引きこもり聖女は祈らない

鷹 綾

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第40話 穏やかな日

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第40話 穏やかな日

 それから、数ヶ月が過ぎた。

 王国は、ようやく落ち着きを取り戻しつつあった。
 天候は安定し、嵐の噂も聞かれなくなった。
 だが、スター公爵家の奥にある一室は、変わらず静かだった。

 今日も、扉の外に足音が止まる。

「ポーラ様。フォージャーです」

 いつもの声。
 いつもの距離。

「今日は、とても良い天気です」

 扉越しに、ゆっくりと言葉が置かれる。

「暖かくて、過ごしやすいですね。
 庭には、花がたくさん咲いています」

 沈黙。

 それは、長い沈黙ではなかった。
 けれど、これまでより、ほんの少しだけ――質の違う静けさだった。

 扉の向こうから、
 かすかな声が届く。

「……今日は、ちょっとだけ……」

 フォージャーは、息を止めることも、声をかけ直すこともせず、
 ただ、その先を待った。

「……散歩、したいです……」

 しばらくして、続く。

「……ご一緒、お願いできます?」

 短い沈黙のあと、
 穏やかな声が返る。

「喜んで」

 
 完
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