婚約者が親友と浮気したので婚約破棄したら、なぜか幼馴染の騎士からプロポーズされました

鳥柄ささみ

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19 ここが新しい我が家……?

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「ここが、新しい我が家……?」
「あぁ、これからここで生活するんだ」
「えっと、家……というより、お城、よね?」

 新しい家は城というよりはちょっと小さめではあるが、とても立派な家だった。
 白を基調にし、外壁も綺麗に塗られたそれはまるで新しく建てられたかのような美しさである。
 遠目から見ても美しい建物だと思ってはいたが、まさかここが新居になるとは想像もしてなくて、実家と同じくらいだろうと勝手に思っていたマリーリにとって想定外の大きさに、思わず目を疑ってしまった。

「ここに私達が住めるの?」
「もちろんだ」
「想像以上でちょっとびっくり」

 素直に気持ちを吐露すれば、ジュリアスに肩を抱かれる。
 顔を上げれば、「驚くのはまだ早いぞ」と上機嫌で言われる。

「まだ驚くことがあるの?」
「あぁ、これくらいで驚いていたら驚きすぎて疲れてしまうほどにはな」
「そんなに?」
「あぁ」

 まるで子供のように笑うジュリアス。
 その表情が昔を思い出して、ちょっと懐かしくなる。

(そうそう、昔はこうして気安かったのよね)

 今は会う機会が少なかったぶん、多少心の距離が開いてしまったような気がしていたマリーリだが、こうしてふとした瞬間に過去を思い出して安堵する。
 このまま昔のような距離感で付き合っていけたらいいなぁ、と心の中で思いながらマリーリはジュリアスを見つめた。

「さて、荷物もまだ届かないことだし、先に中を案内しようか。どこに何を配置するかも決めなければいけないしな」
「そうね。中はどうなっているのかしら、楽しみ!」

 グイッと今度は腰を抱かれてくっつくように引き寄せられる。
 距離が近いなぁと思いながらも、下手に指摘したところでジュリアスの切り返しによっては自分がおろおろしてしまうのが目に見えていたので、マリーリはあえて何も言わずにそのまま中に連れて行かれた。

「まぁ、凄い……っ! 外観も素晴らしかったけれど、内装も素晴らしいわね!」

 まだ荷物を搬入していないためだだっ広いとはいえ、想像以上に凝った吹き抜けのエントランスやあまり見たことがない螺旋階段などに心が躍る。
 一目見ただけで窓ガラスや壁、ドアなどの細工や飾りに趣向を凝らしているのがよくわかるほどの美しさ。
 建物全体が芸術品のようで、ずっと眺めていて飽きない自信がある。
 マリーリは自分の手先が不器用なぶん、こうして自分には絶対に不可能であろうきめ細やかな細工技術を眺めるのが好きだった。

「マリーリはこういったものが好きだろう?」
「えぇ。大好き! って、ジュリアス何で知ってるの?」
「……幼い頃からよく言ってただろう? 忘れたのか?」
「そんなに言っていたかしら。でも、ありがとう。わざわざ覚えておいてくれたの?」
「あぁ、せっかく来るなら気に入った家の方がいいだろう? 俺は特にこだわりはないし、普段生活するマリーリが好きな家の方が有意義だと思ってな」
「ありがとう、嬉しい」

(甘やかされているなぁ、私)

 マリーリはまさかジュリアスにまで甘やかされるとは思わなかったが、純粋に慮ってくれたことが嬉しかった。

「ちなみに外壁も新たに塗り直したのだが、どうだろうか? 希望があればまた塗り直してもいいが」
「いえ、このままで素敵だわ。純白っていいわね、ジュリアスがわざわざ塗り直したの?」
「補修も兼ねてな。せっかく一緒に住むのであれば、真新しいほうがいいかと思ったんだが」
「えぇ、確かに。それに、外観と内装が合っていてとてもいいと思う」
「そうか。マリーリに気に入ってもらえたならよかった」

(こんなに至れり尽くせりだったら勘違いしそうだわ)

 あくまで利害が一致したという関係なのに、とつい後ろ暗く感じてしまうが、ミヤの言葉を思い出して首を振る。

(いけないいけない。油断しているとすぐにネガティブになっちゃう)

「どうした?」
「いえ、何でも。本当に素敵! お母様とお父様に自慢したいくらいだわ。ミヤもきっとびっくりし過ぎて卒倒してしまうかも。あぁ、でもミヤなら掃除が大変だとも言いそうね」
「妄想が捗って何よりだ」
「もう、いいでしょ! だってどれもこれも素敵なんだもの。あ、そうそうどこに家具を置きましょうか。それと、私の部屋もどこにしようかしら」
「あぁ、では二階も見てみようか」
「えぇ!」

(考えてもしょうがない。せっかくだもの、今は目の前の幸せを享受したほうがいいわよね。悩んでたって本当ろくなことにならないんだし)

 マリーリは気持ちを改めるとスッと心が軽くなる。
 ジュリアスに手を差し伸べられて、それに自らの手を重ねるとギュッと握られた。
 また赤面し、悶絶しそうになりながらもそれをグッと飲み込み、「こういうのも慣れないとよね」と平静を取り戻す。
 そしてまだ慣れない彼の手の感触に面映くなりながらも、そっと握り返した。

「では参りましょうか、奥様?」
「~~~~っジュリアスったら、からかってばかり」
「マリーリが可愛らしい反応ばかりするからな」
「かっ、かわ、……って、もう! またからかっているのでしょう!」
「ははは」

 結局赤面してしまうものの、ジュリアスは気にする様子もなく楽しげに笑ってそのままエスコートしてくれる。
 やはり騎士として紳士道も嗜んでいるのだろう、ジュリアスはマリーリのペースに合わせて足下に注意を払いつつゆっくりと上がってくれるところは紳士だなぁ、と感心するマリーリ。

「急がなくていいからな」
「わ、わかってる」
「ならいいが。足元、気をつけろよ?」
「もし転んだら、そのままジュリアスも巻き添えね」
「大丈夫さ。ちゃんと受け止めてやる」

 さらりとそんなことを言ってのけるジュリアスにまたキュンとときめきながら、足を進める。
 本当にもうジュリアスったら上機嫌だなぁ、と思いつつ、マリーリは彼と共にゆっくりと階段を上がっていった。
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