『婚約破棄は劇場にて――見世物にされた侯爵令嬢は、舞台ごと奪い返す』

鷹 綾

文字の大きさ
14 / 31

第十五話 口止めの宝石箱

しおりを挟む
第十五話 口止めの宝石箱

 招待状が王都へ出てから半日もしないうちに、空気は変わった。

 変わった、というより、ざわつきが目に見える形になったのだろう。ドルレアン侯爵家の屋敷へ届く馬車の音、玄関先で交わされる使者同士の牽制めいた会釈、廊下を行き来する使用人たちの足取りまで、どこかひそやかに慌ただしい。

 王立劇場での説明会。

 しかも、侯爵家が正式な招待状をもって、大勢へ向けて開く。

 それだけで十分だった。王都の貴族たちは、まだ何が語られるか知らない。知らないからこそ、勝手に不安になり、勝手に想像し、勝手に顔色を変える。

 想像というものは、たいてい事実より騒がしい。

「お嬢様」

 午後のはじめ、自室で文案の最終確認をしていたサビーネへ、マルゴが入ってきた。

「王宮から使者が」

「また?」

 サビーネは羽根ペンを止めた。

「ええ。ですが今回は、文ではなく品でございます」

 その言い方に、サビーネはゆっくり顔を上げた。

「品?」

「はい。応接間へ運び込まれております」

 嫌な予感がした。

 王宮から来る“品”で、気分のよいものなどたいていろくでもない。謝罪ではなく印象。説明ではなく沈静化。言葉ではなく、黙って受け取れという圧。

 サビーネは立ち上がった。

「父上は?」

「すでに応接間に」

「そう」

「旦那様のお顔は、なかなかでございました」

「なかなか、ってどういう意味」

「怒っておいでです」

 率直でよろしい。

 応接間へ入ると、なるほど、とサビーネは思った。

 中央の長机の上に、大きな箱が一つ置かれている。深い藍色の上質な布で覆われ、蓋には王家の紋章。脇には王宮から来た年かさの使者が控え、いかにも“これは善意です”という顔で立っていた。

 父はその箱から少し離れた位置に立ち、まるで毒物でも見るような目をしている。

「来たか」

「ええ」

 サビーネは短く答え、箱へ視線を向けた。

 使者が恭しく一礼する。

「ドルレアン侯爵令嬢様。このたびは殿下より、ささやかではございますが、お心慰めの品を――」

「心慰め」

 サビーネは思わず言葉を拾った。

 使者は一瞬だけ笑みを固めたが、すぐに整えなおす。

「はい。先日の件で、侯爵令嬢様にご負担をおかけしたことを心苦しく思われまして」

 心苦しく思うなら、まず劇場でやるな、とサビーネは思ったが、口には出さない。

 代わりに父が低く言った。

「中身は」

「どうぞお納めいただければと」

「聞いているのは中身だ」

 使者の顔が少しだけ強張る。

「……宝飾品でございます」

 でしょうね、とサビーネは思った。

 金で済ませるつもりとまでは言わない。だが、少なくとも“高価なものを差し出せば、一段気分はやわらぐだろう”という発想が透けて見える。

「開けても?」

 サビーネが言うと、使者は一礼した。

「もちろんでございます」

 父が目で家令へ合図する。家令が前へ出て布を取り、箱の蓋を開けた。

 中には、絹の上へいくつもの宝石が並んでいた。

 首飾り、耳飾り、腕輪、細工の凝った帯留め。どれも一目で高価とわかる品ばかりだ。上品に見せかけているが、分量としてはかなり露骨だった。

 口を閉じろというには、ずいぶん趣味が悪い。

 それがサビーネの第一印象だった。

「……豪華ね」

 思わず漏らすと、使者の顔に少しだけ安堵がよぎる。

「はい。殿下が、侯爵令嬢様のお好きそうなものをと」

「殿下が?」

 サビーネは首を傾げた。

「選ばれたの?」

 使者の答えが一拍遅れた。

「……王宮の宝飾係が、殿下のお気持ちを汲みまして」

 なるほど。

 本人は選んでいない。

 少し考えればわかることだった。セドリックがこの手の品を“誰へどの程度なら適切か”まで把握しているはずがない。これまでそうした選定を、どこへ流していたのかを思えばなおさらだ。

