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第二十八話 婚約者
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「そ、それで、話って?」
「とぼけないで、エディオンさまのことよ!」
今まさに頭を抱えていた案件がまた降ってきて、再び頭が痛くなる。
「貴女、私がエディオンさまの婚約者だと知っててあのような行動をなさっていたの?」
「え!? 彼、婚約者がいたの!?」
初めて聞く事実に目眩がしてくる。
「当たり前でしょう!? エディオンさまは第三王子なのだから!」
「こちらのミナさまは侯爵令嬢としてお育ちになって、幼少期からエディオンさまとの婚約を交わしていらっしゃるわ」
「それなのに貴女はエディオンさまを誑かして……っ!」
「たぶ……っ!? わ、私は誑かしてなんか……っ」
「嘘おっしゃい!? ここのところエディオンさまがずっと貴女と一緒にいるのを知っているのよ!?」
一緒にいると言われても、どちらかというとエディオンが私にくっついてきたというか、私のところに積極的にやってきたのに。
とはいえ、そんな事実を言ったところで彼女が納得してくれないだろうことはさすがの私でもわかっていた。
(婚約者がいるのに、なぜエディオンは私にちょっかいを出してきたのよ……酷い……っ)
厄介なことに巻き込まれ、あまりの理不尽さにエディオンにも怒りが湧いてくる。
「見た目だけはいいものね、貴女」
「いつもフードを被っているのも、わざと目立とうとしているのではなくて?」
「魔力暴走したのだって、本当は目立つために仕組んだんじゃ? それでエディオンさまに取り入ろうなんて、浅はかな女ね」
前世を彷彿とさせる罵りに身体が震える。
(あぁ、この感じは知っている、これは嫉妬だ)
そしてこれがどれほど酷い悪意になるのかも心得ていた。
(……怖い。また私、同じ過ちを繰り返すの?)
あの恐怖が蘇る。
息が苦しく、目の前が真っ暗になってくる。
そして、身体の底から恐怖と共に何か得体の知れないものが今にも溢れ出しそうだった。
「君たちはそこで何をやっているんだ」
低く、通る声が聞こえてゆっくりと顔を上げる。
そこにいたのは険しい顔をしたノースくんだった。
「な、何よ。ちょっと女子会してただけよ」
「ねぇ、ミナさま」
「えぇ、何か問題があって?」
「俺からはとてもそうは見えなかったが?」
彼が一睨みすると、まるで蛇にでも睨まれたカエルのように竦み上がる三人組。
「ま、まぁ、いいですわ。言いたいことは言えましたし。行きましょう」
「そうですわね」
「行きましょう行きましょう。せっかくのパーティーですもの、楽しまないとですしね」
ミナ達は言い訳がましくぶつぶつと言いながら足速にパーティー会場へと戻っていった。
それを見つめながら、ホッと私は胸を撫で下ろす。
先程までグラグラと迫り上がっていた何かもいつの間にか消えていた。
「あ、あの……っ、ありがとう」
「いや、大したことはしていない」
それだけ言うと、ノースくんはすぐさま踵を返してパーティー会場へと行ってしまう。
(もっとちゃんと、お礼を言いたかったのだけど……)
お礼を言いたいのは山々だったが、さすがに彼を追いかけてまたあのパーティー会場には戻る気になれず、私は静かにパーティー会場を出て一人で寮へと戻るのだった。
「とぼけないで、エディオンさまのことよ!」
今まさに頭を抱えていた案件がまた降ってきて、再び頭が痛くなる。
「貴女、私がエディオンさまの婚約者だと知っててあのような行動をなさっていたの?」
「え!? 彼、婚約者がいたの!?」
初めて聞く事実に目眩がしてくる。
「当たり前でしょう!? エディオンさまは第三王子なのだから!」
「こちらのミナさまは侯爵令嬢としてお育ちになって、幼少期からエディオンさまとの婚約を交わしていらっしゃるわ」
「それなのに貴女はエディオンさまを誑かして……っ!」
「たぶ……っ!? わ、私は誑かしてなんか……っ」
「嘘おっしゃい!? ここのところエディオンさまがずっと貴女と一緒にいるのを知っているのよ!?」
一緒にいると言われても、どちらかというとエディオンが私にくっついてきたというか、私のところに積極的にやってきたのに。
とはいえ、そんな事実を言ったところで彼女が納得してくれないだろうことはさすがの私でもわかっていた。
(婚約者がいるのに、なぜエディオンは私にちょっかいを出してきたのよ……酷い……っ)
厄介なことに巻き込まれ、あまりの理不尽さにエディオンにも怒りが湧いてくる。
「見た目だけはいいものね、貴女」
「いつもフードを被っているのも、わざと目立とうとしているのではなくて?」
「魔力暴走したのだって、本当は目立つために仕組んだんじゃ? それでエディオンさまに取り入ろうなんて、浅はかな女ね」
前世を彷彿とさせる罵りに身体が震える。
(あぁ、この感じは知っている、これは嫉妬だ)
そしてこれがどれほど酷い悪意になるのかも心得ていた。
(……怖い。また私、同じ過ちを繰り返すの?)
あの恐怖が蘇る。
息が苦しく、目の前が真っ暗になってくる。
そして、身体の底から恐怖と共に何か得体の知れないものが今にも溢れ出しそうだった。
「君たちはそこで何をやっているんだ」
低く、通る声が聞こえてゆっくりと顔を上げる。
そこにいたのは険しい顔をしたノースくんだった。
「な、何よ。ちょっと女子会してただけよ」
「ねぇ、ミナさま」
「えぇ、何か問題があって?」
「俺からはとてもそうは見えなかったが?」
彼が一睨みすると、まるで蛇にでも睨まれたカエルのように竦み上がる三人組。
「ま、まぁ、いいですわ。言いたいことは言えましたし。行きましょう」
「そうですわね」
「行きましょう行きましょう。せっかくのパーティーですもの、楽しまないとですしね」
ミナ達は言い訳がましくぶつぶつと言いながら足速にパーティー会場へと戻っていった。
それを見つめながら、ホッと私は胸を撫で下ろす。
先程までグラグラと迫り上がっていた何かもいつの間にか消えていた。
「あ、あの……っ、ありがとう」
「いや、大したことはしていない」
それだけ言うと、ノースくんはすぐさま踵を返してパーティー会場へと行ってしまう。
(もっとちゃんと、お礼を言いたかったのだけど……)
お礼を言いたいのは山々だったが、さすがに彼を追いかけてまたあのパーティー会場には戻る気になれず、私は静かにパーティー会場を出て一人で寮へと戻るのだった。
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