婚約破棄された公爵令嬢は、漆黒の王太子に溺愛されて永遠の光を掴む

鷹 綾

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第26話: 新たな旅立ち

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第26話: 新たな旅立ち

アストリア王宮の庭園は、朝露に濡れた花々が輝き、影の魔法で優しく揺れていた。ヴィオラは紫のドレスを纏い、セイルの隣を歩いていた。手をつなぎ、ゆっくりと石畳の道を進む。セイルの漆黒のマントが風に翻り、二人の影が長く伸びている。

「セイル……王宮の生活は、どう?」

ヴィオラが尋ねると、セイルは微笑んだ。

「慣れないな。毎日、謁見と会議ばかりだ」

ヴィオラは笑った。

「王様なんだから、仕方ないわ。でも、少し休憩が必要ね」

セイルはヴィオラの手を強く握った。

「そうだな。今日は、二人で出かけよう」

二人は王宮の裏門から、馬車で王都の外れへ向かった。国民に気づかれぬよう、変装した姿で。ヴィオラはシンプルなドレスにフードを被り、セイルは黒いマントを深く被っている。

馬車は森の小道を進み、静かな湖畔に着いた。湖面が朝陽を映し、キラキラと輝く。セイルは馬車を止め、ヴィオラの手を取って降りた。

「ここは、俺の幼い頃に来た場所だ。父王と一緒に、影の魔法を練習した」

ヴィオラは湖を見下ろし、セイルの横に立った。

「素敵な場所ね……」

セイルはヴィオラを抱き寄せ、耳元で囁いた。

「君と一緒に、思い出を作りたい」

二人は湖畔のベンチに座り、手をつないだ。風が優しく吹き、湖面に波紋が広がる。

「セイル……私、公爵家に手紙を出したわ。父上と和解できたの。もう、許してくれた」

セイルは驚き、ヴィオラを見た。

「本当か?」

ヴィオラは頷いた。

「ええ。父上は、最初は反対だったけど、私の幸せを願ってくれたわ」

セイルはヴィオラを抱きしめた。

「よかった……君の家族も、俺の家族だ」

ヴィオラはセイルの胸に顔を埋めた。

「セイル……私たち、子供ができたら、どんな子がいい?」

セイルは微笑んだ。

「君に似た、強い心の子がいい。影の魔法を継いで、王国を守ってくれる子」

ヴィオラは笑った。

「あなたに似た、優しい子も。銀髪で、銀の瞳の子」

セイルはヴィオラの頰にキスをした。

「どんな子でも、俺たちは愛する」

二人は湖畔で、静かに語り合った。過去の傷、戦いの記憶、未来の夢。すべてを共有する。

「セイル……これからも、ずっと一緒に」

セイルは頷き、ヴィオラの唇にキスをした。優しく、深いキス。湖の風が、二人の髪を揺らす。

キスが終わり、二人は額を合わせた。

「永遠に、君の傍にいる」

ヴィオラは涙を浮かべ、微笑んだ。

「私も……セイルの王妃として、ずっと」

湖畔の静けさの中で、二人は互いの温もりを感じた。新たな旅立ちは、二人だけのものだった。

王宮に戻り、二人はバルコニーで夕陽を見た。赤く染まる空に、影のランプが灯り始める。

「セイル……明日から、また忙しくなるわね」

セイルはヴィオラを抱きしめた。

「そうだな。でも、君がいれば、どんな日も幸せだ」

ヴィオラはセイルの胸に寄りかかり、目を閉じた。

「私も……あなたと一緒なら、何でも乗り越えられる」

夕陽が沈み、王宮は夜の光に包まれた。二人の愛は、王国を永遠に照らす。

遠くの地で、アルディオンは村の小屋で独り、酒を飲んでいた。セリナは貧民街で、子供たちに花を分け与えていた。過去は過去として、二人はそれぞれの道を歩み始めていた。

王宮の庭で、ヴィオラとセイルは手をつなぎ、未来を語り合った。

「セイル……愛してる」

「俺も……永遠に」

新たな旅立ちは、二人を強く結びつけた。
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