 サビーネは箱の中身を静かに見渡した。

 綺麗ではある。高価でもある。きっと昔の自分なら、“婚約者から贈られた品”として、表向きには丁重に受け取っただろう。

 でも今は違う。

 見えるのだ。

 これは気持ちではなく処理だと。

 しかも、かなり雑な。

「侯爵令嬢」

 父が横から低く言う。

「どうする」

 問う口調だった。

 受け取れとも、返せとも言わない。

 判断を娘へ委ねている。

 サビーネは数瞬だけ考え、それから箱から目を離さずに言った。

「使者殿」

「は、はい」

「このお品は、どのような名目でお持ちになったのかしら」

「名目、でございますか」

「ええ。先日の件への正式な賠償ですの? それとも、婚約解消に伴う贈答整理の一環? あるいは、今後の侯爵家との関係修復を願う王家からの見舞い?」

 使者の喉が動く。

 答えられないのだ。

 それはそうだろう。そこが一番曖昧なのだから。名目を定めた瞬間、この宝石箱はただの“心遣い”ではなく、責任の一部として固定されてしまう。

「その……殿下の、誠意でございます」

 苦し紛れのような返事だった。

 サビーネはゆっくりと微笑んだ。

「誠意、ね」

「はい」

「では、その誠意は、どの件に対するものですの?」

 使者の顔色が変わった。

 父も家令も、誰も助けない。

 当然だ。ここで埋めてやる義理はない。

「先日の……いささか不幸な行き違いに対して……」

 やはり来た。

 行き違い。

 王宮の人間はどれだけその言葉が好きなのだろう。便利な布きれのように、何にでもかけて輪郭を曖昧にしようとする。

「まあ」

 サビーネはやわらかく言った。

「では、王立劇場での公開婚約破棄と、わたくしの名誉毀損に近い扱いと、侯爵家への無通告の侮辱を、まとめて“行き違い”とお呼びになるのね」

 使者の顔が引きつる。

「わ、わたくしはそのような」

「でも今、そうおっしゃったわ」

 静かに返す。

 声は少しも強くない。けれど、こういう時は静かな方がよく刺さる。

 使者は完全に困りきった顔で、父の方を見た。

 だが父は冷たく言うだけだ。

「娘へ持ってきた品だ。娘に説明しろ」

 逃げ場がない。

 サビーネはその様子を見ながら、少しだけ冷静になる自分を感じた。

 前なら、こういう場面でも相手を助けていただろう。曖昧な文言を拾い、“お気持ちはありがたく受け取ります”とでも言って、場を収めたかもしれない。

 でも今は違う。

 この宝石箱は、沈黙を買うための箱だ。

 そこまで露骨でなくても、少なくとも王家が“先に気分をやわらげておきたい”と思っている証拠ではある。

 ならば、曖昧に受け取るわけにはいかない。

「お持ち帰りください」

 サビーネは言った。

 使者がはっと顔を上げる。

「侯爵令嬢様……」

「名目の定まらない高価なお品は受け取れませんわ」

 きっぱりと言う。

「正式な賠償であれば、文書にて内容を示していただくべきですし、見舞いであればなおさら、何に対するものか明記されるべきです。そうでなければ、こちらは好きに解釈するしかありませんもの」

