イシュタムに会うのはまた今度

第Ⅱ章

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「いつかまた、絶対に貴方に会うと思ってた」
　僕は大きく大きく、深く深く、息を吸う。吸って吐く。意識を切り替える。冷静になれ。辺りに散らばった意識を拾い上げろ。
「あの傷を消しにきたんだ」
　僕は遠くの空にある傷に目を向ける。僕の視界では収まりきらないほど大きく広がった空に、小さな傷がポツンとある。血が滲んでいるわけでもない。ただ無感情に青色のパレットを汚しているだけだ。
「飛行機雲は嫌い？」
　女の子も視線を上げてあの傷を見る。その瞳は六年前と変わらず綺麗だ。
「嫌いではないけど、美しい空にある飛行機雲はなんだか痛々しくて、悲しくなる」　
　どんなときだって、傷はあるより無い方が幸福だ。そんなことは誰だって知っていて、でも現実はそれを軽々と裏切る。リアルは平気な顔して傷付けてくる。
「君はここで何をしているの？」
　女の子が錆びたベンチを指差しながら言う。
「本を読んだり、あのベンチで昼寝をしてる。持ってきたチュッパチャップスを舐めたり、週に何回か購買で買ったジュースも飲む」
　その横顔を注意深く観察すると、置くの左目の下には涙ボクロがあった。やはり女の子は女の子だ。