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第四十五話 耐久勝負

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「嫉妬などもあるんでしょうね。あとはただ見下す相手が欲しいだけか。そういう愚かな人間は、実際に多いから」

 確かに、人間が愚かなことは前世からよく理解している。

 だからこそ私は今まで人間が怖くて、悪意を向けられたくなくて引きこもっていた。
 誰からも興味を持たれないように喪女を目指していたのだ。

 けれど、NMAに入ってからマリアンヌ以外の友達も増えて、アイザックとも仲良くなって、魔法も使いこなせるようになり、今までなかった世界を味わうことができた。
 ただ引きこもって平穏な生活を手に入れるだけが人生ではないと、少しずつ思えるようになったのだ。

(マリアンヌが私を外に連れ出してくれたときのように、私も彼の力になりたい。具体的に何をすればいいかはわからないけど、それでも何かをしてあげたい)

「私、アイザックの力になりたいな」
「クラリスならなれるわよ。善は急げって言うし、今夜の夕食一緒に食べようって誘ったら? そこでちゃんと謝って、少しずつでも関係を築いていったらいいと思うわ」
「なるほど、そうね! 私とマリアンヌもそうだったように」
「ふふふ、私とクラリスの耐久勝負と比べたら絶対アイザック攻略のほうが簡単だと思うわよ?」
「う。確かに」

 引きこもってたときの自分は相当に厄介だったことを思い出す。

 外に行きたくない。
 知らない人と話したくない。
 同じ空間にすらいたくない。

 と、当初はマリアンヌを拒絶しまくってたことを今でも覚えている。

 それを辛抱強く、贈り物をしてくれたり遠くから話しかけてくれたりして、マリアンヌは私が慣れるのを待ってくれたのだ。

 だんだんと慣れつつあるのは自覚してたが、それでもなかなか自室から出るに出られず、マリアンヌとちゃんと会えたのは最初の接触から一年後だった。
 我ながら難儀な性格をしていると思う。

「でも、よくマリアンヌはこんな頑固な私に諦めずに接触してたわよね。普通だったら匙を投げちゃうでしょうに」
「ふふ、確かに。最後は私も意地になっていたし、根気比べのようなものだったと思うわよ? それに、そこまで人嫌いっていうのはどんな顔か見てみたくもあったの。まさかこんなに綺麗な子だとは思ってなかったけど」
「え、それは私がブサイクだと思ってたってこと?」
「そこまでは言ってないわよ。……ただちょっと、顔に自信がないからかなーって思っただけ」
「え、それ初耳なんだけど!」
「ふふ、だって今初めて言ったもの」

 まさかのマリアンヌのカミングアウトに驚きつつも、こうは言いながらもありがたいことだなぁと思う。
 改めてマリアンヌの偉大さを感じながら、私はアイザックを夕食に誘うべく、彼を探すのだった。
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