婚約破棄された公爵令嬢は、漆黒の王太子に溺愛されて永遠の光を掴む

第17話: 味方の結集

第17話: 味方の結集

アストリア王都の外れ、霧に包まれた古い森の奥に、隠れ家のような小さな砦があった。ヴィオラとセイルは、馬を隠し、砦の門を叩いた。門を開けたのは、老いた影の使い手だった。セイルの父王時代からの忠臣、ガルドだ。

「殿下……お帰りなさい」

ガルドの瞳に、涙が浮かんだ。セイルは静かに頷き、ヴィオラを連れて中へ入った。砦の中には、十数人の影の魔法使いと剣士が集まっていた。皆、政争で追われた者たち。セイルの帰還を待ち続けていた。

「皆、集まってくれたのか」

セイルの声が、砦に響く。ガルドが前に出た。

「殿下の消息を聞き、影の結界で待機していました。アルディオン王太子の同盟軍が、王都を固めています」

ヴィオラはセイルの袖を握った。セイルはヴィオラを紹介した。

「彼女は、影の継承者ヴィオラ。俺の伴侶であり、共に戦う者だ」

一同が息を呑んだ。影の魔法使いの一人が、前に出た。

「伝説の継承者……本当ですか？」

ヴィオラは影を呼び、黒い糸を広げた。幻影が砦全体を覆い、皆の姿を映し出す。予知の力が、わずかに未来を垣間見せる。

「私は、セイルと共に、王位を取り戻します」

一同が膝をついた。ガルドが声を上げた。

「殿下、継承者様！ 私たちは、命を懸けてお守りします」

セイルは皆を見回し、静かに言った。

「俺たちは、少数だ。だが、影の力と、君たちの忠誠があれば、勝てる」

ヴィオラは予言書を取り出し、皆に見せた。

「予言書に、こう書かれている。『影の娘が、王子を導き、闇を払う』」

影の魔法使いたちが、感嘆の声を上げた。

「私たちの力が、証明される時が来た」

セイルは作戦を説明した。

「アルディオンとセリナの同盟軍を、王宮で迎え撃つ。俺とヴィオラが潜入し、セリナの偽りの力を暴く。皆は、外から援護を」

ガルドが頷いた。

「影の回廊を使い、王宮へ侵入します。地下で、兵を分断する」

ヴィオラは影の結晶を皆に示した。

「これで、セリナの光を無効化できる。皆の影の魔法を、結集させて」

一同が結晶に手を触れた。黒い光が広がり、皆の影が強くなる。

「これで、勝てる……」

ヴィオラはセイルの手を握った。

「セイル、私たちで、終わらせよう」

セイルはヴィオラを抱き寄せた。

「君と一緒なら、必ず」

砦の外では、アルディオンの軍が動き始めていた。セリナが馬車から降り、冷たく笑う。

「二人を、必ず捕らえる。影の魔法など、偽りの光で封じるわ」

アルディオンは剣を握り、頷いた。

「ヴィオレッタ……お前を、俺の元へ連れ戻す」

砦の中では、味方たちが訓練を始めた。影の魔法が交錯し、剣の音が響く。ヴィオラはセイルと並び、皆を鼓舞した。

「私たちは、闇を恐れない。影は、光を映す鏡よ」

一同が声を上げた。

「殿下！ 継承者様！」

夜が訪れ、砦は静かに息を潜めた。結集した味方たちと、二人は王宮へ向かう準備を整えた。

ヴィオラはセイルに囁いた。

「愛してる……セイル」

セイルはヴィオラの唇にキスをした。

「俺も……永遠に」

味方の結集は、決戦の始まりを告げていた。