 好きに解釈する。

 つまり、“口止め”と解釈されても仕方がない、という意味だ。

 使者もそれは理解したのだろう。顔色がさらに悪くなる。

「ですが、殿下のお気持ちを……」

「殿下のお気持ちを示したいのであれば」

 サビーネは箱を見たまま言った。

「宝石ではなく、ご本人の言葉と説明をいただきたいわ」

 応接間が静まり返る。

 それはあまりにもまっすぐで、あまりにも正しかった。

 父がそこで初めて、ほんのわずかに口元を緩めた。

「聞いたな」

 使者へ向けた声は冷たい。

「侯爵家としても同意見だ」

 使者はもはや頷くことしかできない。

「……承知、いたしました」

「それと」

 サビーネは付け加える。

「これは先日の王立劇場の件を“宝石箱一つで済ませようとした”という印象を、こちらに与えるものでしたと、どうぞお伝えくださいませ」

「そ、そのようにお伝えするのは……」

「では、どうお伝えになるの?」

 にこやかに返す。

 使者は完全に言葉を失った。

 しばしの沈黙のあと、父が家令へ合図する。家令が一歩前へ出た。

「お品はそのままお持ち帰りいただきます。侯爵家ではお預かりいたしかねますので」

 使者は深く一礼した。

 その一礼は、来た時よりずっと低かった。

 箱へ布がかけ直され、王家の紋章が再び隠れる。宝石は綺麗だったが、いまやただの“戻される箱”にしか見えなかった。

 使者が去り、応接間に家族と家令だけが残る。

 数拍の静けさ。

 それを破ったのは、もちろんマルゴだった。

「やはり趣味が悪うございましたね」

 あまりにも平然と言うので、サビーネは思わず息を吐いた。

「あなた、まったく遠慮しないわね」

「事実でございますので」

 またそれだ。

 だが今日は、その率直さが妙に心地よかった。

 父が椅子へ腰を下ろしながら言う。

「よく返した」

「受け取る気にはなれませんでした」

「当然だ」

 父は短く答える。

「受け取れば、“侯爵家は気持ちを汲んだ”と解釈される。文書もなしに金目のものだけ置いていくなど、むしろ侮辱に近い」

 サビーネは小さくうなずいた。

 そうなのだ。腹立たしかったのは、宝石そのものではない。綺麗な箱の中へ、責任の代わりに石を詰めてよこした、その発想だった。

 マルゴがさらりと言う。

「殿下は今頃、返送された箱を見て顔をしかめておいででしょうね」

「実際に選んだのは殿下ではないでしょうけれど」

 サビーネが言うと、マルゴは首を傾げた。

「なおさらでございます」

「なおさら?」

「はい。ご本人が選んでもいない贈り物で、“気持ち”だけは通そうとしたのですから」

 たしかに。

 少し考えれば当然のことなのに、口にされると妙に輪郭が出る。

 セドリックはたぶん、自分でこの箱の中身も見ていないかもしれない。ただ誰かに“何か送っておけばよい”と言われ、頷いただけの可能性すらある。

 それはサビーネをさらに冷えた気分にさせた。

 大事な場面でさえ、本人の手が通っていない。

 あの人は、最後までそこなのだ。

 その時、廊下の向こうで控えめな足音がして、従僕が再び一礼した。

「旦那様」

「何だ」

「ベルナール監督官より、短い書簡が」

 サビーネと父が同時に視線を向ける。

 今日はいろいろ飛び交う日らしい。

 父が受け取り、ざっと目を通す。読んでいるうちに、口元がわずかに皮肉げに動いた。

「何て?」

 サビーネが聞くと、父は書簡を彼女へ差し出した。

 短い、実にあの男らしい文だった。

 “本日、王家側にて宝飾品の持参手配があったと把握しております。受領なさらぬ方が賢明です。名目のない贈答は、後日の説明で不利に使われますので。”

 サビーネは思わず瞬きをした。

「……早いわね」

「ええ」

 マルゴが横からのぞき込み、平然と言う。

「しかも遅かったですね」

「どっちなのよ」

「知らせとしては早いですが、お品の到着より後なので遅いです」

 言いたいことはわかる。

 たしかに、箱が来る前にこの書簡が着いていればもっと滑稽だっただろう。だが、それでも彼が王家の動きをほぼ同時に把握していたことには変わりない。

 父が低く言う。

「監査局というより、もはや王宮の床下でも這っていそうだな」

「やめてくださいませ、旦那様」

 マルゴが真顔で言う。

「少し想像してしまいます」

「あなたまで何を言うのよ」

 でも、少しだけ可笑しい。

 箱を返したあとで、妙に張っていた気持ちがそこで少しゆるむ。

 サビーネはベルナールの短い書簡をもう一度見た。

 受領なさらぬ方が賢明です。

 結果的にはその通りにしたわけだが、それをこうして改めて文字で見ると、少しだけ胸が軽くなる。自分の判断が、少なくとも実務的には間違っていなかったのだと確認できるからだ。

「お嬢様」

 マルゴがぽつりと言った。

「何?」

「今ので、王家はますます劇場へ来たくなくなったでしょうね」

 サビーネはゆっくりと、戻された宝石箱の消えた長机を見た。

「ええ」

「でも、来ないと困る」

「ええ」

「嫌ですね」

「ええ。本当に」

 そこでサビーネは、ほんの少しだけ笑った。

 痛快とまでは言わない。だが少なくとも、箱一つで黙らせられる娘ではないと、王家へ一つ示せた気がした。

 王立劇場の招待状は、もう止められない。

 そして今、宝石箱を返したことで、その場はますます意味を持つ。

 綺麗な石では埋まらない話があるのだと、誰の目にもわかる形で。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

私に価値がないと言ったこと、後悔しませんね?

みこと。
恋愛
 鉛色の髪と目を持つクローディアは"鉱石姫"と呼ばれ、婚約者ランバートからおざなりに扱われていた。 「俺には"宝石姫"であるタバサのほうが相応しい」そう言ってランバートは、新年祭のパートナーに、クローディアではなくタバサを伴う。 (あんなヤツ、こっちから婚約破棄してやりたいのに!)  現代日本にはなかった身分差のせいで、伯爵令嬢クローディアは、侯爵家のランバートに逆らえない。  そう、クローディアは転生者だった。現代知識で鉱石を扱い、カイロはじめ防寒具をドレス下に仕込む彼女は、冷えに苦しむ他国の王女リアナを助けるが──。  なんとリアナ王女の正体は、王子リアンで?  この出会いが、クローディアに新しい道を拓く! ※小説家になろう様でも「私に価値がないと言ったこと、後悔しませんね? 〜不実な婚約者を見限って。冷え性令嬢は、熱愛を希望します」というタイトルで掲載しています。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

妹を選んで婚約破棄した婚約者は、平民になる現実を理解していなかったようです

藤原遊
恋愛
跡継ぎとして育てられた私には、将来を約束された婚約者がいた。 ――けれど彼は、私ではなく「妹」を選んだ。 妹は父の愛人の子。 身分も立場も分かったうえでの選択だと思っていたのに、 彼はどうやら、何も理解していなかったらしい。 婚約を破棄し、妹と結ばれた彼は、 当然のように貴族の立場を失い、平民として生きることになる。 一方で、妹は覚悟を決めて現実に向き合っていく。 だが彼だけが、最後まで「元に戻れる」と信じ続けていた。 これは、誰かが罰した物語ではない。 ただ、選んだ道の先にあった現実の話。 覚悟のなかった婚約者が、 自分の選択と向き合うまでを描いた、静かなざまぁ物語。

結婚して3年経っても子供ができないという理由で離縁されたエマは、前世の記憶を思い出して幸せになる。周りが勝手に復讐してくれました。

山田 バルス
恋愛
 結婚三年目の春、エマは伯爵家の夫アンドレオから突然、側室を迎える話を告げられる。子をなせなかったことを理由に、彼女は僅かな補償のみで離縁された。妻として過ごした三年間は「無価値だった」と突きつけられ、エマは貴族社会から静かに切り捨てられる。  また実家の父母の墓参りに行くと、当主になっていた兄に離縁金を奪われてしまう。  大ピンチのエマには、秘密があった。なんと彼女は幼少期に前世の記憶を思い出していたのだ。  かつて観光地で石を磨き、アクセサリーを作り、人に喜ばれる仕事をしていた人生。何も持たない今だからこそ、もう一度「自分の手で生きる」ことを選び、あの人が住む商業国家スペイラ帝国へ向かう決意をする。  国境への道中、盗賊に襲われるが、護衛兵ロドリゲスの活躍で難を逃れる。彼の誠実な態度に、エマは「守られる価値のある存在」として扱われたことに胸を打たれた。  スペイラ帝国では身分に縛られず働ける。エマは前世の技術を活かし、石を磨いてアクセサリーを作る小さな露店を始める。石に意味を込めた腕輪やペンダントは人々の心を掴み、体験教室も開かれるようになる。伯爵夫人だった頃よりも、今の方がずっと「生きている」と実感していた。  ある朝、ロドリゲスが市場を訪れ、エマの作ったタイガーアイの腕輪を購入する。ところがその夜、彼は驚いた様子で戻り、腕輪が力を一・五倍に高める魔道具だと判明したと告げる。エマ自身は無意識だったが、彼女の作るアクセサリーには確かな力が宿っていた。  後日二人は食事に出かけ、エマは自分が貴族の妻として離縁された過去を打ち明ける。ロドリゲスは強く憤り、「最悪な貴族だ」と彼女と一緒になって怒ってくれた。その気持ちが、エマにとって何よりの救いだった。彼は次に防御力を高める腕輪を依頼し、冒険者ギルドで正式な鑑定を受けるよう勧める。  翌日、冒険者ギルドで鑑定を行った結果、エマの腕輪は高い防御効果を持つことが判明。さらに彼女自身を鑑定すると、なんと「付与特化型聖女」であることが明らかになる。聖女が付与した魔道具は現実の力として強く発現するのだ。  価値がないと切り捨てられた人生は、ここでは確かな力となった。スペイラ帝国で、聖女エマの新しい人生が、静かに、そして輝かしく始まる。

第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結

まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。 コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。 「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」 イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。 対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。 レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。 「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」 「あの、ちょっとよろしいですか?」 「なんだ!」 レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。 「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」 私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。 全31話、約43,000文字、完結済み。 他サイトにもアップしています。 小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位! pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。 アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。 2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」

【完結】脇役令嬢だって死にたくない

⚪︎
恋愛
自分はただの、ヒロインとヒーローの恋愛を発展させるために呆気なく死ぬ脇役令嬢──そんな運命、納得できるわけがない。 ※ざまぁは後半

処理中です...