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第十六話 削られる信頼
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第十六話 削られる信頼
王都に、不穏な噂が流れ始めていた。
「辺境で補給が遅れているらしい」 「兵の不満が出ているとか」
真偽は曖昧。
だが噂は、火種のように広がる。
王宮の回廊でも、ひそひそと囁きが交わされていた。
その日、王妃は財務局長と向き合っていた。
「追加削減の理由を説明なさい」
「宮廷維持費の増額が必要でして」
「優先順位は?」
局長は一瞬、言葉に詰まる。
「……王家の威信を保つため」
王妃はゆっくりと視線を上げる。
「威信は灯りの数で決まるのですか」
沈黙。
「辺境からの報告は読んでいるでしょう」
「はい」
「彼らは削減を受け入れ、自力で補填している」
王妃の声は穏やかだ。
だがその静けさが、重い。
「中央は何を補填していますか」
答えは出ない。
一方、フロレッタは貴族夫人たちとの茶会に出席していた。
微笑みを絶やさない。
姿勢も完璧。
だが会話の端々に、鋭い言葉が混ざる。
「辺境のご様子、ご存じですか?」 「軍費の件、少々不安ですわね」
フロレッタは必死に言葉を選ぶ。
「問題はございません」
「具体的には?」
また、具体。
曖昧さは、もう許されない。
「補填策が進行中です」
「中央主導で?」
答えに詰まる。
夫人たちは視線を交わす。
王妃教育の成果は、まだ形にならない。
夜、ルシアンの私室。
「噂が広がっているそうですわ」
フロレッタが告げる。
「噂など放っておけ」
彼は軽く笑う。
「民はすぐ忘れる」
「ですが信頼は」
「信頼は王家にある」
断言。
疑いの余地もない口調。
フロレッタの胸に、わずかな違和感が広がる。
本当に、あるのだろうか。
一方、辺境。
兵舎では炊き出しの鍋が湯気を上げている。
「補給は安定しております」
「交易利益を回しました」
セラフィーナは帳簿を閉じる。
「兵の不満は?」
「ございません」
ヴァレントが静かに言う。
「中央の削減を知っている」
「動揺は」
「今のところはない」
セラフィーナは兵の様子を見る。
動きは揃い、表情は落ち着いている。
「信頼はどこにありますか」
彼女が問う。
ヴァレントは即答する。
「ここだ」
城壁の内側を示す。
「守られている実感があれば、兵は揺らがぬ」
守られている実感。
その言葉が、静かに響く。
王宮。
フロレッタは自室で一人、窓辺に立つ。
遠くの灯り。
噂は止まらない。
削減は続く。
王妃の視線は厳しい。
殿下は、気にしていない。
私は、何を信じればいいの。
祝福の中心にいた日が、遠く感じる。
辺境では、削減されても崩れない基盤が作られている。
王都では、削られているのは軍費だけではない。
信頼もまた、静かに削られている。
王宮の灯りは今日も明るい。
だが光が強いほど、影は濃くなる。
フロレッタはまだ気づかない。
信頼は、与えられた座ではなく、積み重ねた結果に宿るということを。
王都に、不穏な噂が流れ始めていた。
「辺境で補給が遅れているらしい」 「兵の不満が出ているとか」
真偽は曖昧。
だが噂は、火種のように広がる。
王宮の回廊でも、ひそひそと囁きが交わされていた。
その日、王妃は財務局長と向き合っていた。
「追加削減の理由を説明なさい」
「宮廷維持費の増額が必要でして」
「優先順位は?」
局長は一瞬、言葉に詰まる。
「……王家の威信を保つため」
王妃はゆっくりと視線を上げる。
「威信は灯りの数で決まるのですか」
沈黙。
「辺境からの報告は読んでいるでしょう」
「はい」
「彼らは削減を受け入れ、自力で補填している」
王妃の声は穏やかだ。
だがその静けさが、重い。
「中央は何を補填していますか」
答えは出ない。
一方、フロレッタは貴族夫人たちとの茶会に出席していた。
微笑みを絶やさない。
姿勢も完璧。
だが会話の端々に、鋭い言葉が混ざる。
「辺境のご様子、ご存じですか?」 「軍費の件、少々不安ですわね」
フロレッタは必死に言葉を選ぶ。
「問題はございません」
「具体的には?」
また、具体。
曖昧さは、もう許されない。
「補填策が進行中です」
「中央主導で?」
答えに詰まる。
夫人たちは視線を交わす。
王妃教育の成果は、まだ形にならない。
夜、ルシアンの私室。
「噂が広がっているそうですわ」
フロレッタが告げる。
「噂など放っておけ」
彼は軽く笑う。
「民はすぐ忘れる」
「ですが信頼は」
「信頼は王家にある」
断言。
疑いの余地もない口調。
フロレッタの胸に、わずかな違和感が広がる。
本当に、あるのだろうか。
一方、辺境。
兵舎では炊き出しの鍋が湯気を上げている。
「補給は安定しております」
「交易利益を回しました」
セラフィーナは帳簿を閉じる。
「兵の不満は?」
「ございません」
ヴァレントが静かに言う。
「中央の削減を知っている」
「動揺は」
「今のところはない」
セラフィーナは兵の様子を見る。
動きは揃い、表情は落ち着いている。
「信頼はどこにありますか」
彼女が問う。
ヴァレントは即答する。
「ここだ」
城壁の内側を示す。
「守られている実感があれば、兵は揺らがぬ」
守られている実感。
その言葉が、静かに響く。
王宮。
フロレッタは自室で一人、窓辺に立つ。
遠くの灯り。
噂は止まらない。
削減は続く。
王妃の視線は厳しい。
殿下は、気にしていない。
私は、何を信じればいいの。
祝福の中心にいた日が、遠く感じる。
辺境では、削減されても崩れない基盤が作られている。
王都では、削られているのは軍費だけではない。
信頼もまた、静かに削られている。
王宮の灯りは今日も明るい。
だが光が強いほど、影は濃くなる。
フロレッタはまだ気づかない。
信頼は、与えられた座ではなく、積み重ねた結果に宿るということを。
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