがに年を重ねてもなおここまでトンチンカンな思考だと閉口するしかない。
「いや、頭痛が酷いだけだから。別に感動してるわけでもないし。そもそも、浮気する人は無理」
「それはシオンが強い女だと思ってたからだ! でも今、こうしてか弱い女であると知ったのだから、俺にはシオンを守る責任がある!!」
「こいつは何を言っているんだ……?」
ダグラスのトンデモ理論にヴィルも眉を顰めている。そうなるのも無理はない。私だって理解できない。
「とにかく今は寝かせておいて。まだ起きたばかりだし」
「そうか、わかった! 何かあればすぐに呼んでくれよ! 大事な彼女のためなら何だってするからな!!」
「いや、今は彼女じゃないし、元カノだから」
「恥ずかしがっているシオンも可愛いな! とりあえず何かあれば俺を頼ってくれ! じゃあな!」
ダグラスはニカっと満面の笑みを浮かべると、そのまま部屋を出て行った。
「……シオン、男の趣味悪すぎだろ」
「それは私も改めて実感したから、これ以上指摘しないで」
はぁぁぁと盛大な溜め息をついて項垂れる。具合がさらに悪化したような気がした。
この目の前にいる軽薄な男はダグラス。二年ほど前の彼氏なのだが、交際数ヶ月目で浮気されて別れていた。
まさかこんなとこで会うなんて。
「俺、ここが地元だからな。いやぁ、それにしても運び込まれたとき、見覚えあるなぁ~とは思ってたんだよ。それなのに、近くで見たいって言ってもその男が会わせてくれねぇし」
「シオンがぐったりしてるときにちょっかいを出してくるからだろう!」
「でもまさか、あの強いシオンが倒れるだなんてな。びっくりだぜ。どうだ、元気してたか?」
「まぁ、程々に……」
「この村でシオンにまた会えるとは思わなかったぜ。これも何かの縁だし、なぁ、俺たちまた付き合おうぜ?」
「は?」
「なっ!?」
私が絶句していると、なぜか隣のヴィルも口をあんぐりとさせていた。
いや、気持ちは痛いほどわかる。
私自身あいつの言葉を理解するのに時間がかかった。というか、今もちゃんと理解できてない。
そもそも起きたばかりな上に再会したばかりで復縁申し込むとか、一体ヤツの頭の中はどうなっているのだ。
再びガンガンする頭を抱えると「嬉しすぎて泣いてるのか?」と思考お花畑な発言が聞こえてきて、さらにげんなりする。
そういえば、ダグラスってこういう人だった。
やたらとポジティブで、何が何でもいいように受け取ってしまう。
当時の私はその彼の明るい部分が好きだったのだが、さすがに年を重ねてもなおここまでトンチンカンな思考だと閉口するしかない。
「いや、頭痛が酷いだけだから。別に感動してるわけでもないし。そもそも、浮気する人は無理」
「それはシオンが強い女だと思ってたからだ! でも今、こうしてか弱い女であると知ったのだから、俺にはシオンを守る責任がある!!」
「こいつは何を言っているんだ……?」
ダグラスのトンデモ理論にヴィルも眉を顰めている。そうなるのも無理はない。私だって理解できない。
「とにかく今は寝かせておいて。まだ起きたばかりだし」
「そうか、わかった! 何かあればすぐに呼んでくれよ! 大事な彼女のためなら何だってするからな!!」
「いや、今は彼女じゃないし、元カノだから」
「恥ずかしがっているシオンも可愛いな! とりあえず何かあれば俺を頼ってくれ! じゃあな!」
ダグラスはニカっと満面の笑みを浮かべると、そのまま部屋を出て行った。
「……シオン、男の趣味悪すぎだろ」
「それは私も改めて実感したから、これ以上指摘しないで」
はぁぁぁと盛大な溜め息をついて項垂れる。具合がさらに悪化したような気がした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
90
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる