婚約破棄された公爵令嬢は、漆黒の王太子に溺愛されて永遠の光を掴む

鷹 綾

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第25話: 勝利の余韻

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第25話: 勝利の余韻

アストリア王宮のバルコニーは、朝陽に照らされて優しく輝いていた。黒い石の欄干に寄りかかり、ヴィオラは王都を見下ろした。影のランプが朝の光に溶け込み、街は穏やかな活気に満ちている。セイルが後ろから近づき、ヴィオラの肩を抱いた。

「ヴィオラ……よく眠れたか?」

ヴィオラはセイルの胸に寄りかかり、微笑んだ。

「ええ……夢を見たわ。あなたと一緒に、王宮の庭を散歩する夢」

セイルはヴィオラの髪を優しく撫でた。

「それは夢じゃない。これからの現実だ」

二人はバルコニーから庭園を見下ろした。花々が咲き乱れ、影の魔法で優しく揺れる木々が、平和を象徴している。昨日までの戦いの傷跡は、すでに修復され始めていた。

ガルドがバルコニーに現れ、静かに頭を下げた。

「殿下、王妃様。国民からの謁見が待っています。皆、漆黒の王と影の継承者の即位を祝っています」

セイルは頷き、ヴィオラの手を取った。

「行こう。俺たちの王国を、皆に示す時だ」

広間へ向かう廊下を歩きながら、ヴィオラはセイルに囁いた。

「セイル……アルディオンとセリナは?」

セイルは静かに答えた。

「二人とも、追放の地へ向かった。アルディオンは国境の村で、セリナは貧民街に戻ったという。もう、二度と戻ってこない」

ヴィオラは少し寂しげに頷いた。

「セリナ……彼女も、いつか本当の幸せを見つけてほしい」

セイルはヴィオラの手を強く握った。

「君の優しさが、彼女を救ったのかもしれない」

広間に着くと、国民たちが集まっていた。貴族、商人、農民、影の魔法使い。皆が膝をつき、歓声を上げた。

「漆黒の王、セイル殿下!」

「王妃、ヴィオラ様!」

セイルは玉座に座り、ヴィオラを隣に立たせた。ガルドが声を張った。

「漆黒の王、セイル・フォン・シャドウと、王妃ヴィオラ・フォン・セレスティアの即位を宣言する!」

広間に、拍手と歓声が響き渡った。影の結晶が輝き、王宮全体を温かな光で包む。

セイルは立ち上がり、国民に語りかけた。

「この王国は、影と光が共存する国だ。俺たちは、闇を恐れず、光を信じる。皆の力を借りて、平和な王国を築く」

ヴィオラはセイルの隣で、静かに微笑んだ。

「私も、王妃として、皆を支えます。影の力で、守ります」

国民たちが声を上げた。

「王様! 王妃様!」

謁見が終わり、二人はバルコニーへ戻った。ヴィオラはセイルの腕に寄りかかり、王都を見下ろした。

「セイル……これで、本当に終わったのね」

セイルはヴィオラを抱きしめた。

「終わった。そして、新しい始まりだ」

二人は唇を重ねた。優しく、深いキス。朝陽が、二人の影を長く伸ばす。

「ヴィオラ……俺の王妃」

ヴィオラは涙を浮かべ、微笑んだ。

「セイル……私の王様」

勝利の余韻は、王宮を温かく包んだ。二人の愛が、王国を永遠に照らす光となった。

だが、遠くの地で、アルディオンは村の小屋で独り、拳を握っていた。

「いつか……必ず……」

セリナは貧民街で、静かに花を植えていた。涙を拭い、微笑んだ。

「もう、いいわ……」

二人の転落は、過去となった。

王宮の庭で、ヴィオラとセイルは手をつなぎ、散歩した。影の花が、優しく揺れる。

「セイル……子供ができたら、どんな子がいい?」

セイルは微笑んだ。

「君に似た、強い子がいい」

ヴィオラは笑った。

「あなたに似た、優しい子も」

二人は笑い合い、王宮の未来を語り合った。

勝利の余韻は、永遠の幸せを約束していた。
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